そんなケインの憧れは、元イングランド代表FWテディ・シェリンガム氏。マンチェスター・ユナイテッドでの3冠が記憶に残る選手だが、トッテナムで合計7シーズンをプレーしたレジェンドだ。11歳の頃からトッテナムの生え抜きとしてプレーしているケインにとっては憧れの存在であり、目標の選手像となるのも納得だ。ただ、彼はどう考えても点取り屋タイプのFWではなかった。
特にイングランド代表としてのシェリンガム氏は、エースFWのアラン・シアラー氏と中盤を繋ぐ“リンクマン”としてセカンドトップのような役割を担った万能型のFWだった。10番を着ることが多かったのもその証拠で、シェリンガム氏のプレー・ヴィデオを、「擦り切れるほど観て、その動き出しを真似した」ケインには、利他的な動き出しも多い。サイドへ開いたり、ポストプレーで起点を作ったり、スルーパスを出す側にもなれる。それらは現代型FWとして、時代の先を行っていたシェリンガム氏の影響が強いと考えられる。
現代のサッカーでは守備面の負担もあって、2トップは採用しにくいため、1トップに入る選手にはより万能な能力を求められる。ケインはシェリンガム氏とシアラー氏の両方の能力が備わっているように感じる。
EUROでは不発に終わり、確かに未だに欧州チャンピオンズリーグの出場経験もないケインだが、彼はプレミアリーグで2年続けての20ゴール越え。しかも2000年のケビン・フィリップス氏(当時サンダーランド)以来16年ぶりとなる待望の英国人得点王となった世界に誇るべき本格派のFWだ。
そんな彼ならば、新シーズンのプレミアリーグと初参戦のCLでも当然のことのように大活躍し、ロシアW杯やその予選ラウンドでも正真正銘のエースとして活躍してくれるはずだ。