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なでしこ2部の魅力が満載のASハリマ・アルビオン ~迎えた昇格争い“6ポインター”【プレナスなでしこリーグ2部・第10節、C大阪堺L戦】

縦への推進力で主導権を握るハリマが先制

 前節で勝利を掴めなかった両チーム。ホームのハリマは1人、アウェイのC大阪堺Lは2人の先発メンバーの変更を行い、昇格争いを大きく左右する重要な試合がスタート。

 序盤、ペースを掴んだのはハリマだった。開始早々には左サイドから中央へと巧みに抜け出して相手DFの裏をとった千葉へ、トップ下の虎尾直美から絶妙なスルーパスが通る決定機。しかし、千葉のシュートは2度続けて相手GKのビッグセーブに遭って先制点はならず。

 奪ったボールをシンプルに縦へ展開する。ハリマの攻撃には推進力があった。しかし、徐々に中盤で好配給が出来ていたMF武田裕季が封じられ始めると、試合の流れはC大阪堺Lへ。

 35分頃には、シンプルな攻撃から宝田に抜け出されて決定機を与え、GK切畑琴乃の好守で何とか防いだ、あわやの場面も。

 それでも41分。左SB藤澤真凜が上げたクロスはGKの方向へ飛ぶミスキックかと思われたボールを、相手GKがファンブル。これを見逃さなかった葛馬史奈(かつらま ふみな)がここ6試合で6得点目のゴールを蹴り込み、ハリマは先制して前半を折り返した。

セットプレーで立て続けに失点しての完敗

 後半、先制したとはいえ、流れが悪くなっていた、ハリマ・ 田渕径二監督は、この日先発起用したFW山口紗矢に替えて、前節まで1トップに固定されていたFW内田美鈴を投入。

 内田はサイドに流れてボールを収めるなど、前線で起点を作って流れを取り戻そうと献身的なプレーで起用に応えていた。

 しかし、C大阪堺Lの若さが勢いとして出始めた60分過ぎから、ハリマはチーム全体の運動量が落ち始め、ファウルで止めたり、セットプレーに逃げる後手後手の展開に。

 そして69分、C大阪堺Lの右CKからDF筒井梨香に押し込まれて1-1の同点に。直後の73分にも左CKからの攻撃に何度もシュートブロックで粘ったものの、最後は混戦の中から松原志に押し込まれて1-2と一気に逆転を許した。

 ハリマはスーパーサブのFW矢次亜佳音を投入して同点を狙ったものの、その直後に中盤からのFKをシンプルに繋がれ、最後は宝田に今季11得点目となるゴールを決められて1-3。86分にも前掛かりになった裏をカウンターで引き裂かれ、矢形海優に4点目を喫して完敗。

 昇格争い直接対決となる“6ポインター”(勝点6の価値がある意味)は、2位のC大阪堺Lが制し、この日引き分けた首位・日体大との勝点差を3とし、ハリマは4位へと後退した。リーグ戦はこの試合で約3カ月の中断期間に入り、6月第1週からはリーグカップが開幕する。(以下、順位表参照)

シンプルにして“王道”なハリマのサッカーは、“個”を育てる!

 ボールを奪ってからシンプルに縦を突き、組み立てや仕掛け・崩しにも万能な千葉や、4連勝中に4試合連続の5得点を決めた独創性溢れるドリブラー=葛馬、今季3得点の虎尾という得点力のある個性派攻撃陣の持ち味を活かす。そして、そのアタッカー陣を操るMF武田は、両足で男子顔負けの弾道の速い正確なロングフィードを誇る。

 男女問わず、全世界共通で全体をコンパクトにしたサッカーが志向される現在、ハリマのサッカーは意図的に間延するような戦い方を見せる。局面での1対1を作りたがる。流行とは逆行したサッカーかもしれない。

 大袈裟に言えば、サー・アレックス・ファーガソン監督時代のマンチェスター・ユナイテッドのような“王道”のサッカー。

 しかし、世界最高峰の選手が揃うマンチェスター・ユナイテッドとは違い、ハリマのサッカーは長所だけで組み合わせた割合が大きく、特定の個人を抑え込まれたり、特別な対策を採られると弱い。実際、この日も後半になって“ポール・スコールズ役”(当時のマンUの司令塔)武田が効果的にボールを触れなくなると、前線の選手が孤立して攻撃が全く形にならなかった。

 ただ、虎尾や内田、武田は今季からの新加入選手で、昨季途中加入の葛馬も入団から未だ1年も経っていない。攻撃に大きく関わる5人のうち、千葉以外の4選手が新戦力とも言えるユニット構成。不安よりも連携面を含めた伸びシロの方が楽しみなのだ。

 ある意味、「戦術がないのが戦術」とも言えそうなシンプルなサッカーは、局面局面での個性やアイデアを尊重する。間延びしてリスクを抱える分、選手達はピッチ内で自分の判断で工夫を凝らす。だから、ハリマのサッカーは“個”を育てる。現在は両サイドMFを担う、千葉(上記写真10番)と葛馬(同9番)というサイドMFでは収まりきらない現チームの“2枚看板”の成長は、この“個”を育てるシンプルなサッカーがあってこそだ。