オーストリアで世界的に有名な企業と聞かれて思い浮かぶのはビールメーカーを除けばニーダーエスターライヒ州オーバーヴァルタースドルフに本社屋を構えるマグナ·シュタイア。マグナ·インターナショナル(本社:カナダオンタリオ州)は自動車部品メーカーとして知られるが、その子会社。
自社ブランドを持たずメルツェデス,BMW,ジャガーなど大手メーカーの車両を受託生産する超絶の技術力。1999年から六年間メインスポンサーを務めた同社のロゴをFKアウストリア·ウィーンのユニフォームで目にした当時は、「これはモスバーガーのパクりか?」 と首を捻った。フランク·ストロナック:Frank Stronach【1932年9月6日生が創業したのは1957年。政治家、実業家、更にオーストリア·ブンデスリーガの会長も務めた超大物のエースタライヒャー。
奥川は後半からの出場。ポジションを右から左にかえ、低い位置に下がってボールに触れる回数は幾分増えたが正直この日は見せ場なし。
奥川の行く手を阻むのはフロリアン·ジッザム:Florian Sittsam【1994年12月14日生】。ドイチュランツベルクに生まれ近郊の大都市SKシュトゥルム·グラーツのアカデミーに小学生年代から十年在籍。この試合から20日後に行われるセルビアU21代表との試合に招集されている。
◆◆◆◆
この新しい街でスタジアム建設の工事が始まったのは1952年春。ストロナックは会長に就任すると改修工事に着手する。
ウィーナー·ノイシュタット訪問からおよそ一年半。節2017年8月6日のグラーツ戦でマッタースブルクの奥川は途中出場ながら記念すべき欧州一部初出場を飾る。この日29番をつけたヤパーナーの横で視覚えのある27番ジッザムの姿。ジッザムは、1994年12月生まれで奥川より二歳年長。一年前約500人の観客の前で対峙した二人が一部リーグの同僚にステップアップ。ところが現在はレギオナルリーガ·オスト(三部)のクレムセルSCでプレーしているから欧州は甘くない。
◆◆◆◆
当初は新しい動物保護施設が建設される予定だったA2:マッタースブルク高速道路のウィーナー·ノイシュタット南出口付近の土地に新スタジアムを建てる計画を発表。しかし11年2月会長職を辞任、マグナ社のスポンサード打ち切りで一転、翌12年予定していた土地購入はご破算に。ストロナック氏の興味は蹴球よりも政界ち向いてしまい’12年9月に新党を結成する。
そしてこのリーフェリング戦の二か月後、市は新たにニーダーエスターライヒ州の国営企業エコプラス社に186,000平方メートルの土地を売却することで合意、ビジネスパークの建設計画が発表された。
旧スタジアムの跡地に新スタジムア:アレーナが2019年9月28日にオープン。然し資金難で’19年5月にクラブのライセンスが剥奪され、初めてランデスリーガ(四部=アマチュア地域リーグ)への降格を余儀なくされる。
フットサルチームと合併してフォルトゥナ·ウィーナー·ノイシュタットの名前で新たな船出を切った今季。次回も引き続きこのスタジアムでの試合を回想する。[第126話了]
◆◆◆◆
🔳写真/テキスト:横澤悦孝 🔳モデル:花園ななせ