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荒々しさと華やかが綯交じる不思議なスタジアム
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第87話はPKOバンク·ポルスキ·エクストラクラサを代表する強豪レギア·ワルシャワの本拠地スタディオン·ヴォイスカ·ポルスキエゴ。取材したのは大手銀行の冠がつく前の2018-19シーズン終盤。一番近いメトロのポリテクニカ駅から一キロ以上歩くためバスを選択。スタジアムを囲んでロズブラトに停まる1ー5、レギア·スタディオンの1―3系統と多くの路線が運行している。その芸術性と風刺の効いたユ-モアで、間違いなく欧州否、世界No.1であることは自他ともに認めるレギア·サポ-タ-がこさえたティフォ。一例をあげるならば2022年4月、ヴォイスカ·ポルスキエゴにはエクストラクラサ=国内一部リーグの試合にもかかわらず、ロシアの大統領がロープで首を吊られている巨大なティフォを掲げた。図柄を見るとこのシ-ズン、五ヶ月前のUEFAヨーロッパリーグ(EL)2021-22グループリーグ最終節で対戦、ゼリムハン·バカエフ:Zelimkhan Bakayev【1996年7月1日生】の得点で辛酸をなめさせたスパルタク·モスクワのユニフォームを着せているのが絶妙。
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些か気になるのはの日本のメディアと読者であるサッカ-ファンがコレオなる名詞を狭義で理解していること。誤ってはいないのだがティフォは本来人文字や巨大な旗等を用いた応援の演出/総称を指す言葉で横断幕もこれに含まれる。それに対してコレオグラフィーは曲や振付を意味するがサッカ-では紙や布などを使って作り出す人文字=パフォーマンスを指す。何が言いたいかと言うと、コレオに関しては、日本の浦和レッズや同等レベル、欧州でもレギア以上のものを何度か目にしている。しかしレギアの創作物は従来のティフォの常識と範疇を超えるオリジナジル性抜群のア-トなのである。首吊り以外でも’23年11月30日UEFAヨーロッパリーグのグループステージ初戦のアストン·ビラ戦。巨大なゴリラの掲示も見事だった。
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欧州一過激なサポーター集団 今度はバーミンガムで炎上
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また欧州では何故か持ち込み禁止のはずが、炊かれるのが日常茶飯事の発煙筒。珍しくもないとはいえレギア·サポ-タ-が一試合で使用する本数も欧州屈指であることは間違いない。但し発煙筒の使い方には問題も。ヴィラパークの外側でウェスト·ミッドランズ警察警官隊とレギア軍団が衝突。この時は発煙筒が悪用され、炎による火傷と物を投げつけられて負傷した警察官の数は四人。加害者のポーランド人合計四十六人が逮捕された。結果、入場禁止の措置でアウェーセクション空席で試合が行われたのは一昨年だから記憶に新しい。
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かつてロンドンのスタジアムは危険な香りが立ち込め、女性や子どもが入れる雰囲気ではなかったらしい。随て男の子にとって、スタジアムでの観戦は、戦国時代の元服のようなもの。アウェーでの度重なる蛮行が耳に入るとワルシャワのスタジアムは、殺伐として危険、とても女性や子供は連れていけないのかと思いきや、ヴォイスカ·ポルスキエゴのスタンドを、かなりの数の女性が占めていたのには正直驚かされた。
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大学まで無償のポーランド 性別や貧富は関係なく学びたければ学べる国
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発煙筒による視界を遮る程の煙幕。覆面で素性を隠しているのは自身の違法行為を認めている何よりの証拠。正体不明のフーリガンに高学歴者がいても不思議ではない。同国の大学進学率は70%を余裕でオーバー。他の欧州諸国と比較しても最高レベルにあるのがポ-ランド。そして女性が男性を上回る。日本がポーランドに劣る部分をひとつ挙げるならば教育の環境。ポーランドではほぼ無償。性別や家庭環境、経済的なハンディキャップの影響がなく、前述の進学率と高さも大学まで原則無償であればこそ。高学歴に関連してか、とも働き夫婦が圧倒的に多いのも特徴。
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詳しく説明してもらいたい 二つのジェンダーの指数は何を現すのか
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2006年から非営利財団の世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数では四十五位。教育:健康:経済:政治の四項目での男女比を評価した数字のランキングで、類似の指標も結構ある。国連開発計画のジェンダー不平等指数は、女性と男性の不平等が《人間の開発》をどれだけ妨げているかを示す指標。政治参画は関係ないので、ギャップ指数百十八位の日本もこちらでは二十二位と、二十九位のポ-ランドを上回る。こういった統計の数字に対して自身が欧州を旅して肌で感じたギャップのほうが面白い。
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