100〗Red Bull Arena / ザルツブルク


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この年(2013年)当時無名のロガー·シュミット:Roger Schmidt【1967年3月13日生】を招聘しての一年目。前年優勝時より九ポイント上乗せしていながら最終順位は二位。UEFAチャンピオンズリーグの予選出場権は手にしたのだから合格点を充分に与えてよい内容。一方獲得したポイント数は八十二。過去を振り返っても八十点越えを達成したクラブは見当たらないから驚異的なハイアベレージでフィニッシュしたFKアウストリア·ウイーン。快挙を成し遂げた指揮官は、シュミットと同じく就任したばかりのペーター·シュテーガー:Peter Stöger【1966年4月11日】だった。独自の戦術理論に基づいてインテンシティの高いチームを拵えるシュミットに対して、シュテーガーは選手ありきでスタイルには執着しないタイプ。ツネが会長職を務め、シュミット氏がJリ-グ海外指導者招聘プロジェクトにおけるグローバルフットボールアドバイザーに就任しているのだから正に光陰矢の如しである。
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エリア内の勝負師がエリア外で施した工夫

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師走も後半に差し掛かった年内最終戦のオセール戦で南野拓実:Takumi Minamino【1995年1月16日生】が左膝前十字靭帯断裂の重傷。日本サッカー界に激震が走った。残念ながら北中米に旅立つメンバーからその名前がはじかれる絶望的な現実に眼が潤んだ。シュミットの後任アディ·ヒュッター:Adi Hütter【1970年2月11日生】にもプレッシング戦術は受け継がれる。その端正な顔立ちとルックスからフィールドの貴公子をイメージしていたが、初めて見た南野は泥臭く汗にまみれたプレーをしていた印象が強い。監督が変わろうが南野が去ろうがコロナ禍だろうがオーストリア王者のタイトルだけは手離さない。懐かしの恩師がなんとASモナコ監督に就任する運命の巡り合わせ。復調した愛弟子南野は、森保ジャパンでもカナダ戦のスタメンに帰ってきた。クラブでは独り善がりに見えたプレーが影を潜め、相手の寄せに対して、ダイレクトパスを活用するように。一度周囲の味方にボールを振って、フリーで受ける動きに磨きをかけた。《エリア内の勝負師》南野がエリアに入る前の動きに工夫を施せたのも一年かけてチームメイトとの信頼関係が構築できたと視てよいのか。カナダ戦でも周囲に気を配りポジショニングに気を遣い頭をフル回転させてプレーをしているのが伝わってきた。
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2015年8月ベラルーシのミンスクでのUEFAヨ-ロッパリ-グ予選四回戦は0-2の敗戦。南野にはほろ苦い欧州クラブレベルでの国際デビューとなった。南野にとってオ-ストリア国外への遠征はこの時が初めてではない。同月のUEFAチャンピオンズリ-グ予選三回戦。マルメに0-3でまさかの大逆転を喰らう試合では出番こそなかったがベンチ入りしており、スカンジナビア半島の地を踏んでいる。
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この2015年、時を同じくしてsoccerlture.comに寄稿を始めた頃からフォトグラファ-として申請するようになる。以前この連載はサッカー版史跡巡りの回想録と記した。あらためて筆者の欧州滞在時の行動パターンを説明すると、1〉試合を取材する。
2〉試合がなくてもスタディオンに行く。※許可がおりれば場内を撮影。3〉閉鎖されていれば外観だけ撮影する。
したがって多い日は、一日で三都市=三つのスタディオンを撮影したりもするので、1〉よりも2〉が多くなる。試合のない無人のスタディオンは基本的に一人で十分程度撮影して速やかに立ち去る。建物の外で画像を確認しながらか過去の試合の記録を紐解き感慨に浸るのだがその逆の楽しみも。第64話と91話に昨年訪問したリマソルの写真をアップしている。先月のCLではモナコがパフォスとこのスタディオンで対戦。別表に掲げたとおり、南野にとってキプロスは二十四ヵ国目となるこの試合で今季CL初得点も決めている。電車内で試合結果を携帯で確認して、ニヤニヤしていたから目の前に立っていた女子高生には「このオヤジ、キモい」と思われたかもしれない。彼女の心境はともあれ、22年に完成したキプロスのスタジアムのピッチに立った大和民族は、自分と南野の二人だけと悦に浸り頬を緩めたのは間違いない。
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欧州最高峰での日本人対決 星二つぶんで四点差の決着

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あの日あの時は◼️2019年9月17日UEFAチャンピオンズリ-ググル-プE第一節レッドブルザルツブルク対KRCヘンク。29.520人を動員したこの試合。ジュピラ-のコ-スタ-とカスティールドンケルのボトル。そしてコッリエーレ·デッロ·スポルトの紙面に、朝ロ-マを立ちブリュッセルの宿でこの試合をテレビ観戦した記憶を呼び覚ます。五つの星で各グループの戦力を格付けしておりリヴァプールは最上級。同組のナポリ、別組のインテルとドルトムントと同じく星三つのザルツブルクは同クラブ史上最強のタレントが揃ったといっても過言ではない。
ガラタサライとスラヴィアプラハは二つ。ヘンクとクラブブルッヘは最低のひとつとはいえ、ベルギーから複数のチ-ムが勝ち残ったのは価値がある。試合はアーリング·ハーランドErling Haaland【2000年7月21日生】のハットトリックで6-2と星二つぶんの力の差を見せつけたザルツブルクの完勝。南野は先制点とソボスライ·ドミニク:Dominik Szoboszlai【2000年10月25日生】が右足で決めた五点目をアシスト。前半で5-1の時点で伊東純也:Junya Ito【1993年3月9日生】はベンチに下がり奥川雅也:Masaya Okugawa【1996年4月14日生】がソボスライに代わってピッチに入ったから日本のメディアでも大きく取り上げられたのではなかろうか。
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