ユナイテッドも破ってリーグ優勝目前 シーズン2冠確実のチェルシー
イングランド・プレミアリーグは全38節中の33節を終了。欧州カップ戦やFAカップの影響で各クラブに未消化試合の差があるものの、首位・チェルシーと2位・アーセナルは同32試合を消化で勝点差は10となり、共に残り6試合という状況で、チェルシーのリーグ優勝は確実になりました。
先週末、リーグ6連勝中の3位・マンチェスター・ユナイテッドをホームである西ロンドンのスタンフォード・ブリッジで行われたビッグマッチに現実的な戦いぶりで1-0と制したチェルシーはリーグカップとのシーズン2冠となります。ユナイテッドが、直近の試合でトッテナム・ホットスパー、リヴァプール、マンチェスター・シティを破っていただけに、「国内に敵なし」と言える無敵ぶりとなっていると言えます。
そのユナイテッドを破った試合を含めて、チェルシーはリーグ戦ここ12戦無敗(9勝3分)。その間には、リーグカップ決勝で現在プレミアリーグ得点ランクトップタイの20ゴールを記録するイングランド代表FWハリー・ケーン(21歳、イングランド人の得点王となれば15年ぶりの快挙。)を擁するトッテナムを下し、昨季からチェルシーに6年ぶりに復帰したジョゼ・モウリーニョ監督の復帰後初タイトルを獲得しています。
しかし、欧州チャンピオンズリーグではラウンド16で2試合ともドローの合計3-3ながら、アウェイゴール差でフランス王者のパリ・サン・ジェルマン相手に早期敗退。それも延長戦にまでもつれ込んだ第2戦は、相手のエースFWズラタン・イブラヒモヴィッチが前半早々に退場し、延長戦と合わせて90分近くを数的有利で戦った上での敗退となりました。
的確な補強で世代交代も大成功も 第2期モウリーニョ・チェルシーはコレで良いのか?
プレミアリーグでは序盤戦から首位を独走しているものの、2015年初冬のトッテナム戦で5-3の衝撃的な敗戦を辺りから徐々に疲労の色が濃くなり、勝ちきれない部分がCLでの早期敗退を招いたものと思われます。もちろん、プレミアリーグがクリスマスやお正月も休みなくリーグ戦が行われるために、他国リーグのようなウインターブレイクが全くないどころか、最も忙しい時期になるのもその理由だとは思います。
しかし、日程は毎年恒例でシーズン前からも分かっていること。にも関わらず、チェルシーはリーグ戦の出場時間が1000分間を越える選手が11人しかいません。GKチュボ・クルトワ、DFブラニスラフ・イヴァノヴィッチ、ガリー・ケーヒル、ジョン・テリー、セサル・アスピリクエタ、MFネマニャ・マティッチ、セスク・ファブレガス、オスカル、ウィリアン、エデン・アザール、FWジエゴ・コスタのみです。つまり“超”がつく固定メンバーでシーズンを回しています。負傷者があまり出なかったり、長期離脱を防ぐメディカルの充実がリーグ優勝の肝となっているのかもしれません。
結局、リーグでは得点があまり奪えない状態でも、そのトッテナム戦後の11戦を無敗で乗り切って首位を独走し、シーズン2冠を確実にしているのですから・・・素晴らしい成績です。(いや、ベスト16でチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグに参加したイングランドのクラブが全て敗退したリーグ全体が危機的なのですが・・・どこかの国に似ている気がします・・)
もちろん、ジョゼ・モウリーニョ監督下のチェルシーでは初の無冠に終わった昨季を経ての補強は的確で、長年に渡ってチームの顔として攻守の要となり、MFながら10年連続でリーグ戦2桁ゴールを記録したフランク・ランパードが退団すると、「中盤で展開力のあるMF」としてバルセロナからスペイン代表MFセスク・ファブレガスを獲得。アーセナルファンである僕からすれば辛いモノでもありますが、同じロンドンの北部を拠点にするアーセナルで17歳の頃から司令塔として活躍していたセスクは、リーグのアシスト王の活躍で自身初のプレミアリーグ優勝へ向けてチームを引っ張っています。また、昨季は2桁得点が1人もいなかったFW陣(フェルナンド・トーレス、サミュエル・エトー、デンバ・バ)が軒並み退団し、「20ゴールが計算できるFW」として、アトレティコ・マドリーからブラジル出身のスペイン代表FWジエゴ・コスタを獲得。彼は軽傷で欠場する期間もあるもの、現在リーグ19ゴールで得点ランク3位。昨季のFW陣では軸がいませんでしたが、完全に大黒柱として首位独走の原動力となっています。
ただし、そこにも偏重ぶりはあり、昨季のCLでベスト4敗退をした相手でもある、その“アトレティ”からエースFWのジエゴ・コスタの他に、ベルギー代表GKクルトワや、ブラジル代表の左SBフィリペ・ルイスも獲得。クルトワは3年前からチェルシーが獲得しており、レンタル移籍でアトレティに在籍していたため、“復帰”ではありますが、チェルシーではこれまでプレー経験がないどころか、2011年夏にベルギーリーグのヘンクから獲得後に即レンタル修行に出されています。日本でも日本代表FW武藤嘉紀へのオファーから話題に上がっているレンタル出しっぱなし状態の選手が、昨季はスペインリーグ優勝とCL準優勝という派遣元・チェルシーを越える成果を上げての復帰は確かに凄いですが、日本で揶揄されるような“サンフレッズ浦島”のような造語を作られても不思議はない補強策です。
しかし、イングランド代表でも主力を張ったMFランパードや左SBアシュリー・コールが退団し、32歳となってベテランとなったチェコ代表GKぺトル・ツェフも控えとなり、セスクやクルトワという彼らよりも2世代以上も若い新加入選手がセンターラインの主力として定着。以前から当コラムでも「向こう10年はスペイン代表の右SBで定位置を担うはず」と言っていたアスピリクエタも昨季中盤戦から僕の宣言通りの右サイドではありませんでしたが左SBで定位置を確保している事で、完全に世代交代にも成功した中でのリーグ戦とリーグカップの2冠は大きな称賛に値します。
ただし、「優勝の要因は?」「チームのストロングポイントは?」という質問があれば、サッカーの内容ではなく、モウリーニョ監督の手腕やマネジメント、または上記のような補強の上手さしか上がって来ないのが・・・味気ない。そして、そういう部分が残留争いの相手でも終盤の得点で1-0で勝ちきるだけという最近のチェルシーの戦いぶりで、それはユナイテッドを迎えたビッグマッチでも戦略的に露呈?したものだと思います。
補強の大成功とドライ過ぎる戦略、4バックをぺナルティエリアの枠内に集めて、相手がクロスを上げる選手にはサイドMFが担当するために6バック化する戦術、「勝っちゃった」ような試合と発言、青色のユニフォーム、国内限定の強さ、どこかの国のどこかのクラブに酷似している気がします。そのクラブの監督はモウリーニョをリスペクトしているようですし・・・・。
第2期・モウリーニョ・チェルシーも、そのどこかの国の青いチームも、それで良いのでしょうか?共にリーグ自体や代表チームも低迷著しいのも、リーグを代表するクラブのやり方にも問題がある気がしますが・・・・。