前回、前々回の記事で、サッカーには様々な魅力があることをお伝えしてきましたが、今回も中学生、高校生の時の僕を紐解きながら、また違った角度からサッカーに切り込んでいきたいと思います。
お前には無理だよ。
小学校を卒業する段階でいくつかの強豪ジュニアユースのセレクションを受けるも、結局は普通の公立中学校に進学し部活でサッカーをすることになった僕でしたが、1年生時の個人面談で担任の先生から強烈な一言を浴びせられることになります。
「中学生の段階でプロになれるかなれないかは決まってる。部活でやってる以上無理だよ」
さりげない会話の一端でしたし、今となっては具体的にどんな感じで言われたかも覚えていません。とにかく「お前にプロは無理だよ」というのをダイレクトに言われたことだけ覚えています。
冗談だったかもしれない。発破をかけられたのかもしれない。先生の真意は今となってはわからないことですが、一応将来の夢は「サッカー選手」とぼんやり考えていた僕。この出来事は何かに火がついた瞬間でした。
その後何度も「プロは諦めろ」「お前じゃサッカーでメシは食えない」と多数の人に言われることを、この12,3歳の僕は知らないわけですが、自分の夢を否定される最初の出来事であったのは間違いありません。
今、サッカーで生活できるのも辿ればここがターニングポイントで、この一件以降「プロサッカー選手になるには」というのを少しずつ意識しながら波瀾万丈の毎日を送ることになります。
目指すから楽しい。
僕の場合はこの一件以降、物足りなさからか部活を辞めて地元のジュニアユースチームに移籍。そして中学3年生の夏休みにはサッカー王国ブラジルへ渡り、短期間ながらサンパウロFCやコリンチャンスといった世界的名門の下部組織と戦うことを経験出来ました。
ブラジルでは技術的にも肉体的にも、何か僕に大きな変化を与えることはありませんでした。しかしブラジル人がどういうメンタリティでプロを目指しているのか?
王国のサッカーはどういう空気感なのか?
そんな本場の空気を少しでも感じられたことは大きな財産となっています。
その後、高校では社会人チームで午前に練習、学校は夕方から通うという邪道なスタイルでプロを目指し続け、高校3年生の時には勉強する時間をサッカーに使いたい!と、学校を辞め通信制の高校に編入。その冬にはベトナムリーグへトライに行くなど、ますますサッカーに熱中する時間を作っていくことになります。
とは言え、常にプロを志し続けるような、模範的で向上心のある高い意識で歩み続けてきたわけではありません。多くの同年代とは違う道を歩むことに対し、不安や恐怖しかありませんでしたし、自分を信じられない瞬間も何度でも襲ってきました。周りの評価や目も冷たく、僕は見世物を見るような感じて見られていたと思います。
しかし、何度「お前には無理」と言われ続けても、その都度その時その瞬間で必死に足掻いてもがき苦しみました。そうやって出来たのは、ひとつずつ壁を乗り越えたり、練習の成果が出て誰かに評価されたりと、時たま自分がプロに近づいている実感を得ることが楽しく刺激的だったから。これこそが「サッカーのプロを目指す」という魅力です。
何かを目指すということ。
サッカーに限らず、どんなスポーツやどんな業界でもその道を突き詰めていくのは困難な作業であると思います。
僕の場合は、多くの同年代とは少しズレた人生であったと思うので、経験や体験は多くの人の参考にはならないかもしれません。
ただ、胸を張って世界の人に言えるのは「何かを目指すのは魅力的なことだ」ということ。サッカーに限らずどんなものでも高みを目指すのは苦しいものですが、高いところを目指せば目指すほど、その道の魅力が深まっていくものです。
このコラムではサッカーの魅力を多角的に伝えていくということで連載させて頂いてますが、もしまだ心の中に燻るものがあるのならば、是非もう一度プロや頂点を目指して欲しい。どんな競技でもどんな業界でも構いません。キツイ日々が続くかもしれませんが、終わってみればそんな日々こそが最も自分が魅力的に輝いてる瞬間であると思いますから。