Foot ball Drunker 〔109〕visiting『 Jan Breydel Stadion 』ブルッヘ / ベルギー

ブルッヘの街が真っ赤に炎上した夜

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昨日ロシアの首都モスクワ北西郊外にて発生した銃乱射事件。イスラム国が犯行声明を発したが、死者133人を含む死傷者三百人超えの大惨事には疑問符がつく。

人口こそベルギー国内六番目ながら橋と運河の狭間から北方ルネサンス文化が開花したブルッヘは“古都の風情”を漂わせる。カバー写真のブルッグス·ゾットを醸造するのは1856年創業のドゥ·ハルブ·マーン:De Halve Maan。若き日の皇帝マクシミリアン1世が発した「ブルッヘの馬鹿者」の逸話に基づく。
第109話はセークル·ブルッヘとクラブ·ブルッヘの両クラブが本拠地として使用するヤン·ブレイデル·スタディオン。


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現会長は不動産で富を成し2012年から筆頭株主バート·フェルヘーゲ:Bart Verhaeghe【1965年3月21日生】。ズルテ·ワレヘムからヴァンサン·マナールト:Vincent Mannaert【1974年10月8日生】氏を引き抜きCEOに就任させたベルギーフットボール界の大御所様。マナールトは三度の膝手術後2005年に現役を引退。弁護士資格を有し不動産業を経て、フットボール界に復帰。2023年11月28日マネールトCEO退任の記者会見の席でフェルハーゲ氏はクラブに今後も尽力すると宣言。

マナールトCEOで印象に残るエピソードが2015-16シーズンのUEFAヨーロッパリーグ。11月26日の第5節ヤン·ブレイデル·シュタディオンでのクラブ·ブルッヘとナポリは試合は、二週間前に発生したパリ同時多発テロの影響により無観客での開催が発表決定されたのは24日。


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当初は既に予選通過が確定、緑信号のナポリ·サポーターのみ入場を禁止するはずが、安全面での不安を理由に市長が決定。
ブルッへの勝ち点は4で3位、勝ち点6で2位のミッティランと残るひとつの椅子(ベスト32)を争っており崖っぷちの重要な試合。頭に血が上った蹴球狂達がシュタディオン前に群がり警備員と衝突。更に多勢で発煙筒を握っての抗議パレード。街中も真っ赤に炎上。SNSの話ではなく、ほんまもんの炎上である。この時マネールトCEOは群衆を宥めようとしたのだが、既に『焼石に水』。火に油を注いだ結果手首を負傷する災難。


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2020年の感染症拡大で日常の風景となった無観客のスタンド。しかしそれ以前はクラブに課せられたペナルティ以外で無観客試合は存在しなかった。不祥事に対する処分で無観客試合と来ればクロアチアの強豪ディナモ·ザグレブのサポーター集団「バッドブルーボーイズ」の専売特許。昨夏アテネでの殺人事件は記憶に新しい。
2009ー10シーズンのヨーロッパリーグ、グループステージで敗退したディナモ·ザグレブサポーターの狂乱ぶりも凄まじかった。
ルーマニア·ティミショアラ市のスタジアム内外で、機動隊と激突、130人を越える逮捕者を出したディナモサポーター。UEFAの罰則委員会からは11月5日のアヤックス戦と12月17日のティミショアラ戦のホーム2試合を無観客試合。75,000ユーロの罰金と3年間の欧州カップ戦出場停止のペナルティが下された。アヤックのマッチデープログラムには無人のスタンド写真が掲載されていた。


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2015年に話を戻すと、この行政及びクラブの判断は些か過剰ではという意見も試合直後には聞かれた。アンデルレヒトは国内リーグ戦を延期しているがUEFAコンペティションは公平性を欠く為延期はできないし、そもそもスケジュールに隙間がない。「ペナルティを受ける覚えはない」とブルッヘサポーターの言い分も解らなくはない。
しかしこの無観客試合から四ヶ月後、’16年3月22日首都ブリュッセルの国際空港と地下鉄マールベーク駅において連続爆破テロ事件が発生しており、この判断に誤りは無かった事を皮肉にも証明している。