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グアルディオラが抱える秘密〜名将と呼ばれた2年間〜後編

グアルディオラは実に緻密な男だ。新天地にバイエルンを選んだのも、自身が目指すポゼッションサッカーを実現しやすいと考えたからだ。前編でも書いたように、バイエルンにはハインケスの残したプレッシングが染み付いていた。
ポゼッションに必要不可欠な「ボールを奪い返す能力」ではバルサを上回るものがあり、グアルディオラはそこに目を付けたのだろう。前任のハインケスが3冠を達成して勇退したのは余計なプレッシャーとなったが、仕事のしやすさを優先すればバイエルンが理想形だった。

そしてもう1つグアルディオラの能力で見落としてはならないのが修正力だ。彼は負けた試合から敗因を切り取り、次の糧へと変化させる能力に長けている。仮にバイエルンを解任された場合、彼は今回の仕事で何がいけなかったのかを分析するだろう。
大きかったのは自身が理想とする0トップシステムが機能しなかった事、そしてメッシの代役になれると考えたゲッツェのパフォーマンスが伸び悩んだ事だ。つまりグアルディオラは次の職場ではポゼッションとプレッシングの下地に加え、0トップの中央でプレーできる選手を擁するクラブを選択するだろう。
これはあくまで彼が4−1−4−1の0トップにこだわればの話だが、独特の哲学を持つ彼が易々と戦術を変えるとは思えない。美しく勝つ事をメインテーマに、再び究極のサッカーにトライしてくるだろう。

しかし、現在オファーを用意しているといわれるシティとミランにはどの能力も備わっていない。シティにはシルバやナスリなどテクニシャンが揃うが、グアルディオラが最も気にかける最終ラインからのビルドアップを苦手としている。
コンパニ、マンガラといったCB陣は足元の技術に乏しく、グアルディオラのサッカーを実現するにはDFラインを総入れ替えする必要も出てくる。さらにシティにはプレッシングに走れる選手が少なく、ここもバイエルン就任時とは違っている。
盟友のチキ・ベギリスタインがSDを務めているのは強みだが、それだけでシティを選択するほどグアルディオラは軽い男では無い。出来る事と出来ない事を明確に分け、自身が成功を収められるかを何度もシミュレーションしているはずだ。

ミランはもはやビッグクラブとは呼べず、CL出場権すら持たないクラブにグアルディオラが行くはずは無い。このように彼の働きやすい新天地を探した時、いったいいくつのクラブが当てはまるだろうか。答えは0である。
ブンデス最強のバイエルンを指揮した時点で、他のブンデスリーガのクラブを率いる事は無いだろう。ライバルクラブであるドルトムントにはプレッシングの下地があるが、やはり考えられない。過去にバルサを率いたリーガ・エスパニョーラも除外していいだろう。
そうなると残る主要リーグはプレミアかセリエAかフランスのリーグ1となる。プレミアであればシティが有力だが、前述したとおり成功を収めるのは難しい。セリエAはグアルディオラが求めるスピード感あるサッカーを展開できておらず、ここも当てはまらない。
唯一当てはまる可能性があるのはリーグ1のパリ・サンジェルマンだが、パリにはグアルディオラと犬猿の仲とも呼べるイブラヒモビッチも所属しているため、こちらも考えにくい。グアルディオラの求める選手を獲得するだけの資金力はあるのだが・・・。

グアルディオラに待つ茨の道とは、次に率いるクラブでは自身の哲学が通用しないという事だ。バルサではカンテラと呼ばれる下部組織があり、大人子供関係なくバルサイズムが流れている。つまりグアルディオラの哲学を最も体現しやすく、過去に下部組織を率いていたグアルディオラにとってはベストな環境だったといえる。
バイエルンには前述したように彼の求める下地があり、経営的な観点から見ても優良なクラブだった。つまりバルサとバイエルンはほとんど完成されたチームであり、自身の仕事に集中できる環境が整っていたといえる。
しかし次に率いるクラブでは、恐らく「悪い状況を好転させる」ミッションを任せられるはずなのだ。シティの場合は現監督のペジェグリーニの失態を拭うところから始まり、ミランは書くまでも無いだろう。こうした環境で仕事をした経験がグアルディオラには無く、未知なる領域へと足を踏み込むことになる。

モウリーニョやアンチェロッティといった名将は、いかなるクラブであろうと再生させてきた。時には失敗もあったが、キャリアを通して安定した仕事が出来ているといえる。グアルディオラが真の名将となるには、様々なクラブで結果を残さなければならない。
自身の哲学が実現できる環境でないと成功を収められないようでは、名将とは呼べない。グアルディオラの価値が認められるのは3年目のバイエルンか、あるいは次に率いるクラブにあり、どちらにしても来季は彼の監督キャリアを大きく動かすシーズンとなるのだ。