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今季限りとなるアップトン・パークでの思い出

育成型クラブ理想の本拠”ジ・アカデミー・フットボール”

 プレミアリーグのスタジアムの入場ゲートでは持ち物検査やボディチェックなども厳重にやっている。前日に行ったトッテナムのホワイト・ハート・レーンでのストーク・シティ戦ではかなりボディタッチをされたのだが、アップトン・パークはJリーグより緩いくらい。ホワイト・ハート・レーンで写真撮影をすると、「次はつまみ出すぞ」と言われたが、ここでは警備担当の女性が、「あら、記念撮影?私が撮ってあげましょうか?」と言ってくれる。

 スタジアムのスタンド裏にあるコンコースには売店だけでなく、他会場でのプレミアリーグの試合の生中継映像が流れており、ビールやミートパイ(筆者はカレーパイをお勧めします。)を購入しながら、マンチェスター・ユナイテッドVSリヴァプールの中継を現地の多くのサッカーファンと一緒に観た。ロンドン子はアレックス・ファーガソン監督が大嫌いだ。なんたってその当時までのプレミアリーグ17年の歴史で11回もリーグ優勝しているチームの監督だからだそうだ。画面にファーガソンが映ると、「試合中か?」と思う程に至るところからブーイングと野次が飛んでいた。これは試合が始まったらどうなるんだ?と興奮も不安も入り混じったものだった。

 試合中のアドリブで誰かが歌い始める即興のチャントがすぐに全体に拡がって行く空気。攻撃時の好プレーには拍手をし、守備時の好プレーには声で応える文化も新鮮だった。

 ハーフタイムに話した年配の現地サポーターの方とは、「そう言えば、日本人がウチ(ウエストハム)と契約したんだけど、労働ビザが下りなくて成立しなかったなあ」と言われた。2001年1月、ガンバ大阪からの移籍に合意しながら就労ビザが許可されずに破断になった当時の日本代表DF宮本恒靖氏の出来事を覚えてくれていたのだ。その年配の男性は、「日本人と言えば、フラムで良いプレーをしていたジュンイチ・イナモトは覚えてるよ。彼はどこへ行ったんだ?」とか、筆者が、「宮本と稲本は同じクラブの出身でアカデミーから育った選手なんです」と言うと、「本当に?育成型の良いクラブなんだろうな。イナモトもウチに来れば良かったのに~。もちろん、育成ではウチには敵わないけどね。」なんて言葉も交わした。

 サッカーの本場であり、選手が入場してくる部分に、“ジ・アカデミー・オブ・フットボール”と文字を刻む育成型クラブのサポーターは、やはり良い選手の発掘に対する探究心や情報量の偏差値が高い。ウエストハムはフランク・ランパードやマイケル・キャリック、ジョー・コール、リオ・ファーディナント、ジャメイン・デフォーなど同年代で代表選手を多く輩出した育成型クラブの代名詞的なクラブなのだ。しかも英国風には珍しくボールスキルやアイデアに長けた選手が多いのもこのクラブのアカデミー出身選手の特徴だ。

選手との”近さ”、ファン・サービスに触れて

 そして、筆者がちょうどスタジアムへ入る頃に駐車場に着いた車から降りて来た人がいた。何処かで観(見)た顔だった。チェルシーのレジェンドであるロベルト・ディ・マッティオだった。当時はウエスト・ブロムウィッチ・アルビオンの監督で視察に訪れていたのだ。「ディ・マッティオさんですか?サインいただけますか?」と言うと、「もちろん、どこから来たんだい?」と気さくに1人の人間同士の会話をしてくれる見るからに”良い人”だった。 

 これで筆者が思い出したのは、ボルトン・ワンダーランズでプレーしていた現役時代の中田英寿氏の言葉だった。

「イングランドの中位以下のチームは、ホームゲームではスタジアムに選手個人が車でやってくる。」

 試合終了後、テレビ解説で訪れていたアーセナルのレジェンドが入場ゲートにいた。レイ・パーラーだ。アーセン・ヴェンゲル現監督の下で果たした3回のリーグ優勝にも貢献した、ダイナモ的なMFだった人物だ。両手にサインペンを持って360度回転しながら笑顔でサインしまくったパーラー氏の筆は、もちろん筆者の観戦チケットにもある。未だに筆者にとっては宝物だ。(下記の写真掲載)

 その後にはウエストハムの多くの選手、当時のイングランド代表だけでもGKロバート・グリーン、MFスコット・パーカー、FWカールトン・コールにももらった。ピッチとの距離も近いが、それ以上に選手側の対応がフレンドリーで近い距離を感じさせてくれる良いクラブであり、理想的なスタジアムだった。

 この距離でトーマス・フェルマーレンやウィリアム・ギャラス、バカリ・サニャという各国の代表選手が観れるピッチとの距離の近さはもちろん、ハマーズのクラブとしての“近さ”を感じた。

 そして、アウェイのアーセナルの選手バスが出る頃、“ファン・ペルシー”コールむなしく、彼はVIP席のお客さんのみにはファンサービスをしていたが、アーセナルの選手はアウェイでもあり、あまり対応はしなかった。ただ、1人だけ一般席側の明らかなハマーズ・サポーターにも積極的に対応した選手がいた。コートジボワール代表DFエマニュエル・エブエだ。見かけ以上にヒップホップな私服を着こなしたオシャレな熱い男。同じ黒人の子供中心に対応していた姿には感動的なモノを感じた。最近、良くないニュースがあったエブエだが、ホントに優しくて良い人だった。
 
 ウエストハムのホーム開催の試合は残り3試合。筆者の個人的なエピソードも踏まえて、このスタジアムでの試合も楽しんでいただければ幸いです。