Foot ball Drunker〔10〕visiting 『 Stadion Berg & Bos』アペルドールン / オランダ


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街中でなければ屋外彫刻は、自然と対峙することで互いの良さを引き立たせる。自然との調和を考えると駄作しかできない。人類は自然との共存が求められるが、アート作品には自然に飲み込まれない主張が求められる。これはニューヨークのキングストーン、LAのゲッティ等、観てまわった筆者の持論なので全然否定していただいて構わない。

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パリで感じた違和感。フットボールとハンドボールは何かが違う

昨年6月11日、知人から譲り受けたフランス杯決勝のチケット。優勝は地元PSG、ファイナルで涙を飲んだのはHBCナント。
フランス杯でもフットボールではなく、この日が初めてとなるハンドボール観戦。屋内の閉塞感は仕方ないとして、何か物足りなく感じる。その違和感の正体に気づいたのは試合開始から10分を過ぎた頃。


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イネ科の植物に属する芝。光合成エネルギーを自ら増やそうとする《自然の強い生命力》は、刈り取り作業により密度を濃くする。結果見事に仕上がったのが緑の絨毯。
道具を使わず激しいフィジカルコンタクトを強いられる競技。落下・衝突時にショックをやわらげる芝生が怪我防止の役割を担う。


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上写真はハンガリーの女流彫刻家 故マルタ・パン:Marta Pan【1923年6月12日-2008年10月12日】作品。奥には気持ち良さそうに昼寝する姿も。
アスファルトやコンクリート等とは比べものにならないほど涼しく気温の上昇をやわらげる効果も芝生の長所。

最後は鮮やかな芝生と真っ赤なマーク・ディ・スヴェロ:Mark di Suvero【1933年9月18日生】の彫刻作品とオランダ美女のカバー写真を引きで撮ったヴァージョン。『緑色』に見える波長は、可視光線の中間地点にあるため刺激も軽く眼球への負担も少ない。人口のスタンドに囲まれながら緑の芝生は、観客と競技者双方を優しさで包んでくれる。
スタジアムとは、芸術的な建築物に人=プレーヤーと観客、そして緑のピッチがコラボすることで新たな感動を創り出す。ゆえに人々を魅了して止まないことに、あらためて気づかされる。[第10話了]


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■写真/テキスト:横澤悦孝