Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/orfool/soccerlture.com/public_html/wp/wp-includes/post-template.php on line 293
no-image

「楽しんで勝つ」バニーズ京都SC flapsに見る女子サッカーの型

 2018年シーズンの『プレナスなでしこリーグ2部・チャレンジリーグ入替戦』の末に、なでしこリーグ2部残留を決めたバニーズ京都SC。

 なでしこリーグ2部に初昇格した2018年シーズンのスローガン『NEXT』に、「なでしこリーグ2部という“次”の舞台において、目前のゲーム結果に一喜一憂することなく、勝っても負けても“次”のゲームへ向けて万全の準備をすることで、これまで積み上げてきたバニーズらしいスタイルで今シーズンをぶれずに戦い抜きたい」と、したためたバニーズのサッカーには、独自のスタイルがある。

 そして、それは下部組織である「バニーズ京都SC flaps」にも一貫指導されている。

 ちなみにflapsとは、「freedom(自由)」「laugh(笑う)」「pleasure(喜び)」「smile(笑顔)」というバニーズ京都SCをイメージするキーワードの頭文字を合わせた造語で、「flap」にも「羽ばたく」という意味がある。

 そんなflapsの指揮を執る阪田和哉監督に、flapsの取り組みはもちろん、女子選手の育成年代のプレー環境、そして、トップチームが2部残留を決めた意義などを伺った。

【スタイル】バニーズに浸透する“大木イズム”

 現在、バニーズ京都SC flapsには、U15チームに30人+高校生8人+社会人2人の40選手が所属。試合ではトップチームと同じく<4-3-3>のシステムを採用し、最終ラインからも丁寧なショートパスを繋ぐ華麗なパスサッカーを実践している。

 一貫指導によってトップチームと同じサッカーのスタイルを構築しているのは、2015年から2016年にかけての2年間に「スーパーアドバイザー」として指導に携わった大木武氏(現J2・FC岐阜監督)の存在が大きいようだ。

 2015年、バニーズの下部組織は、「バニーズ京都SCガラシャ」から「バニーズ京都SC flaps」へと改名したのだが、当時バニーズのスーパーアドバイザーに就任した大木氏に、「トップチームとflapsが同じようなサッカーができるようなエッセンスを入れていただきました。今のflapsがやっているサッカーは、大木さんのサッカーを僕が解釈したサッカーです。そして、チモさん(バニーズ前監督=千本哲也氏)と僕のサッカーの考えは似ています。さらにその根本を辿ると、そこには大木さんのサッカーがあるんです。だからこそ、トップチームとflapsのサッカーがブレることはないと思います。」(阪田監督)

【関連記事】『FC岐阜に花を咲かせる大木武監督~ユースや地域リーグ、女子サッカーを経て』

 トップチームには優勝や上のカテゴリーへの昇格、または下のカテゴリーへの降格というタイトルやステータスの獲得に対して、目先の結果が問われる状況がある。クラブの哲学が深く浸透しているチームにも、時には現実的に振る舞うことがあるのは当然だ。

「ウチの下部組織はトップチームと同じスタイルで~」とは、最近のサッカー界でよく散見される常套句だが、実際は下部組織がトップチームでやっているサッカーに似ているのではなく、クラブが理想しているのは、下部組織が体現しているサッカーである。

良い条件の選手を作るための「運ぶドリブル」

 ただ、筆者がflapsの特徴として最も強く感じたのは、ショートパスの連続による崩しやゲームメイクではなく、「運ぶドリブル」だった。

 「世界最高の指揮官」と称されるマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は、「ボールホルダーは相手が動くまでパスを出してはいけない」と、指導している。

「優れた選手とは味方に良い状況(スペースと時間)を与えられる選手である」とは、『グアルディオラのポジショナルプレー特別講座』(東邦出版)を始めとするポジショナルプレーの著作を上梓しているスペイン人指導者=オスカー・カノ・モレノの言葉である。

 相手が動かなければ、ボールを持っている選手がドリブルで前にボールを運び、相手を引き付けてからパスを出すこと。相手を引き付けることでマークがズレて、スペースが出来る。そのスペースへ味方が動いて、そこに素早くパスを出していく。要は、「ボールや味方よりも、相手を動かすこと」が目的なのだ。
 
 思い返せば、トップチームでも<4-3-3>のMFとしてプレーする松田望(背番号10)や林咲希、小川くるみ等は、他クラブではトップ下やウイングで起用されそうなドリブルにも持ち味のある選手。そして、主にCBとしてプレーする山本裕美は、「世界で最もドリブルの多いCB」と表現しても良いくらい最終ラインから中盤まで自らボールを持ち運ぶ選手である。