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なでしこジャパンとサンフレッチェ広島の強さを支えるモノ 〜サッカーの個と組織に対する考え方

 
 サンフレッチェはシーズン中も若手選手や出番の少ない選手に関しては週2回の2部練習が義務付けられている。森保一監督が、「若手はシーズン中もずっとキャンプ中」と苦笑してしまう厳しいトレーニングスケジュールだ。その2部練習を率いるのは横内昭展ヘッドコーチで、メインテーマとなるのは「個の能力の開発」だ。それは単純に能力を上げる努力でもあるが、それを試合で最大限に強烈に引き出す術を習得するという意味でもあるのだ。浅野はそれを象徴する成長過程を経て日本代表に選出され、Jリーグのベストヤングプレーヤーまで受賞した選手だ。

 サンフレッチェにはミハイロ・ペトロヴィッチ前監督(現・浦和レッズ監督)と当時の選手たちが編み出した<3-4-2-1>の可変型フォーメーション(攻撃時は<4-1-5>、守備時は<5-4-1>)という独特なチーム戦術が一貫して継承されている。それは新加入の選手たちにとっては非常に難解だ。しかし、それを理解する事を何よりも優先していれば、きっと小さく纏まってしまう選手が多くなっていたはずだ。昨年リーグ2位の21ゴールを記録したブラジル人FWドウグラス(UAEのアル・アインへ移籍)の爆発力もなかったかもしれない。

 現在、男子サッカーのフル代表はヴァヒッド・ハリルホジッチ監督のコンセプトや戦術的な指示、約束事の理解を優先して小さく纏まってしまう選手が多過ぎるように感じる。そして、それはJリーグの各クラブでも散見される。ガンバ大阪と日本代表でのFW宇佐美貴史などはそれを悪い意味で象徴してしまっている。

 自身の持ち味を強烈に打ち出す事は、何もチーム戦術や献身性に背く行為ではない。事実、浅野やマインツの日本代表FW武藤嘉紀は守備の局面でもハードワークできる選手だ。何より彼等は発言力がしっかりとしていて、コミュニケーション力に長けている。周囲の選手やサポーターからも愛されるキャラクターがある。だが、浅野も武藤もピッチ上で自分にボールが渡れば、まず自分の持ち味を最大限に発揮する事を優先する。味方選手の方がフリーでも自らシュートやドリブルに持ち込む強引さがあるエゴイストに変身する。だからと言って、岩渕も浅野も武藤もチームプレーの出来ない自己中心的な選手とは誰も思ってはいないし、そうも見えない。

 2012年になでしこの主将の座を澤穂希から譲り受けたMF宮間はそれを深く理解しているからこそ、ロンドン五輪前に行動をとった。練習中に使用している給水ボトル1つ1つにベンチメンバーの特徴を交えた上で激励のメッセージを書いたのだ。

 『カリちゃん(丸山桂里奈)がドリブルシュート得意なの知ってるよ。だからそういう場面が来たら絶対にパス出すからね』

 なでしこのベンチメンバー達は誓った。「私たちは世界最高のバックアッパーになろう」と。そして、今も世界制覇がかかるファイナルの舞台まで駆け登り続けている。

 サンフレッチェの主将であり、昨年のJリーグ最優秀選手に輝いたMF青山敏弘が、「練習で若手からいつも挑戦状をたたきつけられている」と言う激しいトレーニングからは、主力選手たちに『俺らと練習してるんだから絶対に勝てる』というエネルギーと自信をもらえるとも表現している。だからこそ、「優勝の立役者は試合に出ていない選手たち」なのだ。

 なでしこジャパンとサンフレッチェ広島。性別や代表、クラブの違いはあれど、チーム作りの核や、選手たちの意識、サッカーの中での個人と組織に対する考え方が非常に似ているチームが偉大なる成果を出し続けている。どちらも裕福なチームではないが、ないものねだりや出し惜しみをする事もない。インタビューでボソボソとしゃべるサッカー選手が多い中、この2チームの選手にはハッキリと言葉で伝えられる選手が多いのも似ている。

 なでしこジャパンとサンフレッチェ広島の強さの秘密が少し分かったような気がする。