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夏の移籍市場で獲得したチェコ代表のレギュラーGKは16年から17年のワールド杯予選8試合に出場。現在はスペイン二部のアルバセテに所属している。試合は支配率六割を許したもののセヴィージャの15本に対してオロモウツも14本のシュートを放つ。0-0のまま時計の針が残り5分になるところで均衡が破れる。途中出場のポルトガル代表アンドレ·シルヴァ:André Silva【1995年11月6日生】からのスルーパス。ディフェンダー三人の裏に抜け出したのはバルサ戦でも得点を記録したパブロ·サラヴィア【1992年5月11日生】。イベリアホットラインがアウェーでの貴重なゴールを奪った。
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20歳でA代表デビューのシルヴァはFIFAワールド杯カタール大会以降招集されていないが今季はライプツィヒからレアル·ソシエダ
へと貸し出されている。前半負傷で棒に振ったものの三月の古巣セビィージャ戦のゴールで復活の兆しは見えた。同じくカタールのピッチに立ったサラヴィアも三月コロンビアとの親善試合に出場。ウルバーハンプトン所属のサラヴィアをソシエダが獲得に動くとスペイン紙アスが報じたのは年明け。結局シルヴァとの再会は実現せず。
上写真の’22年6月9日UEFAネーションズリーグAグループのスイス戦でもゴールを決めている。その三日後スペイン代表はマラガでチェコ代表と対戦しておりサラヴィアは途中出場ながらもチェコ代表と3バックの壁を突き破りゴールを奪う。
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その一角にはスタメンでフル出場のイェメルカ。セヴィージャ戦直後の豪州戦にA代表初招集されていた。大会終了後、前述のとおりオロモウツからプルゼニへ移籍する。ビハインドが2点に広がるとチェコ指揮官は二枚替えで、ルカシュ·カルヴァフ【1995年7月19日生】を送り出す。’13年の欧州U19選手権予選にも出場したカルヴァフもイェメルカより一足早く2019年にオロモウツからプルゼニに移籍しており10月EURO予選で初招集されていた。
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オロモウツとセヴィージャの試合以来四年ぶり。両国代表のユニフォームに姿を変えてイェメルカとカラヴァフがサラヴィアとピッチ上で顔をあわせたのは二年前。残念ながら今回のEUROは三者とも落選。
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イフラヴァ戦のマッチデープログラムの表紙は、楽器を演奏するフットボーラー達によるセッション。この国の人々の音楽への思い入れは一種独特な処がある。汎スラヴ主義を代表するベドルジハ·スメタナ:Bedřich Smetana【1824年3月2日生-1884年5月12日没】はボヘミアとモラビアの境界周辺で生まれた。彼ら音楽家を含む多くの芸術家が国家独立への願望を込め、深い愛国の志を自らの作品で表現した。彼の代表曲『わが祖国(Má Vlast)』は日本でもお馴染みの旋律。受け継がれた愛国心の強さをこの国に足を踏み入れた異邦人は思い知らされるはず。
参加国でも屈指と言える自国内でプレーするスラブ人選手で編成された代表チームに有色人種のプレーヤーは見当たらない。一方自国籍ばかりのクラブも今や貴重。然し80年代から90年代前半ならば、それがごく普通に見掛けるスタジアムの風景だった。
チェコの国家代表と各都市のクラブチームにノスタルジックな街並みにも通ずる歴史の息吹と時代から取り残された刹那さを重ねずにはいられない。[第140話了]
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🔲写真/テキスト:横澤悦孝 🔲モデル:るん