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4位以内が熾烈なプレミアリーグ 〜後半戦に完成するリヴァプール

 それだけにスタイルの浸透に時間を有する面もあると思います。しかし、それだけではなく現有戦力の特徴を把握した上でのチームのベースを構築する能力にも長けており、ロジャーズ監督が就任以前よりも明らかに“サッカーが上手くなった”組織力と共に、選手個々の個性も際立つ好チームがシーズンの後半戦を迎えた辺りから生まれて来ます。それは上記の結果から見ても明らかです。

 ロジャーズの就任初年度はポゼッションサッカーへの移行へ苦心した事と共に、FWがルイス・スアレスただ1人というアタッカーの圧倒的な人数不足がありました。ただし、そこで当時はまだ17歳だったラヒーム・スターリングを下部組織から引き上げて主力に抜擢。平行して冬の移籍市場で現在はエースFWとなったダニエル・スタリッジと、10番を背負ってチーム1のチャンスメーカーとなるフェリペ・コウチ―ニョを、それぞれチェルシーとインテル・ミラノから獲得。共に20歳そこそこの年齢ながらビッグクラブで余剰戦力と見なされていた2人のタレントが加入したのが2013年の1月。スターリングはもちろん、この2人もまた若手と言える年齢。補強ではあるものの、彼等3人や他にもどんどん若手選手を抜擢しながら、このシーズンはここからチームが固まって2年目のシーズンへ向けて確かな積み上げを見せました。

 迎えた2年目、“噛みつき”行為で序盤からスアレスが長期出場停止が続きましたが、エース格に成長したスタリッジがチームを引っ張り、スタリッジは負傷したものの、スアレスの復帰で調整。後半戦はこの両エースが揃い踏みで得点を量産して僅か1敗という無双状態でリーグ優勝争いを最終節まで続けました。シーズンが佳境に入った中でのホームでのチェルシー戦で、主将のスティーブン・ジェラードが最後尾でのパス回し中にスリップし、リーグ戦の首位からもスリップして2位に終わった悔しいシーズンとなりましたが、サッカーファンの誰もが「リヴァプールに優勝させてあげたい」と思える魅惑の攻撃サッカーを披露していました。

 その中ではスタリッジとスアレスの“S&S”ならぬWエースがゴールだけでなくアシスト能力にも優れるため、この2人の万能型ストライカーの持ち味を最大限活かせる適正なシステムとスタイルを編み出すために試行錯誤。システムはスアレスかスタリッジがどちらか1人だった前半戦の<4-2-3-1>から<3-5-2>を経て、<4-3-1-2>と<4-3-3>へ落ち着きました。また、30歳代半ばに差し掛かった主将のジェラードを守備的MF役となるアンカーとしてコンバート。運動量は少なくとも、弾道の鋭い正確なロングパスによる展開力や、経験に裏打ちされたポジショニングで抑えられる守備力を最大限活かすコンバートとなりました。同時にジェラードが後方からロングパスを送る際には前線のスペースも生まれており、Wエースのスピードや突破力が活きるというポゼッションサッカーのカウンターという新たなスタイルが誕生して、この魅惑の攻撃サッカーが完成したのでした。

得点王・スアレスの穴埋めに続き、”ジェラード後”を見据えたチーム作り

 しかし、ロジャーズ監督就任3年目となった今季、前シーズンに出場33試合でリーグ得点王となる31ゴールと12アシストを記録したスアレスがシーズン終了後にバルセロナへ移籍。確かにスアレスの売却により、約117億円という多額の移籍金を得て、イタリア代表FWマリオ・バロテッリやイングランド代表FWリッキー・ランバートというプレミアリーグで2桁得点を記録した実績のある後継者候補を獲得したものの、スアレスとWエースを張って22ゴールを記録したスタリッジも開幕直後から負傷で長期離脱。ロジャーズ監督の意向で獲得したとも言えない後継者候補もフィットしきれず、5年ぶりに出場したチャンピオンズリーグも過密日程を施しただけで、グループリーグ敗退以上に負傷者続出の悪循環に。チームは再び“焼き直し”になりました。

 ただ、試行錯誤に苦しみながらも、ロジャーズ監督はスアレスの後継者候補となる典型的なストライカータイプのFWを起用せず、コウチ―ニョやスターリング、新加入のアダム・ララーナと言った技術やスピード、アイデアに優れた2列目タイプの選手を多く起用した<3-4-3>のシステムを編み出したのが2014年の年末。加えて、2015年の年明けと共に、リヴァプール一筋を貫いて来たチームの象徴であるジェラードが今季限りでの退団を発表。やっとスアレスの穴埋めに手応えを感じさせて軌道に乗ったチームは、ジェラード退団後仕様のチーム作りに向かいました。

 2列目の小柄なタレントが多くなった現陣容では中盤中央部の選手には運動量でタフな仕事が要求されるようになったため、逆にジェラードは2列目で起用されていました。さらに退団発表後にジェラードが負傷離脱した事もあり、名実共に“ジェラードの後継者”と思われていたジョーダン・ヘンダーソンがキャプテンマークを自然と巻くチーム編成にもなり、“ジェラード後”のチーム作りも完成。先日はロジャーズ監督の古巣スウォンジーを破り、これでリーグ戦はここ13戦無敗の10勝3分。2015年に入ってからは10戦8勝2分の7完封と攻守に歯車が噛み合って無敗街道を走っています。

ジェラードの誕生日に開催されるFAカップ決勝で有終の美を

 このように、現在のリヴァプールは組織として機能しながら個性が最大限発揮されるという理想的な状態になっています。現実的にリーグ優勝はここから全勝しても無理でしょうが、リーグ戦4位以内による来季のチャンピオンズリーグ出場権と、退団を表明しているジェラードの35回目の誕生日が決勝となるFAカップのトロフィー獲得は十分にありえるでしょう。

 一応、僕は現地ロンドンのエミレーツ・スタジアムへ行くほどのアーセナルファンですが、今年は自らの誕生日にFAカップのトロフィーを掲げるジェラードの姿を見たいと思っています。残りのシーズン終盤は、1人のサッカーファンとしてリヴァプールとジェラードを応援したいと思います。