66〗Tynecastle Stadium /エディンバラ スコットランド

紫色に空が移ろう幻想の都

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数多くの絶景が点在する欧州を見渡しても、エディンバラの情趣溢れる朝焼けは格別で忘れ難い。英国でも特に曇りの天候が多いスコットランド。偏西風が海上の水蒸気から雲を生み出し、バイオレットからパープル色に染まるカンバスの下地。幻想的な世界にエディンバラの街並が描かれる。青と赤、相反する色の絵の具を混ぜることで新たな色彩が生み出される。今回のテ-マカラ-は紫。日本では高貴で雅やかさの代名詞。十三年程前パリで子供達を対象にワ-クショップを開催した時のこと。仕上げに着彩するのでお好みの色を聞いたら、女の子たちは一様に「violet=ヴィオレ!」のリクエスト。たまたま流行していたのだろうか、口を揃えた理由は謎だか、サンフレッチェ広島サポ-タ-には喜んでいただけるかもしれない。

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子供達との集合写真を記録用に撮影、早めに迎えにきたお母さんに「貴方が余りに美しいので写真を撮らせてもらえますか?」と通訳に告げると、そのまま直訳してくれたらしい。もちろんイベントの事業報告書に添付する写真だから仮に醜女でも笑ってくれていれば事は足りる。
忘れられないのは帰ってきた一言。「昨晩まで不眠症気味だったけど貴方のおかげで今晩はぐっすり眠れそうね。」 
こちらのユ-モアに対してユ-モアで返してくるとは流石パリジェンヌ。実際パリで素敵な女性とお目にかかるが、日本では何となく誤解されている気もする。パリジェンヌとは自身のライフスタイルを確立した人生経験が豊富な女性を指す場合が多い。

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スコッチウイスキ-だけではない 培われた醸造文化

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カバ-写真のビ-ルはベルヘイブン。1719年に設立されたBelhaven Breweryは、スコットランドで最も古い現存する醸造所。エディンバラから東に五十キロ離れたダンバ-にある。スコットランドの首都として繁栄した都市で培われた醸造文化。肥沃な土壌で麦の穂は実り、清らかな湧き水は天からの恵み。街が発展し人口が増加すれば醸造所の数も雨後の筍。1598年には醸造組合が設立される。ビールにかかる税金は他のイギリスと比べても低く、スコットランドではモルトに対する税金が無かった。エディンバラの四つの醸造所が合併して1889年に設立されエディンバラ·ユナイテッド·ブルワリーは、1936年に事業を停止するまで世界中にビールを輸出して栄えた。南北アメリカにインド、更にオーストラリアにまで輸出先を延ばした。ホップの含有量を多くすることで遠方へ輸送が可能な高品質ビールが誕生。ロンドンの醸造所によって現在のインディアン·ペール·エールへと進化を遂げている。
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上の写真はグレートブリテン島の北東、1988年にオークニー諸島で創業したクラフト·ブリューワリー。銘柄はRed MacGregorレッド·マグレガー。貴族と戦う赤毛の英雄ロバート·ロイ·マグレガー:Raibeart Ruadh MacGriogair【1671年3月7日生-1734年12月28日没】は実在した。
1995年4月に公開されたアメリカ映画『レジェンド·オブ·ヒーロー/ロブ·ロイ』の主演は北アイルランド出身のリーアム·ニーソン:Liam Neeson【1952年6月7日生】。しかし不運なことにスコットランドの英雄を主役に据えた作品がこの年被る偶然でロブロイは影に隠れてしまう。

アメリカ生まれの豪州育ち スコットランドの英雄を熱演

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第六十八回アカデミー賞で作品賞·監督賞など五部門を受賞した『ブレイブハート』。メル·ギブソン:Mel Gibson【1956年1月3日生】が演じたのはウィリアム·ウォレス:William Wallace【1270年生-1305年8月23日没】の生涯。この映像化を切っ掛けにスコットランド代表チームをブレイブ·ハーツと書くメディアが増えた。メルは十二歳で豪州に移住。国立演劇学院で演技を学んでいるが元々生まれはアメリカ。アイルランド人の祖母から受け継がれたケルトの血がこの大作へと導いたのか。
代表がハーツと呼ばれる前から、スコットランドには元祖ハーツが存在する。ハート·オブ·ミドロシアンFC=通称ハーツの創立は1874年。エディンバラ市は’96年までミドロシアン州に含まれており当時は州都。クラブ名はかつての名残りを感じる。2013年の破産申請により存続が危ぶまれた時期もあった。