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ドルトムントの復活なるか?〜イノベーターのクロップを経て、リノべーターのトゥヘルの時代へ

 日本代表MF香川真司も移籍金は無料(育成料として3000万円ほど支払)で、他にも下部組織出身のトルコ代表MFヌリ・シャヒンやドイツ代表MFケビン・グロスクロイツ、今では最終ラインの要であるドイツDFマッツ・フンメルスも当時はバイエルンからのレンタル移籍で、ポーランドトリオ(右SBのウカシュ・ビシュチェク、MFヤクブ・ブワシュチコフスキ、FWレヴァンドフスキ)が先発メンバーにいたのも珍しいチーム編成だったように感じます。運動量が多くてハードワークができる選手で構成され、技術がある選手は日本など未開拓で移籍金の安い国から獲得した若手集団だったのです。

 前述の“ゲーゲン・プレッシング”を武器にブンデスリーガを2連覇したチームのベースは戦力的に乏しい地点から発展しているため、堅守速攻路線から成り立っていました。その中からシャヒンと香川がレアル・マドリーとマンチェスター・ユナイテッドというメガクラブに引き抜かれたのですが、ブンデス連覇の成功と経営的にも借金返済のメドがたち、いつしか優良企業となって、サッカー界でも“ビッグクラブ化”していたドルトムント。彼等の代役としてドイツ代表MFイルカイ・ギュンドアン、アルメリア代表MFヘンリク・ムヒタリアンという技巧派で移籍市場の人気銘柄になっていた選手を獲得できるようなクラブ力と資金力を身につけていました。

 その上で、放出したはずのシャヒンと香川がチームに復帰。逆に、グロスクロイツやブワシュチコフスキ、長年に渡ってチーム主将を担ったセバスティアン・ケールのようなハードワーカータイプが退団(引退含めて)して迎えたのが今季です。その間の2013年夏にドイツ代表MFマリオ・ゲッツェ、2014年夏にポーランド代表FWレヴァンドフスキをバイエルンに奪われましたが・・・。

 レヴァンドフスキ退団と他クラブからの研究が進んだゲーゲン・プレッシングからの脱皮は、シャヒンとギュンドアン、香川とムヒタリアンは被るはずのなかった技巧派が増えてハードワーカーが減ったチーム編成上からも想像できるように「ポゼッションの導入」でした。

ドイツサッカー新時代の旗手=トゥヘルと、1860ミュンヘン出身の新旧ボランチからも見えるトレンド

 ポゼッションの導入に最も効果があったのは、今季から加入したドイツU20代表MFユリアン・ヴァイグル。現役時代のジョゼップ・グアルディオラ(元スペイン代表選手、現・バイエルン・ミュンヘン監督)を想起させるようなパスワークの起点となる的確なポジショニング、技術力の高さが武器の彼をアンカーに据えたトゥヘル新監督はそれまでの<4-2-3-1>から、攻撃時は<4-3-3>も並行して使えるように基本システムを微修正。トップ下の香川には得点直結のアタッカー色よりもアシスト役に回るインサイドMF的な役割を任せ、ギュンドアンには前線にも飛び出すようなダイナミックな動きが出てきたのも、このマイナーチェンジの効果でしょう。

 このヴァイグルという20歳になったばかりの若手ボランチは現在2部リーグの1860ミュンヘン出身。このクラブは代表クラスのボランチを輩出するクラブで、もともと「今、どんな選手が高く評価されているのか?」を敏感に察知する育成型のクラブとして知られており、実は現在もドルトムントに所属し、クロップ時代の主力ボランチだったドイツ代表MFスヴェン・ベンダーもその1人。守備の強さと身体能力の高さを武器にするベンダーから、技巧派のヴァイグルへ。1860ミュンヘンの育成の流れの変化がそのままドルトムントにも表れたと言えるでしょう。

 先発メンバーにはこのヴァイグル以外にはスイス代表GKロマン・ビュルキが新守護神に入ったぐらいで主力選手の顔触れは変化なし。いかにヴァイグルの影響が大きいか?というのも感じさせながら、右SBには本来はCBのマティアス・ギンターが新境地を開拓。近年はビシュチェクが故障がちだったとはいえ、これでポーランド人が主力からいなくなったという部分でもクロップ色が薄くなったようにも見えます。

 また、マインツの監督を2014年に退任したトゥヘルはバイエルンのグアルディオラ監督を2度訪ねた事も明らかにされており、このポゼッションのアイデアも“最強バルサ”を作ったグアルディオラからの影響もあるのでしょう。
 
 こうした様々な状況と歴史的な流れ、背景からクロップ監督が作った土台を活かしながら、新たにポゼッションを導入した新生トゥヘル・ドルトムントは開幕5連勝を飾ったものの、ここへ来て3戦で2分1敗と足踏み状態。しかし、昨季の不振から今季のチャンピオンズリーグの出場権を獲得できずに戦力が薄くなった上で、木曜開催のヨーロッパリーグに出場しているため、週末のリーグ戦へ疲労が残る度合いが大きなった事から“お疲れモード”も納得なのが現状です。

 ドルトムントがポゼッションを取り入れ、バイエルンがロングボールを多用したり、ショートカウンターも取り入れ始めた。“バイエルン化”しようとするドルトムントと、ドルトムントのストロングポイントも取り入れたバイエルン。どちらも相手をリスペクトしてるからこそ、相手の持ち味を取り入れる事にも至っているのでしょう。

 今回の対戦は大差が付きましたが、「これがドイツのサッカーなのか?」となる技術的な部分から構成される攻撃的な試合になったのは日本人のサッカーファンからすれば興味深い部分でもありました。昨季はリーグ7位だったチームが監督を交代して迎えた今季ですから、本来はまだまだ足場固めの段階です。そう思えば、今後も愛すべきチームであるドルトムントと香川の動向に注目ですね。