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Jリーグチャンピオンシップ決勝第1戦、G大阪VS広島〜スタイルを信じ続けた広島の総合力による大逆転勝利

ミスに動じず、信じ続けた”広島スタイル”

 両チーム選手交代なしで始まった後半も、前半25分頃からの堅い試合展開が続いた。しかし、ふとした瞬間に“事故”は起きた。60分、広島の最終ラインでの普段から見慣れる何でもないビルドアップの最中。左CB佐々木翔が隣に引いて来たMF森崎和幸へ短くパス。しかし、僅かにズレていたため、森崎和幸とその斜め後方にいたDF千葉和彦が中途半端に声を掛け合って躊躇して“お見合い”。透かさず、この試合のゲームプランである前線プレスを忠実に敢行するG大阪FW長沢がかっさらい、千葉の懸命のスライディングも及ばずに大きなミスから試合が動いた。

 ただし、ここで重要だったのはミスはミスで反省はするものの、この後方でのビルドアップは“広島スタイル”の代名詞であり、クラブを挙げて撮り込んで来た戦術・戦略。歴代の監督たちが紆余曲折ありながらも継続してきたクラブの伝統だ。ミスではあるものの、その責任は選手はもちろん、森保一監督にあるわけでもない。批判、リスクの高さに対する懸念は一切なく、ミスに絡んだ2人は委縮することはなく、チーム全体も“広島スタイル”を信じて貫いた。

 そして80分だった。直前に温存されていたパトリックがピッチに登場し、セットプレーから彼の決定的なシュートが外れて事なきを得た。そのゴールキックを丁寧かつ素早くリスタートし、後方の塩谷から前線のスペースへと動き出した途中出場のスピードスターFW浅野拓磨へと正確なフィードが通る。中央から斜めにトップスピードで動き出し、日本代表GK東口順昭を交わしたものの、角度がないところから放った浅野のシュートはポストに阻まれる。しかし、そのポストで大きく跳ね返ったボールが右WBに途中投入されていた柏好文の足下へ。ダイレクトのインステップキックでの強烈なシュートがゴール方向へ向かう道中、至近距離の同僚・ドウグラスが頭で触ってコースが変わり、ゴール前で粘ってブロックに入ろうとしたG大阪守備陣の逆を突いた同点弾が決まって1-1。

 しかし、1分後のG大阪・遠藤保仁の右からのFK。遠藤のゴール前へ上がったクロスボール懸命に佐々木がクリアしたものの、小さいクリアとなってエリア内にこぼれたボールを今野泰幸にしっかりと抑えたボレーシュートを決められる。2-1。

 急にゴールラッシュが続きだした終盤、そこからは球際の争いもヒートアップする。この沸騰したピッチでは、前半からサイドでの1対1でせめぎ合っていた清水とG大阪の右SBオ・ジェソクがさらに衝突。瞬間沸騰したオ・ジェソクは清水を突き倒してレッドカード。1発退場となってG大阪が数的不利となったのは86分だった。逃げ切ろうと思えば逃げ切れる時間帯で、時間稼ぎも出来る。ホームの観衆が”11人目”に繰り上がってピッチに味方もするだろうシチュエーションだ。しかし、広島は自分達を信じた。

 91分、ゴール右からの中途半端な距離からのFKを得た広島。「絶対クロスだな」と相手にも観衆にもテレビ視聴者にも予測された中、キッカーの柴崎晃誠は隣にいた青山へショートパスを送り、相手の的をズラす。青山がゴール前を狙いすましてプレースキックしたクロスを日本人離れしたバネを持つ佐々木が高い打点からの強烈なヘッドを炸裂。ヘディングシュートとは思えない弾道がサイドネットに突き刺さって2-2の同点に。

途中出場3選手が流れ変え、チームの総合力で劇的な逆転勝利

 さらに追加タイム5分の表示も終わりを迎える96分だった。相手ボールのスローインをなぜか焦ってリスタートした行先バレバレの今野のスローインを森崎和幸が華麗にインターセプト。左サイドで青山→森崎和幸とタメを作りながら途中出場で左ワイドに入った元日本代表MF山岸智へ展開。山岸の絶妙のダイレクトクロスがゴール前で巧みにマークを外していたドウグラスに渡る。しかし、ドウグラスのシュートは空振り気味で流れ、リバウドを詰めた浅野もシュートブロックに遭う。ただ、最後まで信じていた柏が中央まで絞って入ってきており、渾身のチカラで右足を振り抜いたシュートはゴールに突き刺さって2-3と広島が大逆転。

 直後にタイムアップのホイッスルが鳴り、広島がアウェイながら3得点を奪っての逆転勝利。途中出場の浅野・柏・山岸の3人が試合を大きく動かした事や、パワープレーやリスク回避の仕掛けではなく、チームメートや継続してきたスタイルを貫いたからこその逆転勝利だった。

 この結果により、12月5日に広島のホームであるエディオン・スタジアム広島で開催される第2戦は、広島が0-1もしくは1-2の敗戦であっても優勝となる大きなアドバンテージを奪った。

 第2戦は、G大阪が優勝するには少なくとも2得点以上が必要なため、この試合の前半同様に広島に対して前がかりの相手のプレスをしてくれるだろう。しかし、それを効果的なビルドアップでいなしながらも、よりシンプルに最前線のスペースへ動き出す佐藤や浅野が速攻で抜け出す形が予想される。1点でも失点すればG大阪にとっては致命傷だろう。

 そして、このチャンピオンシップとは過去のデータとして、第1戦で勝利したチームが全て優勝している。しかも今回の広島はアウェイゴールを3得点も持っているのだ。

 それをチーム全体の総合力とスタイルを信じた末に手にした意味は大きい。結果以上に大きなモノを得たと言えるはずだ。