W杯制覇に続くEURO制覇へ挑むドイツの新鋭MFジョシュア・キミッヒに注目せよ!
6月10日から開催されているEURO2016フランス大会も本稿執筆時点でベスト8が全て出揃った。全51試合中の44試合を消化し、残すのは準々決勝・準決勝・決勝の7試合のみだ。
変化の過程に世界王者らしからぬ姿~主将・ラームの穴は深刻
2年前のブラジルW杯を制した現・世界王者のドイツも、順当にベスト8まで駒を進めて来た。
ただ、W杯を制して以降の世界王者には、大きな変化があった。主将のDFフィリップ・ラーム、長身センターバックのペア・メルテザッカー、W杯通算得点記録保持者のFWミロスラフ・クローゼという、チームの屋台骨を担っていたベテラン選手がドイツ代表を引退したのだ。
その影響はEURO予選でも露呈していた。首位通過したとはいえ、ドイツはポーランドとアイルランドに敗れていたのだ。その戦いぶりに世界王者の影はなかった。
特に「世界最高のサイドバック」ラームが抜けた右サイドバックには、本来はCBのベネディクト・ヘーベデスやボランチが本職のセバスティアン・ルディ、エムレ・チャンなどが試されて来たものの、本大会へ向けてもその穴を埋めるような人材を見つけられずにいた。
そんな中、本大会のグループステージ最終戦となった第3戦の北アイルランド戦で代表初先発となった21歳、ジョシュア・キミッヒがどうやらこのポジションに定着しそうだ。
1年前まではトップリーグ経験のない守備的MF
約1年前、ドイツのブンデスリーガを3連覇中のバイエルン・ミュンヘンに加入したキミッヒは、ドイツサッカー界の「育成の名門」であるシュツットガルトの下部組織出身の守備的MFだった。
ただ、プロ契約後はすぐに当時の3部リーグに所属していたRBライプツィヒへレンタル移籍をし、2年間で計53試合のリーグ戦に出場。確実に実戦感覚を養ったとはいえ、トップリーグ経験のない選手は「逸材」とは言えない段階にいた。
そんなキミッヒは2014年のU19欧州選手権でドイツを優勝に導いたのだが、その大会を通してキミッヒに注視していたのがバイエルンの指揮官=ジョゼップ・グアルディオラ監督(来季からマンチェスター・シティ監督)だった。大会後、直接ラブコールを送り、キミッヒは20歳にして世界屈指のメガクラブの一員となった。
176cm70kgと決して体格には恵まれてはいないが、敏感な危機察知能力と驚異的なボール奪取力に優れている。しかも、彼には長短のパスを駆使した展開力が備わっているのだ。