昨年の明治安田生命J1リーグ第2ステージ優勝を果たし、明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ決勝でも、一昨年の国内3冠王者であったガンバ大阪を下したサンフレッチェ広島。その主将であるMF青山敏弘が昨季のJリーグ最優秀選手に選出された。
サンフレッチェは年間通して、リーグ最多の73得点とリーグ最少の30失点。さらに2005年以降のJ1リーグが18チーム制になって以降の最多勝点74をも記録した。さらにフェアプレー賞高円宮杯を4年連続で受賞。昨季はチームとしての成績もイメージとしても、これ以上ない成果を上げた。
そのチームの主将としてリーグ戦では1試合を除く33試合に先発出場したMF青山が中盤の底で年間通して安定したプレーを続けた事が評価され、「最優秀選手」に選出されたのなら、それは納得だ。
しかし、本当に昨季の青山のプレーは安定していたのか?
模索と葛藤の日々だった2015シーズン
昨季のサンフレッチェは2012年と2013年のJ1リーグを連覇した原動力であるMF高萩洋次郎(現・FCソウル)とFW石原直樹(現・浦和レッズ)が揃って移籍でチームを離れた。主力に定着し始めていた韓国代表DFファン・ソッコ(現・鹿島アントラーズ)も含めて、主力3選手が退団していた。
特に2シャドーを担う高萩と石原の退団により、攻撃面の再構築が問われていた。結果的に21ゴールを挙げて大成功するブラジル人FWドウグラス(現・アルアイン/UAE)も前年の徳島ヴォルティスで初めてのJ1を経験しながら、13試合出場無得点に終わっており、シーズン開幕当初は決して即戦力というわけでもなかった。
そもそも2014年シーズンの夏にエースFW佐藤寿人が先発から外され、ベンチからも外されるような時期もあった中で迎えた2015年は、フィニッシュワークに前線の組み合わせによる阿吽の呼吸が要求されるサンフレッチェの攻撃面は不安視されていた。
その代わり、チーム戦術として前線からのハイプレスを採用し、高い位置で奪ってショートカウンターを仕掛ける、という新たな戦術オプションを使う頻度を増やしていた。そして、ミハイロ・ペトロヴッチ監督(現・浦和レッズ監督)時代から継続している“従来のサンフレッチェ流パスサッカー”に、森保一監督流の戦術を付け加えた、ハイブリッド型のチームが出来上がったのだ。
そのため、効率的に得点と勝点を積み上げる事が可能になったものの、1トップ2シャドーがワンタッチパスの連続で崩していくような阿吽の呼吸によるコンビネーション攻撃はシーズン半ば過ぎまで見られる回数は少なくなっていた。
青山もこの期間は得意の縦パスで相手にボールを渡してしまうような事も多く、想い悩む姿からはミスの回数も増えていた。ただ、彼はショートカウンターを狙う時には、その粘り強さから「スッポンマーク」と言われた元日本代表MF本田泰人(元鹿島アントラーズ)のように粘り強いマンマークで相手の攻撃のキーマンを封じた。そして、その奪ったボールをドウグラスやU23日本代表FW浅野拓磨へ繋ぎ、彼等のブレイクにも繋がるプレーを披露した。