ただ、財前監督の下でパスサッカーの土台を作り上げ、その弱点を突かれた守備の部分を強化するためにバルバリッチ氏を招聘。OB監督から外国籍監督に交代し、全くフラットな視点で守備の緻密さや選手起用を行ったこの1年間は決して無駄ではなく、確実に戦い方に”幅”が生まれた。
その上で2015年夏にU18チームから昇格した四方田修平監督がパズルを埋めるかのように適材適所な選手起用や戦術立案、戦略を選択。それが可能になったのは自らが下部組織で指導した教え子がトップチームに多く在籍し、その上で彼等は育成年代からプレーの幅を拡げていた事。ただし、それをどう活かすか?に伸び悩んでいた中、育成年代から彼等をよく知る四方田監督が明確な指針をチームと選手個々に示す事ができたのだ。
低予算ながら充実した戦力を整え、満を持してJ1へ!
これらの変化、継続、微修正、再構築を経て、改革4年目にして実りの時を迎えている札幌。
フロントも適材適所の補強に動き、日本代表経験の豊富なMF小野伸二やMF稲本潤一に続き、今季は2010年に名古屋グランパスのJ1リーグ初優勝に貢献し、ベストイレブンにも輝いたベテランの長身DF増川隆洋や、シーズン途中には守備のスペシャリストとして経験豊富なDF菊池直哉を獲得。
外国籍助っ人も単独で違いを作れるよりもチームの駒として機能する選手を揃え、現在のチームには質・量共に充実した戦力が低予算で揃っている。
選手同士の力量に差がないため、誰が試合に出場してもチーム力が落ちない。それを活用するのにプレーに幅が出たチームと、相手チームの分析に長けた四方田監督体制のスタッフは選手起用に柔軟性をもたらすことが可能となり、結果に徹した上で試合ごとに入念な準備によるベストな選択が出来るようになった。
また、出場機会の少なくなった選手には、野々村社長が自身の現役時代の経験も通した「現場からワンクッション離れた相談役」として選手やチームを支える事で一体感を維持。
無理にJ1へ昇格するよりも、遠回りしてでもクラブ全体が体力をつけることを選択して4年目。過去3年間は6位以内の昇格プレーオフ圏内にも入れなかった札幌が、J2を独走する現在の快進撃は決して偶然ではないはずだ。