86〗 Stadio Comunale Luigi Ferraris / ジェノヴァ

一方最後にサンプドリアの試合を見たのは2016年の開幕戦。新監督のマルコ·ジャンパウロ:Marco Giampaolo【1967年8月2日生】率いるチームが乗り込んだ敵地は、ジェノヴァから215キロほど東に離れたトスカーナ州のエンポリ。前年マウリツィオ·サッリ:Maurizio Sarri【1959年1月10日】自ら後任に推薦されエンポリを指揮したジャンパウロ。いきなり古巣との対戦も、目まぐるしく監督が入れ替わるカルチョの世界では、別段珍しくもないはなし。
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欧州各国から集まり 港町で磨かれる才能

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『鉄のトライアングル』を形成した伊北部三大都市。ミラノは、洗練された大都市ではあるがドゥオーモを観てしまうと退屈。トリノもモーレ·アントネリアーナからの景色を堪能すれば満足。それに比べて何時間いても飽きないのがジェノヴァ。この日パトリック·シック:Patrik Schick【1996年1月24日生】の国外デビュー戦は途中出場の為、二十九分間のプレ-。その印象はデカイのにボ-ルの捌きが柔らかい。独特のリズムがあって彼にボ-ルが入るたびシャッタ-をきった。三ヶ月前にA代表初ゴールも記録済み。百塔の街で生まれそれまでのキャリアをチェコの首都で築いてきた。世界で最も美しいとされる黄金の街と比べても、自然景観と建築物が織り成すイタリア最大の港町の魅力は、勝るとも劣らないからシックも気に入ったのではなかろうか。しかしプレ-したのは僅かに一年。その才能に目を付けたASロ-マへと貸し出されてしまうのだが戦術とポジションのミスマッチ。190センチを超える長身からか、大型ストライカ-またはスビ-ドも乏しいのにウインガ-として組み込まれた。ドリブルも単独で突破できるほど巧みではない。しかしこの若者、ブルチェルキアーティで見た限りフットボ-ルIQは高いからセカンドトップに一歩引いて、我の強いストライカ-タイプを活かすプレ-には長けている。料理に例えるならプリモ·ピアット、同僚のセコンド·ピアット的なルイス·ムリエル:Luis Muriel 【1991年4月16日生】は、やりやすかったはず。このコロンビア人の名前はこうして書いていてもバタ-とレモンの香りが口の中でよみがえる。最もドイツで揉まれまくったシックは今や本当に万能ストライカ-に変身してしまったのだが。
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ジャンパウロ体制の集大成となら三年目。印象に残っているのがサッスオ-ロからレンタルされたアンドレ·グレゴワール·デフレル:André Grégoire Defrel【1991年6月17日生】。パリ近郊のムードン出身ながらパルマユ-ス加入以降イタリア国内でプレ-。前年(17-18)はASロ-マに貸し出されたものの負傷に悩まされUEFAチャンピオンズリ-グを含めても二十試合出場して一得点のみ。唯一のゴ-ルはベネヴェント戦のアディショナルタイムのPK。この時デフレルの横にはピッチに入った直後のシック。彼もハムストリングの負傷で出遅れ不本意な一年を過ごしていた。それが港町でブレイクする。18-19シ-ズンは一桁順位でのフィニッシュ。デフレルも12G2A(カップ戦含)の数字は飛び抜けてはいないが得点を決めた十試合の結果は八勝一敗一分。唯一の黒星が前年貸し出されていたロ-マ戦だった。
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あの日あの時は二節で二得点のナポリ戦と迷ったが■2019年3月31日セリエA第29節UCサンプドリア対ACミラン。ロッソネロとの試合では開始僅か40秒。ミランの守護神ジャンルイジ·ドンナルンマ:Gianluigi Donnarumma【1999年2月25日生】は、味方からのバックパスの処理を誤り、有り得ない痛恨のパスミス。見逃すはずもなくデフレルがダイレクトで突き刺すとその後八十九分間スコアが動かずサンプドリアが貴重な勝ち点を獲得した。
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レジェンド母国に帰還も逆境は続く

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