その後、広島は後半から出場したMF茶島雄介が小気味良い動きでパスを受けて起点になったり、チャンスメイクにどんどん絡んで行く。それでもウタカのシュートは枠に飛ばず。時間だけが経過していたが、67分に右CKからぺナルティエリア内で湘南DFアンドレ・バイアのファウルにより、PK獲得。これをウタカがやっと枠に沈めて決め、1-1の同点に。
ただ、直後の71分。広島は自陣でのビルドアップから右サイドのミカエル・ミキッチのトラップが大きくなった隙を突かれてボールを奪われる。瞬時のゴール前への飛び出し&スルーパスからFW藤田祥史が冷静に流し込み、如何にも“湘南スタイル”の真骨頂と言えるショートカウンターから湘南が1-2と勝ち越し。
追いかける広島は、キレのある動きを見せていた途中出場のMF茶島が負傷交代。ただ、83分に茶島に替わってピッチに立ったのは、飛ぶ鳥を落とす勢いのU23日本代表FW浅野拓磨だった。それでも、サンフレッチェの総攻撃と矢継ぎ早のシュートに対して、最後はゴール前を固めて必死に守る湘南のシュートブロックの数の方が多いのでは?と思えるほどの執念の守備に屈したか・・に見えた。
しかし、ラストプレーとなった95分。自陣から青山がゴール前に大きく入れたパワープレーからセカンドボールを繋ぎ、突っかけた浅野がエリア内でDFを振り切り、右45度からシュート。ただ、このシュートも空振り気味でゴール前を横切る・・・が、懸命に戻った湘南MF藤田征也がバランスを崩した瞬間の足に当たったボールがゴールに吸い込まれ、土壇場で2-2の同点。
直後にタイムアップのホイッスルが鳴り、ホームながら昨季リーグ王者のサンフレッチェが何とか勝点1をもぎ取った。
勝点3までのジレンマ~ブリーラム戦で必勝を期す!
シュート数21本―5本が示す通り、完全に押し込む時間帯も長かった昨季のリーグ王者だったが、結果は最低限のドロー。前節・名古屋グランパス戦と同様に自分達のミスから失点もした。しかし、この日のミスは湘南のアグレッシヴかつ完成度の高いプレッシングが誘発したものであったのも事実だ。
ただ、湘南のプレスを明らかに格上のクラブがロングボールで逃げて偶発性だけに託すような単発攻撃で“勝つだけの試合”をするチームが多い中、広島は王者らしく、湘南の挑戦を受けて立った。そして、湘南もまた王者を本気にさせたとも言えるアグレッシヴな姿勢の数々は見応え十分だった。両チームの選手が良い意味でサッカー少年に戻ったかのようなプレーぶりだったように思う。本当に面白い試合だった。
『勝点3までのジレンマ』なのだが、ここは収穫について説きたい。
広島は3月16日に中3日でAFCチャンピオンズリーグの第3節、ブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦をホームで迎える。この日も公式戦3試合連続の先発起用となったMF宮原和也は、森崎和幸にはない3列目からの機動力も見せた。ACLでは左ストッパーにベテランDF水本裕貴が入る事が予想されるだけに、これをプラスに活かしたい。
また、この日のマン・オブ・ザ・マッチに選出されたウタカは多彩なパスやシュートセンス、空中戦の強さで攻撃を牽引。ただ、1トップに入ると攻守の切り替え時の動き出しが遅いため、佐藤寿人が欠場するであろうブリーラム戦でもシャドーに入った方が得策か。
とにかく、ブリーラム戦が今季最初のビッグマッチにして、シーズンの今後を左右しかねない重要な試合になる。この日の試合内容や湘南のファイト溢れるプレーに応えるためにも、ブリーラム戦で何としても結果を残さないといけない。