86〗 Stadio Comunale Luigi Ferraris / ジェノヴァ

十六世紀から十八世紀前半まで、分裂した各国内での内乱が絶えないイタリアはフランスとスペインの侵入を許し、支配される時期が長く続いた。ダ=ヴィンチを保護したことで知られるフランス王のフランソワ一世:François I【1494年9月12日生-1547年3月31日没】。ジェノヴァはフランス領であった為、戦いに加わったのが傭兵指揮官ドリア。1528年8月、一転して神聖ローマ皇帝カール五世と同盟を結びジェノヴァ共和国を独立へと導いた。セリエA復帰を託されたのはかつてイタリア代表のレジェンド。現代のアンドレアは重責を果たせず灯台の街で救世主にはなれなかった。引き継いだのはアンジェロ·グレグッチ:Angelo Gregucci【1964年6月10日生】。2000年にフィオレンティーナでマンチーニのアシスタントコーチとして指導者の道を歩み始め、マンチェスター·シティをトップレベルに引き上げた時の肩書きはテクニカルアシスタント。ディフェンスのスペシャリストとしてデイビッド·プラット:David Platt【1966年6月10日生】やロンバルドの元サンプドリア組と並んでマンチーニを支えた。サンクトペテルブルクでも苦楽を共にし’18年のマンチ-二アズ-リでも入閣している。しかし自身がトップの立場となると2005-06シーズンにレッチェを五週間で解任されて以降、セリエAのクラブからのオファ-もなければ実績もない。
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さて、現在はセリエBで十試合を終えて最下位。根が生えたと思っていたそのセリエBからですら、降格も有り得る尻に火がついた状況。
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警官に負傷者続出 狂乱のマラッシでは何が起きたのか

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昨年九月にコッパイタリアでジェノアとのデルビ-が実現。PK戦まで縺れた試合で暴動が起こり、深夜までの数時間マラッシ地区は恐怖に包まれた。サポ-タ-衝突による負傷者四十八名のほとんどは警察官という異常事態。全治七日から一ヶ月以上の診断結果。手や肋骨数本の骨折のため手術や、頭部の損傷や裂傷の縫合がされた。多くの警官が救急医療隊によってその場で治療を受けた後治安維持を確認してから病院へと搬送されている。当時の映像などは残されていなくても、この内容だけで鉄パイプや刃物で武装していたことは容易に想像が着く。イタリアお馴染みの長めのランチタイムが終わるとフェラーリス周辺で最初の衝突が起こり、警察官三名が負傷したのは序の口。ジェノア側が昨年五月にサンプドリアのサポーター本部から盗んだ旗を掲げたから試合終了後には激しい暴動へとエスカレートしたのも頷ける。ゴミ箱をひっくり返したり、小規模ながら放火も発生したから、住民もパニック状態に。少なくとも五百人が衝突する大惨事となり暴徒を鎮圧するため四百人以上の機動隊員が出動し徒放水砲まで噴射している。ジェノアサポーターと友好関係にあるマルセイユのウルトラスが介入したらしい。状況を監視するためにフィレンツェから到着した州警察のヘリコプターが上空から午前二時近くまでパトロールを続けた。情熱と狂気が絡み合うのがラテン系スタジアムのダ-ビ-。サンプドリアのセリエA復帰を一番心待ちにしているのは、実は憎悪で凝り固まったジェノアサポ-タ-なのかもしれない。〖第八十五話了〗

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写真/テキスト:横澤悦孝 ◻️モデル:JENNA 林恵梛