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アーセナルMFジャック・ウィルシャー〜長期離脱を繰り返しても期待を受け続ける10番の魅力とは?

 現代サッカーではどんな戦術を採用しようとも中盤でのスペースと時間は限られる。攻撃的なチームは中盤でハイテンポでパスやプレッシングを連動させるし、守備的なチームは後ろへ引いてバイタルエリアのスペースを封鎖する。

 そこでバルセロナ戦のウィルシャーだ。パスサッカーと連動したプレスが融合されたバルセロナは、“プレミアリーグのポゼッション王者”アーセナルからも即座にボールを奪還して主導権を握った。セスクもソングも全く相手にならなかった。しかし、ウィルシャーは違った。彼のパス成功率が93.5%だったのは未だに語り草だが、彼のポテンシャルを最大限に魅せたのはパスではない。バルセロナの連動したプレスで次々とボールを奪われたアーセナルの中盤にあって、ウィルシャーはそのプレスの網をドリブルで交わし続けた。

 もちろん、ウィルシャーのドリブルはフィニッシュに絡むような“仕掛け”ではない。MFらしく“横のドリブル”とも表現できる。そして、その種類のドリブルこそ、中盤でのプレスが激しく、スペースがない。さらに相手の対策が進む現代サッカーで予測を上回る“違い”を生む要素だ。そして、このバルセロナ戦でウィルシャーはドリブルでバルセロナのプレスを交わし、得点に繋げた。いくら「人よりもボールが動く方が速い」と言っても、パスの方向が予測されたり、限定されては限界があるのだ。そこで密集地帯を予測できないMFのドリブルが有効なのだ。リスクは承知だが、ウィルシャーはパスセンスも球離れも最高クラスのMF。そんな選手が魅せるドリブルだからこそ魅力があり、それは未来のサッカーにも通じる。

 そんなウィルシャーは守備でもタフに戦える選手だ。タックルの強烈さも際立つファイティングスピリットにも全く不足はない。しかし、恐れるものがないウィルシャーのそのプレースタイルは諸刃の剣でもある。2010-2011シーズンに『プレミアリーグ最優秀若手選手賞』を受賞し、イングランド代表にも定着したが、翌シーズンは1試合もプレーできない長期離脱を経験。復帰まで14カ月を要した。それ以降も幾度も長期離脱を経験し、今季も残り4試合で復帰したばかりだ。(詳細は以下のキャリア表を参照)

 それでもウィルシャーのクリエイティブなプレーには、現在のアーセナルの司令塔であり、世界王者のドイツ代表でも軸を担うMFエジルや、スペイン代表MFサンティ・カソルラをも脇役にさせてしまうほどの恐るべきポテンシャルが備わっている。昨季も終盤になって5カ月の長期離脱明けでプレーしたウィルシャーは、エジルやカソルラを従え、復帰してすぐに主役として君臨。最終節にはプレミアリーグのシーズンベストゴールに選出されるスーパーボレーによるゴールも決めた。

 負傷者続出が頻繁に起こるアーセナルでは長期離脱を繰り返すウィルシャーは、その意味でもアーセナルらしい選手かもしれない。「我々には(アブ・)ディアビ(現・マルセイユ/フランス)がいる」と繰り返して復帰を待ったヴェンゲル監督の言葉が、今は「我々にはウィルシャーがいる」となって来たのも気掛かりだ。

 それでも、この“未来型サッカー”を奏でるジャック・ウィルシャーの才能にこそ、筆者を含めたアーセナルは酔いしれているのだ。