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必然の快勝劇と杉田亜未がいる幸せ【プレナスなでしこリーグ1部第4節、伊賀FCくノ一VSちふれASエルフェン埼玉】

 4月23日の日曜日、毎週末が快晴で心地良いサッカー日和。筆者は三重県伊賀市の上野運動公園競技場へ足を運んだ。プレナスなでしこリーグ1部は開幕から3節を終了した時点で、ホームの伊賀FCくノ一は1分2敗。開幕3戦を終えて最下位からスタートする苦しい序盤戦となっている。
 
 この日ホームに迎えたのは今季から1部へ再昇格して来た、ちふれASエルフェン埼玉。1年で1部再昇格を果たしたとはいえ、直近の5年間で1部昇格と2部降格を2度ずつ経験している“ヨーヨー・クラブ”(落ちても直ぐに上がって来るという意味で主に英国で使われるサッカー用語。)であるのが現実。

 再昇格して来た今季も開幕3戦を1分2敗の未勝利。ただ、開幕2戦の対戦相手が、2連覇中の女王=日テレ・ベレーザとタレント軍団・INAC神戸レオネッサの2チーム。連敗したとはいえ、“2強”とも互角の戦いを見せていただけに結果だけでは実力を判断できない侮れないチームであるのも事実。
 
 特にチーム生え抜きの11年目となるMF薊理絵(あざみ りえ)は、右サイドを切り裂くドリブルが如何にも“サイド職人”と表現できる独特の間合いやリズムを刻む。スピードと運動量も兼ね備えており、オフ・ザ・ボールで右サイドから中央へ走り込んでくる鋭い動き出しも特徴。サイドを専門としながら、1部通算103試合の出場で32得点を挙げている決定力も持つアタッカーだ。

 その薊を右サイドMFに置く<4-2-3-1>を基本布陣とするエルフェン埼玉。決してDFラインを引くのではなく、コンパクトな陣形を維持して中盤でのボール奪取を狙い、鋭い速攻を仕掛ける。しっかりと中盤でパスを回すような相手にとっては苦手なチームだ。そう考えると2強の苦戦も必然だと考えられる。

 今節の前日開催の結果により、今季に入ってリーグで勝利がないのは、この2チームのみとなった。なでしこリーグはホーム&アウェイによるリーグ戦とはいえ、全18試合のみのコンペティションなだけに、この試合で敗れたチームは恐らく最後まで残留争いを強いられるシーズンとなりそうな「絶対に負けられない戦い」となった。

野田監督の采配と素早い攻守の切り替えで、的確な試合運びを見せた伊賀

『ちふれ戦先発布陣』

 そんな中で伊賀の野田朱美監督は、これまで固定して来た4バックに修正を加えた。左サイドから崩される事が多い今季、相手の右ウイングには得点力も兼ね備えるサイド攻撃のスペシャリスト=薊がいる事もあり、左SBには竹島加奈子を初先発に抜擢。
 
 また、先発メンバーの変更はこの1カ所だったものの、この変更によって前節まで左SB起用の佐藤楓が最前線に入り、FW起用だった櫨まどかが昨季までのように中盤に入るなど、3つのポジションで変更があった。櫨が言う「(内容面で)やれる事が多くなっている実感がある」というチームには、ポジション変更に臨機応変に対応できる選手が多くなっている。
 
 試合は共に未勝利で結果が出ていない両チームが守備から入ったために慎重なスタートとなったものの、集中力が研ぎ澄まされていた伊賀の攻守の切り替えの速さは際立っていた。
 
 2トップから献身的なプレスを連動させていた伊賀だが、決して最前線からプレスを仕掛けるのではなく、狙いは相手のボランチのエリア。特にFWの杉田が<4-4-2>の“5人目のMF”のような役割を担ってプレスバック(戻りながらボランチと挟み込む守備)する事で、中盤での瞬間的な数的優位を作って幾度もボール奪取に成功した。
 
 そして、奪ったボールはシンプルに前線両サイドのスペースに出し、この日FW起用となった170cmの長身・佐藤に預ける。また、今季個人的に鋭いキレのある動きを続ける杉田の個人技に託す形も多くなった。結果として直線的にゴールへ向かう攻撃が増えた伊賀は、今季のチームのスローガン“漸進”の通り、プログレッション(前進)サッカーを披露した。

杉田&佐藤の2トップのアベックゴールなどFW陣が4得点

 そして16分、左サイドで攻守が切り替わった瞬間にフリーとなった杉田へパスが通り、ワンタッチで前を向いてゴールを確認した杉田は右足を一閃。強烈で豪快なだけでなく、やや前へ出ていた相手GKの頭上で鋭く落ちるドライブミドルシュートが決まった。
 
 24分には、自陣でボールを奪ってからカウンターを発動。右サイドのスペースへ大きくフィードしたボールに杉田が反応。フェイントでタメを作り、絶妙の精度とタイミングでニアサイドに走り込んだ佐藤へ低いクロスを供給。華麗なワンタッチでゴールに押し込んだ佐藤の移籍後初得点で一気に2-0。
 
 前半はその他にも杉田がドリブルで中央突破を仕掛け、パス交換から自ら技巧的なループシュートを狙う惜しい場面も。逆にエルフェン埼玉のシュートを終了間際の1本に抑える的確な試合運びで前半を折り返した。
 
 後半、2点ビハインドのエルフェン埼玉が選手変更とシステム変更により攻勢に出て来たため、伊賀は押し込まれる時間もあった。
 
 ただ、逆に前掛かりになった相手の裏はスカスカで、難しいパスを狙う必要もなく冷静に正確なパスを通せば決定機が生まれた中、伊賀は杉田が左クロスからフリーのシュートを外してしまうなど、トドメの1点を決めきれず。
 
 それでも初先発の左SB竹島が健闘し、彼女の隣を守るCB大橋実生が決定的な場面で間一髪のシュートブロックに入るなど、守備陣が大活躍。
 
 決定機を逃し続けて来た伊賀だったが、佐藤が途中交代でピッチを後にした事でFWへと繰り上がったMF小嶋美舞が佐藤と異なった持ち味を発揮して魅せた。
 
 84分、左サイドでボールを受けるとキープに入ると思いきや、ぺナルティエリア内でさらにゴールに向かってドリブル突破を開始。4、5人のDFを引き連れながらゴール前至近距離まで持ち込み、軽快なドリブルシュートが決まって3-0。続く93分には大きなクリアボールに反応して前線でボールを収め、最後は杉田がしっかりとDFを引き付けてからのラストパス。GKを冷静に交わした小嶋が無人のゴールへと蹴り込み、4-0。