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アジア最終予選を戦う18ヵ国の代表チーム。東南アジア諸国連合=ASEAN加盟国から唯一勝ち残ったのはインドネシアのみ。アジアの勢力図を見ると中東勢が幅を利かせているが差は縮まってはいる。
エリンダス·アレナを取材したのは2022年の3月。撮影した中で異色の経歴が上写真のディオン·ヨハン·コールズ:Dion Cools【1996年6月4日生】。母の母国マレーシアのサラワク州クチンで生まれる。ベルギー人の父ハンスは、当時コヴェントリーの黒人ストライカ-、ディオン·ダブリン:Dion Dublin【1969年4月22日生】の活躍から息子に同じ名前をつけた。ミドルネ-ムの
ヨハンは、空飛ぶオランダの偉人から借用。こちらは然程珍しくはないか。
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ユース時代にベルギーの複数クラブでプレーした後、2014年にOHルーヴェンでプロデビュー。その名前が国外でも知られるようになったのは15年夏にクラブ·ブルッヘに移籍後。7月UEFAチャンピオンズリーグ予選3回戦のパナシナイコスFC戦では1点のビハインドで、後半残り10分での途中出場。8月ホ-ムではスタメンフル出場。後半8分にコールズが頭で決めると4分後のフリ-キックもヴィクトル·ヴァスケス:Víctor Vázquez【1987年1月20日生】がネットを揺らす。実はこのカタランもバルサでの出場は1試合のみ。ベルギーでブレイクした選手。
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三点目をアシストしたコールズはレギュラ-の座に。ところがプレーオフの相手はまさかの英国の赤い悪魔。かつてディオン·ダブリンも所属したマンチェスターの壁は厚く本選進出はならず。
オランダが旧宗主国のインドネシアからは国籍を有する選手を欧州でも見掛ける。パイオニアは70年代にアヤックス、80年代にはスタンダ-ルリエ-ジュで活躍したシモン·タハマタ:Simon Tahamata【1956年5月26日生】。1945年の独立後に植民地期よりも経済が低迷するインドネシアからは多くの国民が独立前に移住していたから、タハマタファミリ-もその中に含まれるだろう。マルク系の血が流れるタハマタの見た目は何処からどう見ても100%東南アジア。それでも国籍はオランダとベルギーのみ。本年3月3日ユトレヒト戦の試合前には、長年ユースアカデミ-で育成に尽力した氏の退団セレモニーがヨハンクライフアレナにて催されている。
一方英国の影響が色濃い隣国マレ-シア系のフットボ-ラ-は見た記憶がない。コールズが同国初の欧州主要リ-グ経験者となるはず。ワ-ルド杯アジア予選からマレーシア代表に加わり現在はタイのクラブに所属している。
一年前にafpbbが報じた俄かに信じがたい二ュ-スを思い出した。スイス時計大手スウォッチ製のレインボーカラーデザイン商品をLGBT=性的少数者を支持するという理由で製造及び所持者への禁錮刑を定めた。東南アジア10ヵ国の中でムスリムが多いのはインドネシアとマレーシア。少々意外なところではブルネイも。
我々には理解し難いところではあるが、宗教絡みのお国の事情だから口出しするべきではない。スウォッチ社ニコラス·ハイエックジュニア:Nick Hayek Jjr.【1954年10月23日生】CEOか発した「虹色は平和と愛のメッセージ」のほうに深く賛同できる。ちなみに創業者=先代の両親はレバノン人とレバノン系米国人。
結局肌の色や目鼻立ちは、異なっても日本人の感覚や常識は東南アジアよりも欧州に近い。現在インドネシアから日本への移民労働者は急増しヒジャブを付けた女性を見掛ける機会も増えている昨今。異文化を理解する相互の歩み寄りが重要になるが口で言う程簡単ではない。
クアラルンプ-ルに行ったことはないが処罰の対象はあくまでレインボーカラーだから、ゆずの楽曲を聞いていてもお咎めはないだろう。[第170話了]