そんなエイバルが創設75周年の今季、クラブ史上初の1部リーグへ昇格。昨季は2部リーグ優勝を果たしたものの、リーグ戦全42試合で49得点29失点。記録からも分かる通り、カウンターサッカーを展開しています。「アンチ・フットボール」という言葉が頻繁に聞かれるスペインでは珍しく、自分達より格下や同格のチームと対戦する際にカウンター1本というチームはおそらく1部リーグではレバンテのみ。
そのサッカーでエイバルは2年連続の昇格により3部リーグから一気に1部リーグへ昇格してきました。チームを預かるのはガイスカ・ガリターノ監督。現役時代はクラブでキャプテンも務めた人物で、2012年にトップチームの監督に就任する前はBチームの監督として指導していた39歳の新鋭監督です。
今季も2年連続昇格の勢いそのままに、スペインでは珍しいカウンターサッカーが1部リーグでも痛快にハマって前半戦だけで勝点27を獲得して8位で折り返すサプライズを演じました。しかし、冬の移籍市場で前半戦の躍進を支えた守備の要であるCBラウル・アルベントゥサをイングランド2部リーグのダービー・カウンティへ引き抜かれてしまってから後半戦は8連敗でスタート。それも移籍が決まっても移籍金がクラブの口座へ入金が確認されるまでは試合で使うほどの選手がイングランドの2部にシーズン途中で引き抜かれるとは・・・。
結局、8連敗スタートで始まった後半戦は相手からの対策も進み、以降も全く成績が振るわずに最終節まで1勝2分15敗で進みました。上記したように、最終節は最下位独走のコルドバに勝利したものの、やはり時すでに遅く、2部降格に至りました。
前半戦8位 | 勝点27 | 7勝6分6敗 | 24得点25失点 |
後半戦19位 | 勝点8 | 2勝2分15敗 | 10得点30失点 |
年間18位 | 勝点35 | 9勝8分21敗 | 34得点55失点 |
スペインで唯一の借金なしクラブ 「谷底の町」の美しき奇跡の1年を記憶
とはいえ、これだけ貧しさを列記してきたものの、彼等はスペインの1部・2部リーグ合わせて唯一の借金がないクラブ。スペインのサッカークラブは借金の返済を将来に送って来たツケが回り、クラブの破産や倒産が増えており、財産管理下に置かれるクラブの数も相当数あります。
そんな中で、エイバルは借金なしを貫くために上記のような節約の徹底がなされており、役員のお偉いさんは無給でクラブを運営しています。降格しても経営危機には全く直面しない健全経営で運営されており、その格となる「人を大事にする」ため、現在の1部リーグのピッチに2年前の3部リーグ時代の主力が同時に9人立つ事も珍しくないようです。
15年ほど前から「国民総幸福量」という言葉でブータンが有名になりましたが、エイバルサポーターの「住民総幸福量」は当時のブータンに負けないレベルにあるのかもしれません。
「谷底の町」と言われるエイバルは、町の中にエスカレーターが至る所に設置されており、筆者の友人であるスペイン人女性も現地観戦したのですが、「スタジアムに行くまでにエスカレーターと階段でかなり登らないといけない」らしいです。(写真の通り)