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サッカーの進化は終わらない 2014 〜中

 人とは、どこまでも貪欲な生き物だ。もっと先へ、もっと上へと進歩を遂げてきた。その繰り返しが現在の人間社会となる訳だが、その構図はサッカー界でも変わらない。もっと強いチームを、もっと良い選手をの発想で進化を続けている。

 そしてその進化のほとんどは、4年に1度おこなわれるワールドカップイヤーでお披露目される事が多い。欧州サッカーでは毎年のように進化しているが、ワールドカップは全世界にその進化を知らしめる舞台となる。

 2014ワールドカップを制したのはドイツだった。ドイツの優勝で、多くの国々がスタイルを真似る事になる。ファッションと同じで、他人に真似されるようになれば流行を生み出したといっていい。2010年ワールドカップを制したスペインは、世界にポゼッションサッカーという流行を生み出した。

 では、ドイツの優勝で何が起こるのか。人類が求める果てしない進歩を今年のワールドカップから感じ取る事が出来た。その答えを2014年の最後に書き出しておきたい。

 前回、ドイツ代表の戦い方とスペイン代表に敗れた2010年までの出来事を中心に記述した。第2回となる今回は、サッカー界で常に巻き起こってきた議論と、ドイツが取った道について書いていく。

☆良い面のみを掬い上げる進化

 スペイン代表に敗れた後、ドイツ国内でもポゼッションの必要性を説く者たちが増えた。常にハイテンポなサッカーを続けるの ではなく、ポゼッションを保って相手を走らせる時間を作る必要があると。確かに2006年からのドイツは攻守の切り替えを武器としたハイスピードサッカーを軸に戦っていたが、スピードが常に一定だった。

 逆にスペインは縦に急ぐ場面はほとんどなく、カウンターよりもポゼッションを選ぶチームだった。これは当時バルサを率いていたグアルディオラが植え付けたスタイルであり、スペイン代表はバルサの完全コピーだったといえる。そしてこの時期、ある議論が巻き起こった。

 サッカーに走力は必要無いと論じる者と、そうでない者である。サッカーでは走り続ける事が重要であり、走力で試合を支配すべきと考える者たち。代表的な監督を挙げるとすれば、モウリーニョや日本代表を率いた経験のあるオシムらがそうだ。
 一方で、サッカーとはボールを使ったゲームであり、技術さえあれば走る必要は無いと考える者もいた。スペイン代表やバルサのようにボールをキープしていれば、走る必要など無いと。こちらはグアルディオラやその師匠であるルイス・メノッティらが該当する。
 特にメノッティは弟子ともいえるグアルディオラのサッカーに心底酔っていた。ボールを扱う技術が高い方が勝つと言い続けてきたのだ。確かにこの2つの理論は対極にあり、交わるポイントが無い。しかしドイツは見逃さなかった。

 ドイツは2006年より続けてきたトータルフットボールにより、走れる集団となっていた。1試合に12~13Kmも走るミュラーやケディラなど、走りでチームに変化を加える選手が揃っていた訳だ。とくれば、後はもう一方のポゼッションを手に入れれば盤石のゲーム運びが出来るのではないか。

 しかし、シャビやイニエスタのようなバルサイズムを持つ選手たちのテクニックを習得するのは難しい。バルサのサッカーは彼らが揃ってこそ出来る芸当だったのだ。つまりドイツが目指したのは、バルサと自分たちの中間にあるサッカーだ。走るチームにありがちなテクニック不足、バルサやスペイン代表に欠ける走力や守備力不足を補ったスタイルを目指したのだ。両者の良い面を盗んだのがドイツ代表のスタイルであり、ブレの少ないチームが出来上がった。

 ドイツの取った道は、まさに人類の進化を象徴するものだった。弱点の無い完璧なチームを求めた結果、あらゆる悪条件でも盤石の戦いが出来るチームとなった。それはブラジルの猛暑でも同じ事だ。走れない時にはポゼッションを軸に戦い、そして最後まで守り抜ける守備力もあった。
 加えて、2000年より続けてきた若手の育成に成功し、ゲッツェやフンメルスのようなワールドクラスの選手が続々誕生した。フンメルスは良い例で、DFなのにボランチ並のパス能力と視野の広さを持つ。両足でボールを操る事が出来、噂ではドイツ代表の中で最も技術があるという。昔のように守るだけのDFを採用しなかったのは、まさにドイツが現代的な育成に成功した証拠だった。

 穴の無い完璧なチームがワールドカップを制した事で、今度はこれを超える完璧を求める者たちが現れるだろう。

 では、日本代表は今後どのような道を選ぶべきなのか。最終回では2018年、いや、もっと先の未来を見据えた代表強化論について考える。