64〗Grigoris Lamprakis Stadium / アテネ


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1967年から’74年の軍事独裁政権下ではランブラキスについて話すことさえ禁じられていた。彼の科学論文を所持しただけでも投獄される徹底ぶり。反政府運動の象徴とされるZの使用も禁止されていた。
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語り継がれるZ 英雄は今も生きている

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ギリシャがそんな状況にありながら、フランスではコスタ·ガヴラス:CostaGavras【1933年2月12日生】がメガホンを取り脚本も共同ではあるが手掛けている。この巨匠は1951年にパリのソルボンヌ大学へと進学してから母国から距離を置いていた。音楽を担当したのも同胞のミキス·テオドラキス:Mikis Theodorakis【1925年7月29日生-2021年9月2日没】。彼もまた二次大戦中にレジスタンスとして投獄され、’67年にも軍事クーデターを批判すると二度目の逮捕。釈放後パリへ移りこの作品に携わる。’81年から国政に身を捧げ国務大臣も務めている。
渋い演技のイレーネ·パパス:Irene Papas【1929年9月3日生-2022年9月14日没】も明日が命日でこの世にはいない。この作品当時は四十歳。

‘74年に軍事政権が崩壊したことにより、スタジアムだけでなく通りや地名にランブラキスの名を目にする。映画『Z』は第四十二回アカデミー賞では外国語映画賞授賞、全米映画批評家協会は最優秀作品に選んでいる。カンヌでも高く評価されているが、軍事独裁政権の真っ只中で、ギリシャの才能と魂が放った鋭い輝きは永遠に消えることはないのだろう。〖第六十四話了〗
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⏹️写真/テキスト:横澤悦孝