Foot ball Drunker〔172〕visiting『Stadion FK Viktoria Žižkov』プラハ / チェコ


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このシーズンはスラヴィアからボヘミアンズへのレンタルが終了すると出番を求めて二部のジジュコフへ。初戦こそ不発ながら3月9日ヴィートコヴィツェ戦では2G1Aの大活躍。18日(19節)のフラデツ·クラーロヴェー戦でもPKのリバウンドを決めて先制、クフタ加入後三連勝で好調を維持しオランダとの一戦に臨んだ。結果は6分に先制、9分後にも追加点とクラブでの勢いをそのまま代表へと持ち込んだ。


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前置きが長くなったがフリーデク·ミーステク戦。8分の先制点で試合の趨勢はホームチームに傾いたと思われたのだが・・・
1点リードの状況で先に動いたのは何故かジジュコフのベンチ。攻撃的ミッドフィルダーながら背番号9のマーセル·チェルマク:Marcel Cermak【1998年11月25日生】が一枚目のカード。三分後には前節ゴールを決めているクロアチア人ストライカー、10番のペタル·ムサ:Petar Musa【1998年3月4日生】を投入したからピッチ上にはスラヴィア·プラハから貸し出された’98年生まれトリオが揃い踏み。ところがこのセオリー度外視の采配は裏目に出る。同点に追いつかれた残り15分若さが暴発、ムサに赤紙“シャンクス”が出され一発退場の瞬間をSDカ-ドに収めたのがこちらの写真。直後にセットプレーからゴール前の空中戦を制したのは196㎝/90キロの巨体。ユニークな髪型の頭で決めたのは19番イズィー·タンドール:Ismar Tandir【1995年8月19日生】。結局この逆転弾の後スコアは動かず。


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試合後はご機嫌のタンドールはマアマドゥ·ドラメ:Mahamadou Dramé【1995年8月19日生】とのツーショット。髪型だけでなくそのキャリアがまたユニーク。出生地はドイツのフランクフルト。2010年にニューヨークに移住レッドブルズ·アカデミーで学び’14年にUSLチャンピオンシップのサクラメント·リパブリックでは初のトロフィーを米国で手にした
ブレイザブリク·コーパヴォグル(アイスランド)、ヤヴォル(セルビア)、FKスロボダ·トゥズラ(ボスニアヘルツェゴビナ)と渡り歩き、ボスニアヘルツェゴビナU19代表にも。フリーデク·ミーステクでのプレーが評価され18年7月からスロヴァキア一部のMFKルジョムベロクで21試合出場9G2Aを記録。UEFAヨーロッパリーグへと導きシルバーブーツも受賞した。2022年怪我を理由にインドのモハメダンSCコルカタで現役生活に別れを告げた。昨年米国ニュージャージー州ワシントンタウンにT3スポーツアカデミーを開校し個人とチームを指導している。


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今年二月からペタル·ムサも米国テキサス州ダラスに。べンフィカ在籍時の昨年3月UEFA欧州選手権予選ウェールズ戦でA代表デビューしている。ヤン·クフタは二足早く21年10月にFIFAワールド杯予選でA代表デビュー。こちらも対戦相手はウェールズ代表。ドイツでのEURO2024ポルトガル戦、11番を背負いスタメンでピッチに立つ映像を目にした瞬間胸に込み上げるものはあったが、その晩飲み過ぎて胸に吐き気を感じたわけではない。今季はデンマークのミッティランでスーペルリーガと新フォ-マットのUEFAヨーロッパリーグにエントリ-。
二人に比べると地味ではあるがチェルマクはチェコ一部のSKディナモ·チェスケー·ブジェヨヴィツェで主将章を巻いて奮闘。泥沼の開幕6連敗から8月末日のボヘミアンズ戦で遂に勝ち点1を獲得。中断期間を経て今週末は強豪スパルタ·プラハ戦に臨む。

紅白縦縞のユニフォ-ム姿で千人程度の観客の前で燻っていた若者が、六年後国家を代表するチ-ムのツ-トップでツェントせラールシュタディオンに立っているとは。
試合後近い将来A代表から声が掛かるとするならば元U21代表のタンドールかと思われた。ボスニアヘルツェゴビナ代表はEURO2016に続き二ヶ月後目前に迫ったワールド杯ロシア大会も予選敗退。強豪国とはお世辞にも言い難い。それに比べ同じ旧ユ-ゴ分裂国でもクロアチアは出世頭。EURO2016は四大会連続五回目の出場。チェコと引き分けスペインに勝利し首位でのグループステージ突破。覇者ポルトガルに1-0の敗戦でベスト16止まり。ワールド杯予選はプレーオフでギリシャに1勝1分だったから
ベスト16程度と思っていたら下馬評を覆して驚きの準優勝。
それにしても僅か13分でピッチから消えた愚か者が五年後に紅白市松模様のユニフォ-ム姿を、誰が想像できただろうか。

プラハ城内の聖ヴァーツラフ大聖堂近くに居酒屋ヴィカールカは実在するらしい。月世界旅行の第一部に続き第二部では、15世紀のプラハへとタイムスリップしてしまったブロウチェク氏。
クフタ、ムサ、チェルマクの”期待の新鋭”の活躍を撮影し才能を活字で絶賛したかったのだがこの日は完全に肩透かし。写真を見てもプレ-を思い出せない。
 端正な顔立ちで笑顔が爽やかなチェルマクも終始上写真の表情。もし酒場から六年前に戻れるのであれば、もう一度ジジュコフで彼らのプレ-を目に焼きつけておくのだが。[第172話了]