へレレドームにあの男が帰ってきた
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昨日エールステ·ディヴィジ(オランダ二部)は第十節を開催。2006年から18年までの十二年間、ベルギ-のビ-ル醸造メ-カ-が冠スポンサーだった頃の名称はジュピラーリーグ。1993年から自国の一部リーグの名前として定着していたから、こちらは“Dutch jupiler league”などとメディアは表記していたのだが、紛らわしいからか2008年、本家ベルギ-は《プロ》の二文字を付け加えて差別化を図る。かといってオランダ二部がアマチュアのわけでもない。
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首位をキ-プするのはフィテッセを4-2のスコアで下したデンボシュ。2018年にFCデンボッシュの株式取得に乗り出したのは24歳のカキ·ジョルダニア:Kakhi Jordania【1994年9月17日生】。KNVB=オランダフットボール協会のプロライセンス委員会が詐欺/資金洗浄の疑いがあるとしてこの買収を認めず、同氏とクラブ側で訴訟合戦が法廷で繰り広げられた。
そして彼の父親はマルタのクラブ、バレッタFCのオーナー兼会長職にあるメラブ·ジョルダニア:Merab Jordania【1965年9月3日生】。かつてのフィテッセ·オーナーである。第177話UEFA欧州選手権:ユーロ2000でも使用されたヘルレドーム。
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90年代順調と思われたクラブ運営だったがスタジアム建設費に財政が圧迫され成績も下降線をたどるばかり。そこへグルジア(現ジョ-ジア)から救世主が現れ、クラブを買収したのは2010年。あれから紆余曲折を経て、今春財務規則違反による勝ち点剥奪による二部降格。ほんの三年前のUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ予選(プレ-オフ)では隣国のトップクラブであるアンデルレヒトを退けたクラブがまさかの急降下とは、これに驚かずして何に驚く。
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今季エールステ·ディヴィジで最下位で踠くクラブを指揮するのはかつてアンデルレヒトを指揮した事もあるヨン·ファンデン·デン·ブロム。危急存亡の秋となればこの人しかいない。二十四年振りとなる欧州枠をADOデンハ-グにもたらしたのは2011年。移籍金の不足額10万ユーロを自腹で払ってまでもアーネムへと戻った。1986年のデビューから2003年に引退するまでの現役生活。その大半=12年間をイエロー&ブラックに捧げた彼はア-ネムのヒーローだった。
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フィテッセに対してKNVBからプロライセンスが戻され アマチュア降格もしくは消滅の危機から脱したのが今季開幕の僅か一週間前。前月就任したばかりの新監督ブロムは手駒こそ辛うじて揃えたものの何れも経験不足は否めない。9節FCフォレンダム戦のスタメン平均年齢はクラブ歴代最年少記録を更新。22歳にも満たない。ちなみにこれまでの記録はブロムが指揮を執った2011年9月のロ-ダ戦。この試合には当時23歳の安田理大:Michihiro Yasuda【1987年12月20日生】もスタメンに名を連ねている。
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フォレンダム戦で出場した二人の外国人は共にギリシャ国籍。パネトリコスFCとの契約が満了した守備的ミッドフィルダーのアンゲロス·ツィンガラス【1999年7月24日生】。もう一人はこの日が初スタメンとなる元ギリシャU21代表のウインガ-、テオドシス·マチェラス:Theodosis Macheras【2000年5月9日生】はAEKアテネからの期限付き移籍。風光明媚で名高いレロス島の出身。300キロ以上離れたアテネからだとフェリ-を利用すると片道11時間はかかかる。東京都内から八丈島よりも遠い。トルコ随一のリゾ-ト都市ボドルムからならばコス島乗り換えで三時間の距離に位置するのがレロス島。
18年にAEKアテネユ-スに加わり20年3月にス-パ-リ-グ=トップデビュ-すると同年9月から11月に行われたUEFA U-21欧州選手権予選に出場。そして11月22日9節のAEラリッサ戦では、スタメン出場し先制点を決め勝利に貢献。念願のプロ初得点を記録している。
このシ-ズンは感染症の影響で10月に無観客で行われたUEFAヨーロッパリーグ予選プレーオフ。ドイツのVfLヴォルフスブルクを下した試合を含め国際試合5試合を経験をしてはいるが、実はクラブでのUEFAコンペティションデビュ-は遡ること二年。