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さてポーランド前の検問で待たされてる間、Aさんは携帯の翻訳サイトに文字を入力し始めた。мясаの四文字が和訳されると「肉」?するとカバンからアルミホイールに包まれていたベラルーシ風のミートボールを出して半分わけてくれた。おそらく豚肉、つなぎ素材はよくわからない。短い珍道中は彼のおかげで、ベラルーシ人へと好意的な印象が心に刻まれた。あれはロシアの侵攻前夜、状況は悪化する一方での昨夏、彼が最後に出逢ったベラルーシ人になるかもしれないなどと頭を過る。
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ポ-ランド国境の街で四時間待ち ハプニングは楽しめれば人生は楽しい◇◇◇◇◇
ところがこの懸念があっさり払拭されたのは昨年十一月文化の日。前年SMBCモビットのCMに出演していた外国人モデルの女性がベラルーシ人だと聞いて撮影する運びに。第23話のカバー写真のEmiliaさん。スラブ系にしては独特のエキゾチックな雰囲気を醸す美女はトルキッシュの血も受け継がれていると聞いて納得。
ベラルーシからポーランドの国境を越えて最初の駅がテレスポール。握手を交わし、車が見えなくなるまで手を振り。視界から消えたので深々と頭を下げた。ワルシャワ行きの列車が来るまでは四時間ある。とりあえずビールを注文してワルシャワ近郊でどんな試合が当日行わるのか調べる。予期せぬ出来事にどう対応するのか、自身に毎回不必要な宿題を課しているが、ハプニングこそが異国を旅する醍醐味であることは間違いない。〖第七十三話了〗
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⏹️写真/テキスト:横澤悦孝