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女子サッカーの監督は「指揮官」ではなく、「指導者」であるべき!?

 2011年にFIFA女子ワールドカップドイツ大会を制した当時、なでしこジャパンの主力選手はINAC神戸レオネッサに一極集中して所属していた。その2011年シーズンにプレナスなでしこリーグ初優勝を果たしたINAC神戸は2013年まで3連覇。2013年には『国際女子サッカークラブ選手権』も制するなど国内外4冠の完全制覇を果たした。

 そんな絶対女王・INAC神戸に対して、なでしこリーグの他チームは何もできなかった。ほぼ毎試合でINAC神戸が押し込み続ける“ハーフ・コートゲーム”の連続。「INAC神戸の何が凄いのか?」と問われたら、選手個々の質以外に説明するのが難しかった面もあった。

 ただ、現在は3連覇中の日テレ・ベレ-ザや、世代交代の過渡期を迎えたとはいえ、依然としてタレント軍団のINAC神戸に対して、他チームも自分達のサッカーを時間帯限定でも出せる試合が飛躍的に増えている。

 それは、2016年シーズンに1部昇格初年度ながら3位へと大躍進したAC長野パルセイロレディースや、2017年シーズンには1部初昇格&残留に加えて皇后杯決勝進出も果たしたノジマステラ神奈川相模原、2部所属ながらFW大矢歩とFW上野真実という代表選手2人を輩出した愛媛FCレディースなどのチームとしての明らかな特徴を持った下部リーグ勢の追撃にも繋がっている。そこには女子サッカーの競技力の底上げがあるはずだ。

 他にもクラブ創設4年目ながら昨季2部昇格初年度だったオルカ鴨川FCは、リーグ最少失点(18試合12失点)を基盤にリーグ4位へと大躍進。新シーズンから1部初昇格のセレッソ大阪堺レディースには、2部で18試合22得点という断トツの得点王となったU20日本代表FW宝田沙織を筆頭に、下部年代の日本代表常連選手が揃っている。1番年上の選手が20歳という超若手偏重のアカデミーチームの形態をとる精鋭集団が1部初昇格を果たして戦う新シーズンが楽しみだ。

バニーズ京都・千本監督「僕は何もしていません」

 上記に挙げたような「特徴を持った下部リーグ勢」のチームとして、今季からの2部昇格を勝ち取ったバニーズ京都SCも挙げられるだろう。

 そのバニーズ京都の千本哲也監督(下記写真)が、昨季の『プレナスチャレンジリーグ【プレーオフ順位決定戦1~4位】』の最終節、FC十文字VENTUS戦後に残した言葉が印象的だった。この試合の勝利により、バニーズ京都は2部・9位チームとの入替戦出場権を勝ち取ったのだが、千本監督は、

「僕は何もしていません」

と、言うのだ。もちろん、千本監督が何もしていないわけではない。この言葉には、選手たちの個性や特徴を活かすためのアプロ―チが含まれている。

 サッカーというスポーツは社会にとっても切り離せない“組織”“個人”の両方が必要不可欠な要素であり、監督として“組織”の指導を受け持つが、“個人”の部分をどう引き出すか?に注力している、という表現が適切だろうか。

 例えば、バニーズ京都は一貫したパスサッカーを標榜しているが、攻撃の最終局面に置いては、スピード豊かな3トップの突破力を活かすために、相手DFの背後に落とす浮き球のミドルレンジのパスを頻繁に使う。コレにより、得点シーンは速攻のように見える得点も多い。

 また、守備の局面では基本布陣の<4-3-3>から、両サイドのウイングが引いてトップ下のMF松田望が最前線からのプレスに繰り上がる<4-4-2>に変形する。ボールを持っていない守備の時は、監督が指導する“組織”の部分、ボールを持っている攻撃の場面では選手個々の特徴を組み合わせる。そんな理想的な例だと言えるだろう。(下記図を参照)

監督だけが“プロ”の女子サッカー~「ティーチング」と「コーチング」の使い分け!

 女子サッカー界では、監督だけが有給(プロ契約)待遇のプロ契約であるクラブが多い。いくら優秀な監督であろうと、選手はサッカーだけをしているわけではない。フルタイムで働いている選手は基本的に毎日時間がない。一般人から見れば“激動の日々”に感じるような生活を毎日のように続けている。

 そんな監督と選手の生活環境が著しく違えば、サッカーへの意識やプレーへの要求に“温度差”が出て来て当然だ。だから、女子サッカーの監督は「指揮官」ではなく、「指導者」であるべきだと強く感じたし、取材するたびにその想いは強くなっていった。あるクラブは試合に負けると「反省会」があり、15時で終わった試合の後、22時頃まで反省会が続いたという話も伺った。選手達は翌日も早朝から仕事があるにも関わらず、だ。

「試合翌日となる月曜日の練習をオフにします。でも、選手は仕事があるから完全オフになんてなりません。実際、月曜日は練習が休みだったとして何しているか?ほぼほぼ寝てますよ。女子なのに。オシャレもしたいだろうに。でも、それが現実なんです。

 だから、せめてサッカーをするときは楽しくやらせてあげたい!試合は勝つためにやるし、そのための練習ですけど、選手達がどう感じているのかを把握しておきたいし、それを日々のトレーニングや試合にも反映させたいんです。」(バニーズ京都・千本監督)

 バニーズ京都の千本監督のお話には、「ティーチング」と「コーチング」の両面を上手く使い分けているエッセンスが感じられる。「ティーチング」と「コーチング」。これはサッカー指導の現場だけでなく、教育現場でも使う言葉で、微妙にニュアンスが違う言葉だ。

 「ティーチング」とは、直訳の通りに「教える」ことで、監督やコーチから選手達に一方通行に教えることを意味していて、ある種の“答えがあるもの”を指導することだ。一方通行であるため、そこには明確な上下関係がある。

 一方、「コーチング」とは、日本最大級のコーチング会社「コーチ・エィ」によれば、3つの原則があるという。「双方向性」、「継続性」、「個別対応」、である。指導する側とされる側がお互いに対等の立場に立って発言しながら「双方向」を向き、「継続的」に同じテーマについて対話をしていく。そして、それは「個別対応」でないといけない。

 また、『コーチング・ワークショップ』(高木善之 PHP研究所)の中で、「コーチング」とは、