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冴え渡るアギーレ采配

日本代表1ー0イラク代表
得点者
【日本代表】本田(23分、PK)

“黄金世代”台頭のイラクを、アギーレ采配で完勝

 初戦のパレスチナ戦に続き、イラクにも勝って連勝スタートとなった日本ですが、イラクは2013年のU20W杯ベスト4進出、翌年のU22アジアカップ優勝など下部年代の国際大会でアジアのみならず世界にも通用する実績を残す“黄金世代”もフル代表に自然に台頭中。近未来のW杯アジア予選でライヴァルとなる実力国です。FIFAランクの114位は政情不安からホーム開催のみならず、強化試合を組むことすら許可されない事態にあったためランキングの低さは関係ありません。

 現在のU21日本代表がU19アジア選手権やアジア大会などで“被害”に遭っているのは、“アジアのギャレス・ベイル”と言われるDFアリ・アドナン(6番)。ベイル同様に185cmを超える長身ながら爆発的なスピードを持ち、左サイドを突破。ウイングで起用される事もある攻撃力には、ベイルのような左足からの無回転FKもあり、こちらもU21日本代表が被害にあっております。21歳ながら、すでにトルコリーグでレギュラーとしてプレーしており、フル代表キャップも27もある実力者です。

 この日の先発メンバーには、そのアドナンや、7番の右サイドMFカラフにもU21日本代表は得点を決められています。また、CBのイブラヒムは現在22歳ながら、ブラジルW杯最終予選でも日本戦の2試合共に先発起用されていた逸材。彼等がいわゆる“黄金世代”に当たるわけですが、日本も1999年のワールドユース(現U20W杯)で準優勝後は、彼等を自然とフル代表に投与する事だけが強化になっていました。イラクの現状もそうで、今大会の登録メンバー23人中19人が23歳以下の若手選手で、その平均年齢は22.6歳と大会最年少チームです。

 ただし、昨年はフル代表が成績不振により監督が交代となり、現在のシュナイシル監督はまだ就任から1カ月も経っていないため、チームの完成度不足と若手タレント軍団ゆえの不安定な精神面が危惧されています。ちなみにシュナイシル監督は、あの“ドーハの悲劇”となった試合でフル出場していたイラク代表DF。しかもその試合でゴールまで記録している因縁あり。

 そのイラクを相手に、前半は本田のPK弾で先制し、守備でもイラクにシュートらしいシュートを1本も許さないなど完璧に近かった日本。しかし、後半はイラクに圧力をかけられて後手に回りました。特に、55分に動きが重かったベテランFWマフムードをベンチに下げてからは、流動的な攻撃を仕掛けてくるイラクの攻撃の前に主導権を握られてしまう苦しい展開でした。

 しかし、この苦境に対して5分ほどの時間でアギーレ監督が決断。“技巧派”の乾と遠藤に替えて、共に運動量の多い清武と今野を投入。乾と遠藤は前半で最も躍動していた2人だっただけに大胆な采配でした。

 結果的にこの2枚替え以降に戦況は一変。日本が主導権を握り返して決定機を幾度となく演出し、守備でも危なげなく勝利を収めました。

名采配を見せた”勝負師”アギーレ監督 すでに岡田、ザッケローニ等を超える力量

 このアギーレ監督の采配は見事だったという他ないでしょう。後半開始から圧力をかけてきたイラクが選手交代も利用して試合の主導権を握り始めて苦しい状況下、それに耐えるだけでなく、主導権を取り戻して追加点の機会まで幾度も作るという流れに至ったには、間違いなく64分の2枚替によるアギーレ采配でした。

 チーム作りという観点で言うと、現在はサイド攻撃からのクロスをよく練習しているようです。しかし、監督も選手たちもサイド攻撃に固執しているというよりは、起点作りをサイドにして試合を落ち着かせる術として利用しているようにも見えます。

 また、香川や乾、清武というセレッソ大阪から海外へ飛び立ちながら、直近では挫折を味わっていた3選手が、今までとは違う新たな役目を与えられながら“成長”を通して“復活”していく姿が見られます。3選手共にテクニックに秀でながらも、精神的にナイーヴな一面がある印象があるのですが、彼等には得意なプレーをさせるよりも、新鮮なアイデアを取り込む事でリフレッシュさせるというのもアギーレ監督ならではの“再生術”なのかもしれません。

 再生術という意味では、アギーレ監督の就任後は代表から外れていたベテラン選手たちにも言えます。いったん代表から外れる事で、「久しぶりに日本代表の試合をファンとして観た」といったこの日で代表150キャップを記録した遠藤も、あの時に外れていたからこそ見えてきたモノがあったはずです。

 先制点を挙げて、後半中頃からは大胆な選手交代も交えつつ、当たり前にリードしている時の戦い方をして危なげなく勝利する、というのは、“ドーハの悲劇”から直近のブラジルW杯初戦のコートジボワール戦での逆転劇など、日本代表にとっては今まで最も苦手としていた部分です。地味ですが、“適材適所”や、“引き出しの多さ”といった今までの日本代表では考えられない要素を公式戦2試合目で引き出しているアギーレ監督の力量は、岡田武史・ザッケローニ・・・ら、歴代日本代表監督とは次元が違うレベルにある気がしました。