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日本VSイラク 1-0で勝つことの大切さ

 グループ最大のライバルと考えられていたイラクに1-0で勝利した日本。あれだけチャンスを作りながら1点しか奪えなかったことで、日本国民の多くは物足りなさを感じた事だろう。確かに大量得点を奪って勝った方がスッキリするが、1-0で勝つことも大切だ。今回はこの一戦を別の角度から捉える事にしたい。

☆チェンジペースを身につける時

 1点リードで迎えた後半、暑さの影響で足が止まり始めた日本に対し、イラクが攻勢に出て来た。その状況を変えるべく、アギーレは遠藤に代えて今野、乾に代えて清武と2枚の交代カードを切った。司令塔の遠藤を下げて守備的な今野を投入したという事は、守備に意識を傾けろという事だ。アギーレは選手交代で自身の考えをピッチ上に伝えたのだ。

 この判断に間違いはなかったし、選手たちにとって分かりやすい采配だったと思う。しかし日本の選手たちとアギーレの間には少しの溝があるようにも感じた。というのも、アギーレが守備的な交代を行ったにも関わらず、日本の選手たちは追加点を狙おうと動く場面が多かった。相手に奪われるかもしれないギリギリの縦パスを出す場面もあり、リードを守り抜く意識に欠けていた。つまり、選手たちはアギーレの考えを100%理解している訳ではないといえる。

 象徴的だったのは今野が後ろから相手選手を倒してイエローカードを受けた場面だ。1点をリードしている終盤に、自分たちのミスから相手にカウンター攻撃を許すなどあってはならない。あの場面でも日本は不用意な縦パスを相手に奪われている。攻めにいくのか、守りにいくのか。日本はチームとしての判断力がまだまだ乏しい。どんなに疲れが溜まってもペースが一定で、前からプレスをかけ続けてしまう。状況によっては後方にブロックを作って相手にボールを持たせる展開も必要だ。

☆1-0で勝つことの意義

 前任のザッケローニ体制で守備の脆さを露呈した日本は、アギーレ体制の4年間で守備を改善していかなければならない。その点において、イラク戦を1-0というスコアで終えたのは良かったと思う。ブラジルやドイツといった世界の強豪に勝つためには、1点のリードを守り切る守備力が必要不可欠だからだ。
 大切なのはイラクに勝つ事ではなく、アジアカップ全体を通して2018W杯に向けた土台作りをしていく事だ。いくらアジアを圧倒的な力で制したとしても、W杯で1勝もできないのでは意味がない。

 状況によって守備的な戦術にシフトする事は、ワールドスタンダードなチームになるためにも身につけておかねばならない。言い方を変えれば、日本は大人なサッカーを覚える時期に来ているのだ。

 2014W杯を制したドイツも、猛暑のブラジルで状況に合わせて戦い方を変えて見せた。時には守備的に、時にはポゼッションを軸とした攻撃的なサッカーに。こうしたブレの少ないチームを作ることがW杯で勝ち進むための1つの条件となる。勢いだけで決勝まで辿り着けるほどW杯は甘くはないのだ。

 イラク戦も、オーストラリア独特の熱い気候に苦しみ、90分間をフルスロットルで走り抜く事は不可能だった。こうした不都合な事態に直面した場合は、追加点を狙い続けるのではなく、1-0でゲームを終わらせるマネジメント能力が必要だ。わざわざ得点を狙いに行って相手にカウンターの好機を与える必要は無い。

 そもそも日本は世界的に見ても格下の部類に入るため、常に攻撃で押し切れるなんて事はありえない。時には相手に一方的に攻められる展開もあるだろう。そういった試合をモノにする1-0というスコアが、4年後の日本には絶対に必要だ。ザッケローニの築いたパスワークを磨きつつ、1-0で勝てるチームを作る・・・。それがアギーレに課せられた1つの使命でもあるのだ。