157〗St. Jakob-Park / バ-ゼル

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南西のゴ-ル裏、ビジターサポーター専用エリア入り口を見下ろす上写真。2008年オ-ストリアとの共催によるUEFA欧州選手権に向けて、2006年から07年にかけての拡張工事の際には既存のCセクターの上に三3階席(ギャラリー、Gセクター)を増設した。現在の正確な収容人数は38,512席。このスタジアムで素晴らしいのが照明設備。FCバーゼルのホームゲームならば観客席はクラブカラーである赤と青の二色にライトアップ。スイス代表による国際試合となると観客席全体が赤色に照らされ大きなスイス十字が浮かび上がる趣向。下写真の開幕戦試合前に、スイス国歌を歌唱した白いノ-スリ-ブルー、赤いパンツの女性はベアトリス·エグリ:Beatrice Egli【1988年6月21日生】。ドイツのオーディション番組『Deutschland sucht den Superstar』のシーズン10(2013年)で優勝した実力派。この番組で歌った曲を翌日にリリースするとドイツ、スイス、オーストリアのドイツ語圏三ヶ国でNo.1ヒットを記録。一夜にしてスーパースターになった女性シンガ-。その歌声と変わらぬ笑顔に魅了された。
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あの日あの時は◼️2025年9月9日FIFAワ-ルドカップ欧州予選グループBスイス代表対スロベニア代表
コソボに4-0で大勝しており、その勢いのままスロベニア戦も3-0で完勝している。得点者は先制がニコ·エルヴェディ:Nico Elvedi【1996年9月30日生】のヘディング。追加点のブレール·エンボロ: Breel Embolo【1997年2月14日生】も頭、そして駄目押しはダン·エンドイェ:Dan Ndoye【2000年10月25日生】の右足と決めるべき人が決めて前半で勝負は決している。
エンドイェは第 話でも紹介しているがニヨン出身。21年から貸し出されたバ-ゼルが翌年買取オプションを行使して完全移籍。
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上写真は’22年にルガーノで撮影したアウェーユニフォーム姿。コソボ戦に続いてこの日も無失点の守護神はグレゴール·コベル:Gregor Kobel【1997年12月6日生】。アルゼンチン戦でも好セ-ブが光ったのだが。
ちなみにこの’25年9月より全観客席で禁煙が実施されている同スタジアム。
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22年カタール大会では日本代表と同じくベスト16進出。バ-ゼル出身のムラト·ヤキン:Murat Yakin【1974年9月15日生】監督のもとブラッシュアップしたチ-ムづくりも日本代表と共通する。その名前が示すとおりトルコ系スイス人の指揮官は、「審判のミスが我々を罰した」と怒り爆発。VARを見る限り明らかにエンボロのシミュレーション。そしてエリア内であろうが離れていようがイエローが出されるのもル-ルどおり。では何をヤキン監督はミスと指摘しているのか。それはパレデスに対して出されたカ-ドである。そもそも一枚目パレデスへの接触でイエローが出されている。主審はパレデスがやり返したと思ったかもしれないが、ここは重要な局面でも位置でもないのだから流して然るべきところ。しかしいきなりカ-ドを出してしまったからVAR判定に。このシミュレーションの反則。ファウルと異なり被害者は相手選手ではなく欺かれた審判になる。結果退場の罰則を受けたエンボロにSNS上では批判が殺到していた。確かにほめられたものではないが同情しないこともない。簡単に言ってしまえば一枚目のイエローからして嵌められたようなもの。
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アルゼンチンのサッカーは、勝つためにルールや審判の心理を最大限に利用する点で頭抜けている。。ブラジル人のずる賢さ=マリーシアともやや質が異なる。まずファウルをするのも逆に貰うのも上手い。そして審判へのプレッシャーのかけ方が絶妙。審判に詰め寄って猛烈に抗議するのは近年主将だけに制限されるようになり、目にする機会は減ったものの、自分達に有利になるよう誘導するのは相変わらず。挑発してイエローやレッドを引き出す事を常に意識してプレ-をしているように見える。
アルゼンチンの社会及び文化に根付いたビベサ·クリオージャ:Viveza criollaなる言葉は独自の奔放な生き方を表す慣用句。貧困で教育や公共サービスが受けられない環境では、人に迷惑をかけたり、時にはルールを破ったりしてでも、自分で解決して逞しく生きなければならない。困難な状況や不安定な社会を生き抜くためのサバイバル術として発展した歴史的背景が潜んでいる。ポジティブな部分では機転が効いたり創造性に優れた点を指す一方、他者を出し抜いたり陥れるネガティブな部分が表裏一体となり得る危険性を含んでいる。アルゼンチンの強さは戦術や技術、体力とは別に相手や審判の心理を操作する術であり、これはスポーツマンシップ以前に道徳を重んじる日本人には真似できない文化の違いに他ならない。

ヘルツォーク&ド·ムーロンはその輝かしいキャリア初期にヨーゼフ·ボイス:Joseph Beuys【1921年5月12日生-1986年1月23日没】影響を受けていると聞く。1978年にバーゼルでのカーニバルでボイスの作品を取り入れた企画しており、その思想や概念的アプローチを建築の基盤として取り入れた。ザンクト·ヤコブの地下にはショッピングモールが営業しており、高齢者用の集合住宅が併設されているから、居住者専用の観戦エリアからの試合見たさに訪れるお孫さんもいるだろう。
このサッカー観戦する場所を日常生活と結びつけたあたりは確かにボイスっぽい。

ボイスは、「社会彫刻(すべての人間は芸術家であり、社会全体を一つの芸術作品にできるという概念)」を提唱しドイツ人ア-ティスト。ヘルツォーク&ド·ムーロンの建築も、周囲の環境や人間と関わり合う「社会彫刻」として位置づけられる。
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つまりボイスは、美術館を訪れた人々が飾られた作品を観賞することで完成する従来の芸術表現から、その一歩先、観賞した人々が起こす行動こそが重要であると考え、様々な手法を生み出し、提示し続けた。1974年5月に発表した《私はアメリカが好き、アメリカも私が好き》を人間(ボイス本人)と、先住民が神聖な動物とするコヨーテがニューヨ-クの金網で仕切られた画廊の中に一週間閉じこもって生活を共にしたパフォーマンス作品。先住民への迫害などアメリカ社会の抑圧を批判している。このように
芸術の境界を日常生活や教育/経済/政治更には地球レベルの環境問題にまで押し広げたボイスは、ヘルツォーク&ド·ムーロン以外にも七十年代以降多くの人々に影響を与えた。筆者もその中の一人。サッカーを単なるスポーツではなく広義の文化の視点から多角的に発信するこんなコラムを連載するようになってしまったボイス信者。

さて遂に出揃った四強ではあるが、前回と同じアルゼンチンとフランスの決勝になる可能性もあれば二年前のEUROと同じスペインとイングランドの顔あわせも。最後に「私はアメリカが好き、アメリカも私が好き」と言えるのは、2023年夏からマイアミに拠点を移し同胞の大声援を背に受ける神の子メッシになってしまうのだろうか。〖第百五十七話了〗
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⏹️写真/テキスト:横澤悦孝 ⏹️モデル:鳴成美鈴