Foot ball Drunker 〔110〕visiting『 Jan Breydel Stadion 』ブルッヘ / ベルギー

ブルッヘも温存していた司令塔ヴィクトル·ヴァスケス:Víctor Vázquez【1987年1月20日生】を入れて試合の主導権を手放さない。前年にはベルギー年間最優秀選手=MVPに輝きユースも含め14年を過ごしたバルサではUEFAチャンピオンズリーグも経験しているヴァスケス。地味でも随所で巧さが際立つ。先制点に続きアブドゥライ·ディアビ:Abdoulay Diaby【1991年5月21日生】が再びゴールを決めて勝負あり。32歳になった今季はシュペル·リグのペンディクスポルでプレーしている。


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KRCヘンクの有望株が前年のロンメル(二部)からルーヴェンへと貸出先が変わり、ジュピラープロ=でデビューを飾る。ヴァスケスの隣、レアンドロ·トロサール:Leandro Trossard【994年12月4日生】は30試合出場8得点を記録。頭角を現したのもこのシーズン。
翌2016-17シーズンからヘンクに戻る。17-18シーズンこそ怪我に泣かされたが2019年には主将腕章を授かり英国移籍も目前の雄姿を撮影。

ヤン·ブレイデル·スタディオンを語るうえで外せないのは2007-08シーズンの最終戦。
フランソワ·ステルシェル:François Sterchele【1982年3月14日生–2008年5月8日没】は2004年三部に低迷するOHルーヴェンでゴールを量産し二部昇格へと導く。’05年にはシャルルロワSCに移籍、ここでマタイセンの指導を仰ぎ急成長を遂げる。リーグ得点王を手土産に2007年恩師からの誘いでブルッヘに。A代表にも招集され明るい未来が約束されていた。

5月8日自身の運転操作過失による単独事故死。胸に23番の特注ユニフォームを纏い喪章を腕に巻き円陣を組む選手達は人目を憚ることなく涙を流した。マタイセンをはじめ首脳陣は黒スーツに黒ネクタイの喪服姿。
彼の死から間もなく16年が過ぎる現在もサポーターは試合開始から23分を経過すると一分間、敬意を持って哀悼の意を拍手で示す。この瞬間だけは星の数ほど在る欧州のスタジアムの中で、『ヤン·ブレイデル·スタディオン』が最高であると断言してよい。[第110話了]