今季の欧州チャンピオンズリーグ決勝を制したバルセロナはこの10年間で2006,2009,2011,2015年と4度のCL制覇を経験。しかも、2006年と2011年は国内リーグとの2冠、2009年と2015年には国内リーグ、国内カップも合わせた3冠という正真正銘の最強王者であるタイトルの獲り方をしています。
CLで優勝するという事はクラブW杯へ参加する事でもあり、バルセロナは今年も日本開催の同大会に参戦。日本開催では2006,2011年に続いて3回目の出場となり、常連の域に入っているとも言えます。彼等の披露する攻撃サッカーに魅了された日本のサッカーファンも多い事でしょう。
ポゼッションは攻撃的?カウンターは守備的?~スペイン2強の相反するイメージ
しかし、「攻撃サッカー」の定義とはあやふやなもの。特にバルセロナを語る上で使われる「攻撃的なパスサッカー」という言葉に筆者は極度の違和感を抱きます。パスサッカーとは、まずボールを支配する事に特徴があるので、縦パスよりも横パスやバックパスの方が絶対的に多くなります。そのため、パスの種類は「守備的」になるため、パスサッカーに攻撃的という概念はないのではないか?とも考えられます。逆にカウンター攻撃は3本以内のパスと6秒以内でのフィニッシュへの持ち込みという時間的制約に特徴があるため、パスの種類のほとんどが縦方向に出る鋭い「攻撃的」なパスになります。前線のアタッカーもドリブルで仕掛ける事が多く、打ち合いになるのはカウンター応酬の方が多いのがサッカーの特徴であるため、カウンター狙いはけっして守備的ではありません。
そこで、少し面白いデータがあるのでご紹介します。
パスサッカーやポゼッション、攻撃サッカーという言葉が頻繁に使われ、それがトレンドとなり、全世界が目指すべきサッカーのスタイルとなったのはスペインのバルセロナが2009年に国内リーグと国内カップ、欧州チャンピオンズリーグの3冠を達成したからです。ここではそのサッカーの善悪を問う事はしませんが、これだけ攻撃サッカーの代名詞になったバルセロナに対して、レアル・マドリーは守備の堅いチーム作りで結果を残して来たジョゼ・モウリーニョ監督が2010年に就任し、カウンター志向のチームを作って見事に2012年にリーグ優勝を達成しました。
しかし、実はリーグ戦における得点数と失点数を見れば非常に興味深い数字が出ています。攻撃サッカーの代表であるバルセロナは2009年の3冠達成以来の7シーズンで5回のリーグ優勝を成し遂げながら、シーズン最多得点チームとなったのは僅か2回しかなく、逆にカウンターが最大の武器であるレアル・マドリーが5回も最多得点となっています。
さらに面白いのは、攻撃的なはずのバルセロナがシーズン最少失点チームとなったのが5回もあるのに対して、結果最優先主義のレアル・マドリーが最少失点となった事がないのです。(残り2回はアトレティコ・マドリー)
※赤字は最多・最少記録
【バルセロナ】優勝5回、最多得点2回、最少失点5回。
【レアル・マドリー】優勝1回、最多得点5回、最少失点なし。
レアル・マドリーにはクリスティアーノ・ロナウドやカリム・ベンゼマ、ゴンサロ・イグアイン(現・ナポリ)、ギャレス・ベイル(2013年より加入)という、カウンターでこそ最大限活きるスピードを持ち味とした個人技で打開できるFWが揃っているため、得点が多いのはイメージが付きやすいでしょうが、バルセロナが最少失点の常連だったのは意外と思う人も多いかもしれません。特にジョゼップ・グアルディオラ監督が指揮した2008~2012年は全て最少失点で、逆に最多得点は初年度の1度のみ。グアルディオラのバルサは得点数ではモウリーニョのレアル・マドリーより少なく、逆にモウリーニョもグアルディオラのバルサより失点が多いというイメージとは相反する数字が残っています。
バルセロナも「FWのサッカー」に移行~それでもクラブに根付く伝統あり
ポゼッションサッカーのバルセロナは「MFのサッカー」、FWの個人技を活かした攻撃が多いレアル・マドリーは「FWのサッカー」と言われる事が多いのですが、現在のバルセロナは2013年夏にブラジル代表のエースFWネイマール、2014年夏にウルグアイ代表のエースFWルイス・スアレスを獲得。アルゼンチン代表FWリオネル・メッシと合わせた南米出身の3トップの個人技を活かした攻撃パターンが多くなっています。