5月30日、クロップ体制最後の試合となるDFBポカール決勝、ドルトムントVSヴォルフスブルクは3−1でヴォルフスブルクが制した。1週間前におこなわれた国内リーグ最終節VSブレーメン戦で1ゴール2アシストと爆発していた香川は、この試合でも前半5分にオーバメヤンのゴールをアシスト。
いつものドルトムントらしく勢いで試合を持っていけるかと思ったのだが、今季を2位で終えたヴォルフスブルクは実に良いチームだった。まさに今季の両チームの出来栄えを反映するかのような試合展開に、ドルトムントは次第に押し込まれる事となった。
☆最後まで続いたプレスの空転
クロップの代名詞といえば「ゲーゲンプレッシング」だが、近年のドルトムントはあまり相手を追い回さなくなった。4−4−2、あるいは4−4−1−1の守備ブロックをハーフウェーラインから形成し、相手のパスコースを限定していくスタイルが通常だ。
時代の移り変わりと共にプレスを巧みにかわすシステムが次々に生まれ、ゲーゲンプレッシングをかわすチームが増えてきたのが原因だろう。高い位置で奪ってショートカウンターを発動する機会が減少した事もクロップのサッカーが上手くいかなくなった理由の1つだ。
では、現在のドルトムントはしっかりと守り切れているのだろうか。この試合に3失点したからではないが、答えはNOである。
この試合、ドルトムントは前線にオーバメヤンと香川を残して守備ブロックを組んでいた。ヴォルフスブルクのCBにはプレスをかけず、オーバメヤンと香川がパスコースを限定するところから守備がスタートする。
この守備法は一般的なもので、相手のCBにボールを保持させるやり方も珍しくない。しかしドルトムントは、いくつかのミスを犯している。
まず、相手のCBにプレスがかかっていないにも関わらずラインが高い。中盤の4枚は特に高く設定されていて、この守り方ではピンチに陥る危険性がある。フリーのCBから良質な縦パスが出た際にはピンチになりやすく、ドルトムントはそこのケアが甘い。
ギュンドアンとケールのダブルボランチも高い位置から相手を抑えようとしているが、その裏にCBから何度か縦パスを通されている。CBにプレスがかかっていないのであれば、あまり前から相手を深追いするのは危険だ。
そして、そんな状況下で厄介だったのがヴォルフスブルクの左サイドだ。左サイドに入るカリジューリとデ・ブルイネのコンビに手を焼き、何度かチャンスを作られている。トップ下に入るデ・ブルイネはたびたび左サイドに顔を出し、この動きをドルトムントが抑えきれない場面があった。
彼らに縦パスを通すのはCBのクルーゼ、あるいは左サイドバックのロドリゲスだが、特にプレスのかかっていないクルーゼから出る縦パスは何度もドルトムントの中盤に風穴を開けている。ドルトムントのプレスは前線と中盤で上手く噛み合わず、どこかフラフラとしたものとなってしまった。
デ・ブルイネが流れる動きにはボランチのギュンドアンが対応するのだが、ギュンドアンはあくまで前からプレスをハメ込もうとしているため、後ろからスペースを突きにくるデ・ブルイネを見失う場面が何度かあった。そこからカリジューリとのコンビで左サイドを崩され、ここを起点に2ゴールを奪われている。
カリジューリとデ・ブルイネの突破から生まれたFKをナウドが直接狙い、そのこぼれ球をグスタヴォに押し込まれた1点目と、左サイドを崩されてデ・ブルイネに強烈なミドルを叩き込まれた2点目だ。デ・ブルイネのシュートを防ぐのは難しかったかもしれないが、今季のヴォルフスブルクを引っ張ったキーマンを左サイドで自由にさせすぎた。
クロップにはケールとギュンドアンの位置を入れ替え、守備の上手いケールをデ・ブルイネにぶつける事も出来たはずだが、彼は攻撃を重視してポジションを入れ替える事はしなかった。決して受動的にならないのもクロップがドルトムントで貫いてきた姿勢だ。