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INAC神戸VSスぺランツァ高槻~INACが女王の風格で首位奪取

 そうは言っても、やはりタレント力にモノを言わせて試合の主導権を握るINAC。

 しかし、MF澤の欠場やスぺランツァの連動したプレスにより、INACの攻撃は中央からの配給が少なく、後方から相手DFライン裏へのロングボールも多用していました。

 従来のINACのサッカーとはリーグ内での他チームとの実力差もある事ながら、なでしこJAPAN以上にバルセロナのようなパスサッカーを披露しており、システムもバルセロナ型の〈4-3-3〉を採用していました。

 しかし、リーグ3連覇から一転して屈辱のリーグ6位に終わった昨季を経て、今季から就任した松田岳夫監督の下で現在は〈4-4-2〉を採用。2トップにW杯直前の負傷でメンバーから外れたFW高瀬愛実と大野を起用した上で、サイドMFには左サイドに京川舞、右サイドに川澄を配置し、「本職FW」を4人同時起用。ベンチに控えるFW増矢理花やMF仲田歩夢、この日は右SBでスタートしたオールラウンダーの中島依美も含めて、高瀬以外のアタッカー陣はスピードがあって個人で局面を打開できるドリブラータイプが多いため、緻密なパスサッカーというよりも「個」を活かすダイナミックな展開を仕掛けるのが現在のINACの特徴と言えるでしょう。

 そんなINACがロングボールで裏を取りながら縦へ揺さぶってフィニッシュを迎える中、なでしこ不動の左SB鮫島が京川と連携を取りながら左サイドからチャンスメイク。37分、その左サイドの高い位置でファウルを奪い、MF伊藤香奈子がゴール前へ入れたFKにFW高瀬が飛び込んで決めてINACが先制。

 しかし、スぺランツァが絵に描いたような理想的な速攻。FW巴月優希からのスルーパスを受けたMF成宮唯が右サイドからエリア内に切り込んでドリブル突破。丁寧な折り返しに、ゴール前に詰めていたDF壷井綾子が流し込んで1-1の同点に追いつき、前半終了。

 リーグ内での実力差やリーグとクラブの運営などで問題を指摘されているなでしこリーグですが、現在最下位のチームが見せるパフォーマンスの高さは試合のクオリティ自体は確実に上がっている証明と受け取れる前半45分間でした。

攻撃陣のタレントで押し切る「女王の風格」~役者の揃い踏みで3得点快勝の首位奪取!

 後半、INACは得点を挙げていたFW高瀬に替えて、代表歴もあるFW増矢を後半開始から投入。

 さらに57分という早い時間帯でベンチに座っていた「日本のダニエウ・アウべス」右SB近賀を投入。中島をボランチに上げる事で、より個人技で何処からでも仕掛けられる布陣に。その上でテンポを上げるため、ボールを奪われても大野を先頭にプレスを強めて高い位置でボールを回収して相手陣内に押し込み続けました。

 特に今季チーム最多の5得点を記録している増矢は相手ボールを追い続けて奪ったり、ボールを受けると緩急自在でコース取りの鋭いドリブル突破により、前半は拮抗していた試合の流れを一気にINACに引き寄せました。ボランチに上がった中島も攻守に積極的にボールに絡み続け、中盤からのドリブルや攻め上がりで攻撃にダイナミズムをもたらし、右サイドからは近賀が最高のタイミングでの攻め上がりと精度の高いプレーの連続。完全にINACが攻撃における「深さ」と「幅」を獲得して押し切る「横綱の寄り切り」のような試合展開になって行きました。

 そして67分、川澄の左CKからニアから増矢のヘッドがゴールポストを直撃。拾った大野が粘って折り返すと、ゴール前に詰めた京川がタイミングをズラす巧みなヘッドで流し込み、INACが2-1と勝ち越し。84分にはハーフウェイライン付近でのスぺランツァのビルドアップを連動したプレスで奪い、一気にカウンター。増矢がドリブルで持ち込んでDFを振り切ってのシュートが相手GKに防がれるも、こぼれ球を誰よりも長い距離を走ってゴール前に詰めていた川澄が右足で滑り込みながらのシュートを決めて3-1。終盤にはまだまだ人気先行型の印象が強いものの、類まれな左利きのサイドアタッカー=仲田歩夢もピッチに投入して追加点を狙う姿勢を見せたINACが結果的快勝。

 INACがまさに「女王の横綱相撲」と言える風格、役者と言える選手が決めた3得点により、前節で日テレに明け渡したリーグ首位の座も奪回。敗れたスぺランツァもチームコンセプトがしっかりとした戦いと健闘が光ったナイスゲームでした。

「台風でも会場を訪れた2686人も大満足~注目度は低くても「体験価値」があるホスピタリティ」

 台風11号の影響が多くある中で強行開催された試合。会場へのアクセスに繋がるJR神戸線がちょうど試合前の時間帯から運転を見合わせるなど、せっかくの「なでしこフィーバー」となるはずの観客動員は大幅に減少。おそらく1万人は見込まれていた中で各種イベントも中止。INACは次回のホーム主催試合が高知県、その次の主催試合も徳島県での開催となるため、地元・神戸でのリーグ戦は9月27日まで2カ月以上ない事も厳しい事でしょう。単純計算でも1人1000円のチケットでもあと7000人が来場していれば・・・なんて、「台風打撃」はINACの運営にも大打撃です。

 それでも集まった2686人のサッカーファンは非常に良い試合を観れた思いを持って帰宅出来たのではないでしょうか?いや、試合が行われたノエビアスタジアムは屋根がピッチもスタンドも全てを覆ってくれるため、試合中は全く台風の影響を雨も風も感じさせない作りだった事から、試合終了後に台風という「現実」に引き戻された感がキツかった、のが筆者の正直な感想。それだけノエビアスタジアムの作りは問題視される芝の状態以外は完璧。どこぞやの新スタジアム建設で「屋根がなくても問題ない」という暴論を飛ばすヒト達を拝見しましたが、台風をも感じさせないスタジアムの作り方は見栄えなんかより余程重要です。

 また、台風を感じさせなかったのは、ピッチ上でのクオリティの高いサッカーや、屋根やスタジアム設備だけでなく、試合終了後の「W杯準優勝記念セレモニー」や、多くの選手のインタビュー、そしてINACのベンチ外選手も含めた全選手が手提げ袋にサインボールを入れて持ち回り、観客席へ投げ入れるというイベントなど最後まで観客を楽しませてくれたホスピタリティ精神の賜物。BSフジで放送中の『INAC・TV』の番組出演参加型のブースも用意されており、ピッチ内外でINACは4年前よりも躍進している事を感じさせてくれました。

 確かに地上波でのテレビ中継もなく、一般的には注目度が低く、男子のJリーグとは違って実際はアマチュアスポーツであるなでしこリーグですが、試合会場へ足を運ぶ事で「お得感」があるイベントの「体験価値」は高いものがあると言えます。台風の存在を忘れさせるぐらいですから。

 とはいえ、それは代表選手を多数抱え、完全プロ契約選手も多いINAC神戸だからこその出来る芸当。なでしこリーグ1部は7月20日の月曜日にも第12節が開催されます。筆者はこの日の対戦相手だった、現在勝点4の最下位・スぺランツァFC大阪高槻が、W杯メンバーであるGK山根恵里奈、FW菅澤優衣香を擁するジェフユナイテッド市原・千葉レディースを迎える試合を取材予定にしています。試合内容・詳細はもちろん、INACとの主催試合のコントラストを運営面からもレポートしたいと思いますので、今後ともご閲覧よろしくお願い致します。

 ちなみに、急になでしこの記事を書き始めたと思われるであろう読者の皆様に「言い訳」をしておきますが、筆者は毎年指で数えられる程ではありますが、INACの試合は現地観戦しています。その証拠に昨年度のレプリカも持っていますよ。