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この年(2013年)当時無名のロガー・シュミット:Roger Schmidt【1967年3月13日生】を招聘して一年目。前年優勝時より9ポイント上乗せしていながら最終順位は2位。UEFAチャンピオンズリーグの予選出場権も手にしたのだから合格点を充分に与えられる。
それでも首位を走り続けたライバルの存在が客足を鈍らせたのか。獲得したポイント数は82。過去を振り返っても80点越えを達成したクラブは見当たらない驚異的なハイアベレージでのフィニッシュ。快挙を成し遂げたFKアウストリア・ウイーンの指揮官は、シュミットと同じく就任したばかりのペーター・シュテーガー:Peter Stöger【1966年4月11日】だった。
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独自の戦術理論に基づいてインテンシティの高いチームを拵えるシュミットに対して、シュテーガーは選手ありきでスタイルには執着しないタイプ。上写真はプレス席からの眺め。左上にはインタビューに応じるシューテーガーの後ろ姿。
「これはプレス席よりピッチサイドに行かなければ」と願望が芽吹く10年前。
エリア内の勝負師がエリア外で施した工夫
シュミットの後任アディ・ヒュッター:Adi Hütter【1970年2月11日生】にもプレッシング戦術は受け継がれる。その端正な顔立ちとルックスからフィールドの貴公子をイメージしていたが、初めて見た南野は泥臭く汗臭いプレーをしていた。監督が変わろうが南野が去ろうがコロナ禍だろうがオーストリア王者のタイトルだけは手離さない。
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遂に10連覇の偉業を達成した2022-23シーズン。天王山は5月21日の2位シュトルム·グラーツとの首位攻防戦。同月UNIQA ÖFB Cupを獲得し二冠を狙うグラーツを返り討ちにした試合の観客数はシーズン最多の17,218人。
懐かしの恩師がなんとASモナコ監督に就任する運命の巡り合わせ。復調した愛弟子南野は、森保ジャパンでもカナダ戦のスタメンに帰ってきた。独り善がりに見えたプレーが影を潜める今季、南野は相手の寄せに対して、ダイレクトパスを活用する。一度周囲の味方にボールを振って、フリーで受ける動きに磨きをかけた。《エリア内の勝負師》南野がエリアに入る前の動きに工夫を施せたのも、一年かけてチームメイトとの信頼関係が構築できたと視てよいのか。今回のカナダ戦でも周囲に気を配りポジショニングに気を遣い頭をフル回転させてプレーしているのが伝わってきた。
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フィニッシュこそ不満は残るが、オフ・ザ・ボールの動きとハードワークで貢献度を高く評価した森保一監督も称賛のコメント。
得点とアシストがなかった事しかふれないメディアよりも、ネット上では「南野良かった」とコメントする一般ユーザーが目立った。
カタール大会で日本代表はJ開幕から30年、日本サッカーの進化を世界に証明して見せたが、一番の驚くべき変化は、日本人ファン・サポーターのサッカーを見る目が肥えた事に他ならない。[第41話了]