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Jリーグと日本人FW輩出について考える~川崎にセレッソ出身FWが集まる必然

Jリーグで最も華麗なサッカーを披露する川崎 独特の視点から積み上げられるパスサッカーで魅了

 風間八宏監督が就任してからの川崎フロンターレに関して、“現在のJリーグで最も華麗なサッカー”をしている、という声は共通しているように思います。

自分の応援するチームが1番なのは当然として、“2番目に好きなチーム”などと言えるかもしれません。ピッチ外では毎試合のホームゲームでは相手サポーターをも魅了できるイベントを仕掛けてくる天野春果氏を筆頭とするプロモーション営業により、等々力競技場には、「行けばお得な気分になる」雰囲気作りも素晴らしいモノがあります。

 “湘南スタイル”を掲げ、「両ゴール前のプレーを多くしてシュートシーンが多いような試合」を目的にする湘南ベルマーレや、歴代日本代表の守備の要となるセンターバックを輩出し続ける名門・横浜Fマリノス、Jリーグに参入してきた町田ゼルビアやSC相模原、多摩川付近のFC東京も含めて神奈川県界隈にはJクラブが密集しています。それぞれが独特のキャラクターを持つ企業努力よって日本的な盛り上げ方をリードしている地域と言えるかもしれません。

 そんな中で、湘南ベルマーレについては以前に取り上げましたので、その“湘南スタイル”以上にピッチ内で観ている人たちを魅了するサッカーを見せる川崎フロンターレに今回はスポットを充てます。

 風間監督がよく言うのは

「ウチは組織で戦っていない。」
「戦術練習はない。」
「個人の技術向上がそのままチームの成長につながる」

という類の言葉。表現や言葉が違っても、これらのニュアンスで語られた風間監督の言葉を目にする、耳にしたことがあるサッカーファンは多いと思います。「受けて、出して、動き出す」は口癖のようになっていて空耳でも聞こえるかもしれないぐらいです。

「止めて蹴る技術」を駆使して風間監督のサッカーの軸となるのは主将であり、司令塔となるMF中村憲剛とFW大久保嘉人という日本代表経験の豊富な2人であるのは間違いありません。大黒柱のこの2人に加えて、よく「パスにメッセージがある」と表現されますが、「動きにメッセージがある」と言えるFW小林悠、「出して受ける」という風間監督流の個人戦術を安定して披露できるようになったMF大島僚太、「出して、動きだす」の局面で、今までにない稀有なアクセントをつけるMF森谷賢太郎という日本人選手が試合の主導権を握る独特のパスサッカーは他クラブのサポーターをも魅了しています。特に昨年の秋頃までのサッカーは、一昨年のリーグ3位に入ったシーズンよりも観ていて楽しく、しかも強かったと言えます。当コラム内でも上記5選手に唯一単独のドリブル突破で局面打開を期待されているFWレナトを含めた6人を”ファンタスティック6″と表現したのも、自然なサッカーファンの心だと思います。

3年連続でセレッソ出身FWが加入する必然 DFには筑波出身、MFはクラブ伝統ルートで

 そんな川崎フロンターレに風間監督が2012年5月に就任してから今季が4シーズン目。シーズンインから指揮をとるのは3シーズン目ですが、補強に置いては面白い偶然が継続しています。2013年の大久保嘉人、2014年の森島康仁、2015年の杉本健勇,、と3年連続でセレッソ大阪出身のFWが加入しているのです。セレッソの下部組織出身は杉本のみですが、3選手とも初めてプロ契約を交わしたのはセレッソ。高校卒業に下部年代の代表で活躍するなど、彼等は紛れもなくセレッソで育てられたFWです。もともと森島寛晃、西澤明訓の“凸凹コンビ”の時代からセレッソは日本人の点取り屋を輩出してきたJリーグでは稀有なクラブです。中山雅史、高原直泰、前田遼一という3人のJリーグ得点王&日本代表の主軸を担ったストライカーを輩出したジュビロ磐田まではいかないにしても、おそらく日本人FWの輩出については、この2クラブと鹿島アントラーズがJリーグでトップ3と言えるのではないでしょうか?

 川崎は関塚隆監督が指揮した2004年から2010年までの7シーズンはJ1とJ2両方で得点王になったブラジル人FWジュニーニョが絶対的なエースFWでしたが、彼以外にもレナチーニョやチョン・テセ、マルクスといった外国籍FWにフィニッシュの局面は依存していました。我那覇和樹と黒津勝といった日本人FWもいましたが、チームのスタイルとして外国籍選手の突破力と決定力を活かすところからチーム作りが進んでいたので、個人技が活かしやすいカウンター主体のチーム戦術では彼等は軸ではありませんでした。

 そんな外国籍選手、特にブラジルからの補強が、ブラジル国内の好景気によりJリーグよりも国内リーグの方が高い年棒をもらえるようになった近年は川崎もブラジル人ストライカーの獲得に苦戦。現在所属するレナトはジュニーニョ後の10番という偉大な背番号を背負っていますが、点取り屋ではありません。

 そこで川崎はチームとしてもクラブとしても、外国籍FWに頼るサッカーからの発展と、ブラジル人FW補強苦戦、風間監督の招聘、全てをターニングポイントとして日本人の特徴と言える技術力をさらに引き出すための戦いにシフトしていったのかもしれません。そうして優秀な日本人FWの獲得となると、セレッソ出身のFWがクローズアップされるのでしょう。ジュビロやアントラーズのFWは得点王獲得など代表クラスの実績を持つ高額選手なので、それならばブラジル人FWの獲得ルートのままでいいわけですから。

 面白いのはDF陣には山越享太郎、谷口彰悟、車屋紳太郎と風間監督が川崎の監督になる前に指導していた筑波大学出身選手の獲得が続いている事。反面、MFの大島や森谷は憲剛から続くクラブ独自のMF発掘眼があるようです。

 究極のパスサッカーを目指して日々個人の成長を追求する風間監督主導の選手獲得は、DF陣で行われ、FWはセレッソ出身者。ピッチ上で展開されるパスサッカーに拘りはもちろん拝見されますが、選手獲得にも確実に“色”は見えますね。