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「12人目の先発メンバー」から脱皮。なでしこ連覇の鍵を握るMF宇津木瑠美

 フランスのモンペリエ所属で日本人選手にはない稀有なフィジカル能力に長け、左利きでもあるMF。

 対人守備の強さや最終ラインからのビルドアップを期待して当初は最終ラインで、統率力に長けながら上背のないCB岩清水梓、逆に対人守備に強さを見せる反面ラインコントロールに難のあるCB熊谷紗希に割って入るようにコンバート。

 あるいは守備的に入る際に、2人の主戦CBと共に3バックを形成する戦術的オプションになるように起用されたり。「女子サッカー界のレジェンド」MF澤穂希が代表を外れるとボランチとして起用されたり、今大会直前のように左SBとして定着させたり。

 ことあるごとに佐々木監督は彼女に期待を寄せて主力として定着させようとして来ましたが、「第3のCB」として、または「オールラウンダー」としては最良の評価が与えられる一方で、「12人目の先発メンバー」から脱皮する事がなかなか出来ませんでした。

チームも時代も求めた異彩を放つ攻守の要

 それは自身の特徴や、フランスで長くプレーしているのもあって、「前でボールを奪う守備」のタイミングが他のなでしこイレブンから見れば早すぎて、「ここで前に出るか?」のような感覚的なズレにもあったでしょうし、バンッと音を立てる男子顔負けのパススピードの速さでも、従来のなでしこのパスサッカーには適応するのが難しかったのかもしれません。

 しかし、女子サッカーのトレンドとして、前回大会で優勝した「なでしこ流」も世界的に拡がり対策も緻密になされた事でなでしこの強化は行き詰まり、スケールの大きな「異分子」を求めるようにもなりました。

 逆に宇津木本人の試合中の動きを見ていれば分かるように、彼女は誰よりも周囲の選手と声を掛け合って、自分の要求やチームメートの要求を擦り合わせられるような選手に成熟しました。

 豪州戦後のインタビューでは、「日本のボランチは横への機動力も強み」と語る姿には澤からポジションを奪った本物の実力者だと認識しました。

 なでしこJAPANも宇津木本人の成長曲線も、そして時代の流れも、宇津木瑠美という未だそのポテンシャルを活かしきれてはいなかった異彩を放つ選手を求めていました。

 決勝トーナメントになってからボランチとして定着した宇津木は最前線からのプレッシングでパスコースを限定してくれる戦術の利もあって、アプローチの速いボール奪取力をチームの武器として活かせています。これが偶然でないのは、彼女はCBであろうと、左SBであろうと、ボランチやアンカーとしての起用であろうとも、ポジションによって自分のプレーを変えるのではなく、常に「宇津木瑠美のプレー」を披露して来たからこそ今の活躍があり、チームもそれを求めていたはず。

 おそらく女子サッカー界では移民も多いフランスが最もフィジカル面で優れているため、その地でプレーしている彼女にとっては、決勝でもアメリカ相手にも競り負ける事はないでしょう。バシッ、バシッと生音がするような体と体がぶつかり合う中盤での潰し合いを制し、球足の速い縦パス、フィジカルで劣る左SB鮫島のカヴァーと、左サイドMF宮間あやの外側を駆け上がってサポートする動き、自陣ゴール前から相手ゴール前までをカヴァーする運動量、これだけ万能な選手もなかなかいないでしょう。

 今大会の最優秀選手候補の8人が発表され、日本からは右SBの有吉佐織、MF宮間がノミネートされていますが、筆者が思うのは宇津木がMVP候補に当たる選手だと思います。

 また、相違ないのは、宇津木の活躍が、なでしこJAPANのW杯連覇の大きな鍵を握っている事だけは確かでしょう。

 アメリカも実は準決勝までの6試合では日本と同じ9得点のみ。けして順調ではありません。

 とはいえ、空陸両用で仕掛けられる組織と個を持つアメリカに対しても、宇津木が競り負けるような事はないはず。