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“らしく”先勝のバニーズ京都SC~大量得点を導いたモノとは?【プレナスなでしこリーグ2部・チャレンジリーグ入替戦・第1節】

 そして前半37分、中盤で奪ったボールを、MF松田が前線中央のFW吉田へ素早く好パスを配給。速攻からドリブルで抜け出した吉田から、右に回ってフリーとなったFW西川樹へとラストパスが通る。西川が確実に相手GKの逆を突いた落ち着いたシュートをゴールに流し込み、バニーズ京都が2-1と勝ち越しに成功する。

 さらに38分にも右サイドから“バニーズらしい”華麗なパスワークで崩し、最後は松田の鋭い左足のシュートという完全に相手DFを崩す攻撃。41分には右CKから酒井望がニアサイドを直接ブチ抜く超絶ゴールか?と思わせるほどの鋭いキックも披露。追加点こそ奪えなかったものの、ホームのバニーズ京都が主導権を握り始め、2-1とリードして前半を折り返した。

“バニーズらしい”試合運びで先勝!
 勝負は2点リードで後半の岡山決戦へ!

 迎えた後半、吉備国際大学に選手交代もあって後半開始序盤は、この試合で唯一の慎重な時間帯となった。それでも57分に左サイドからFW佐藤が単独ドリブルで打開し、角度のない位置から後半最初のシュートを放ったところで試合全体に火がついた。

 その佐藤の強引なシュートが外れて再開となったゴールキックからの相手の繋ぎだった。激しい前線プレスでボールを奪い、トップ下の松田とのパス交換からゴール前中央にフリーで抜け出した西川。GKとの1対1を確実に制した西川のこの試合自身2ゴール目により、バニーズ京都が3-1とリードする。

 ただし、直後の59分にはゴール前へのロングボールとルーズボールへの対応にもたつき、こぼれ球をFW西園雪乃に豪快に叩き込まれて3-2。62分には相手のシュートがポストを直撃し、あわや同点の場面もあった。

 それでも、ここで正確でパワフルな左足キックを持つ左SB酒井望のセットプレーが火を噴く。79分、右からのFKを酒井望が自慢の左足で蹴ったキックが逆サイドのポストを強襲。ゴール前にこぼれたボールを吉田が押し込んで4-2とリードを拡げた。

 その後、「守りに入って守れるチームでもないので」、千本監督の言う通り、再び2点のリードを得たバニーズ京都は、決して守りに入ることはなかった。それは89分という試合終了間際の時間帯にも関わらず、右SBの草野が長い距離をドリブルで突破しながら駆け上がる場面が象徴していた。

 結局、ホームで4-2と勝ち切ったバニーズ京都。千本監督やMF澤田の、「格上相手にも主導権を握って戦いたい」という言葉通り、第1節は格下とは思えない“寄り切り勝ち”だった。ただ、“バニーズらしいサッカー”で大量得点を奪った一方で、失った2点はアウェイゴールとなるため、油断は禁物だ。それでも、「ボールを持って持ち味を発揮する選手が揃ったチームなので、守るというよりもボールを相手に渡す時間を少なくしたい」と、千本監督は第2節へのアプローチを抱負として言葉に残した。第2節は、12月17日の日曜日、敵地・岡山県の津山陸上競技場で行われる。

攻守を繋ぐ“シャドー・ゲームメイカー”
~日進月歩の成長を見せるMF林咲希

 この試合のMVPは2得点を挙げたセンターフォーワードの西川で異論はない。その西川が、「動きに鋭いキレがあったのでお互いにポジションを入れ替えながらプレーした」と、頻繁に中央に入ってプレーした1得点1アシスト1PK奪取のFW吉田も殊勲のパフォーマンスを披露した。

 ただ、この試合は最初の30分間は非常に危険な試合展開だった。実際、相手のシステムや出方に対して手間取った部分には、「選手間の距離だけは縮めるように叫び続けていた」と、千本監督。“後方の司令塔”MF澤田もチームへ似たような指示を徹底しながら、前半30分頃になって主導権を握り始め、大量得点に繋げた。

 そして、そのゲームの流れを修正する最中、澤田と松田という前後の司令塔の間で攻守を繋ぐMF林咲希の存在感が大きかった。間延びしていたスペースを前後左右にカバーする運動量やポジショニングの良さでボールを奪い、自ら前へボールを持ち出したり、相手陣内深くへ入っていくなど、プレーそのものも良かった。そして、それ以上に主力メンバーでは最年少の彼女が周囲への指示をどんどん出す姿に、シーズンを通して自信を深めて来た成長ぶりが感じられた。

 千本監督は、そんな林の役割について、「ウチはアンカー(澤田)が“お留守”にすることがよくあるので、そんな時には林に、『“留守番”を頼む』と言っているんですよ(笑)」と、“オシャレな捻り”を利かせて説明する。

 そんな林は名門・武蔵丘短期大学女子サッカー部シエンシア(以下、ムサタン)から加入2年目の22歳のMF。新人だった昨季はリーグ15試合に出場したものの、先発は僅か1試合だった。それがDF清原万里江の引退もあって、昨季は中盤を務めた山本裕美が最終ラインへ下がり、今季から空いた中盤のポジションに林が入り、今季のリーグ戦はプレーオフも含めて全試合で先発出場している。

 筆者はこの試合の1週間前、林のムサタン時代の1つ年上の先輩であり、現在はチャレンジリーグEASTに所属するノルディーア北海道のFW星山彩香と話す機会があった。“日本のポゼッションサッカーの第1人者”と称される河合一武監督が指揮していた当時のムサタンと、「高校2年生の時に対戦した時に、そのパスサッカーがあまりに魅力的だった」ことから、高校生にしてなでしこジャパン候補合宿に招集された星山は、なでしこリーグ1部ではなく、ムサタン進学を選んでいた。その星山は、「司令塔でありながら、テクニックのあるドリブルができるMF」と、後輩・林を称えていた。

 そして、林はそんな技巧派精鋭集団・ムサタンで1年生の時から背番号10を託されており、2年生時にはキャプテンマークも巻いていた。また、2016年1月に退任した河合監督が、19年に及ぶムサタンでの指揮で最後に10番を託した選手であった。

 だから林は単なる“お留守番役”だけには留まらない。監督からの指示やチームメイトからの要求も聞く一方で、レギュラーに定着した今季を通し、与えられた役割だけではなく、自分の立ち位置を確立しようとしている。攻撃側でも守備側でも両方のゴール前で関与できる「ボックス・トゥ・ボックス」な動きも、パスワークからドリブルで変化をつける独特のアクセントにもなれる。プレースタイルは違えど、技術や攻撃のアイデアを持つ選手が攻撃にも守備にも運動量豊富に動き回る姿は、日ノ本学園高等学校時代の先輩であり、なでしこジャパンにまで選出されているASハリマ・アルビオンのFW千葉園子にも似ている。そんなバニーズ京都での林は、澤田由佳と松田望という絶対的な前後の司令塔に隠れた“シャドー・ゲームメイカー”と呼べるのかもしれない。

 筆者の抽象的な表現になるが、もし飲食店に例えるならば、レストラン『バニーズ』の厨房には澤田と松田というカリスマシェフがいて、同じ厨房の林は前菜を作りながら皿洗いをし、ホールにまで出て行くような役割をこなしているように見える。ちなみに、バニーズのパスサッカーを支える“繋げる両サイドバック”草野と酒井望は下ごしらえと仕込みが上手いと例えられそうだ。ホール担当は、スピードと突破力に優れながらも人懐っこく接客が上手そうな吉田・西川・佐藤の3トップ。お店全体を俯瞰しながら足りない部分をチェックするCB山本。今年3月にはなでしこジャパンにも選出された快速CBの石井咲希は、誰かのミスもすかさずフォローできる。GKでチーム主将でもある後長美咲は、店舗業務も積極的にこなす支配人でどうだろう?かなり良いレストランになりそうだ!
 
 御存知、赤い表紙のレストラン・ホテルガイド『ミシュラン・ガイド』は、“星”の多さで評価される。この日1つ目の星を獲得したバニーズ京都SCは12月17日の日曜日、岡山県津山市で2つ目の星を狙う!