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サイドアタッカーとして進化を見せた川澄奈穂美の現在

 INACでは川澄以上に機動力と多彩なフィニッシュワークを持つ期待の若手FW京川舞が左サイドMFに入っているのもありますが、川澄は経験値や柔軟性、チームプレーへの献身性を右サイドMFで活かしています。
 代表でもカナダW杯では右サイドMFが定位置になり、今大会で右SBの有吉佐織が大会MVP候補にノミネートされるまでに至ったのも、有吉の前でプレーする右サイドMF川澄が有吉の攻撃参加をするスペースを作ったり、相手DFを引き付けてフリーでパスを供給したりという「環境作り」があったからとも言えます。

 また、川澄がカナダW杯では無得点に終わったものの2アシストを記録。そして、そのアシストに繋がらなかった以外にも決定機を演出し続けていました。
 特に、そのクロスに新たな可能性を見出し、「なでしこ流自分達のサッカー」を超える要因にもなってるように見えました。

 サイドからのクロスには大まかに分けて3種類の選択肢があります。

 まずは、相手DFラインとGKの間のスペースがある時に早いタイミングで狙う「アーリークロス」。
 次にゴールライン際まで突破するなどして相手DFが戻り過ぎている時にマイナス方向へ狙う「折り返し(プルバック)」。
 3つ目は相手が守備ブロックを作ってしまっていても、味方に長身FWがいる場合にDFと競り合ってでも狙うコースに送る「ハイクロス」。

 川澄は右サイドMFになって、縦方向へドリブルで突破しての「折り返し」はもちろん、女子サッカー界では世界最高峰のFW大儀見へのハイクロスを送りながら、アーリークロスに冴えを見せ続けています。
 自分達のサッカーやパスサッカーと言えば、自分達がやりやすいプレースタイルで相手を押し込んでショートパスによるパスワークを思い浮かべますが、「相手が嫌だと思わせるプレー」を狙うのが新たな「なでしこ流」と言われる中、川澄の速いタイミングで入れる鋭いアーリークロスは自分達のサッカーを越える要素を多く含んでいると言えます。これは左サイドでプレーしていれば出来ない事でもあります。

 カナダW杯準決勝・イングランド戦でのアディショナルタイムでの決勝点も彼女のアーリークロスから生まれました。相手DFは脚がもつれながら嫌らしいコースのボールに対応し、しっかりとクリアしきれずにキックしてしまいオウンゴール。「新たな川澄奈穂美」を象徴するプレーだったと思います。

パスサッカーによるカウンターという新スタイルの象徴に

 もうすぐ29歳にもなる彼女はベテランの域に入ったや、得点も減ったり、FWでもなくなった事でスポットライトが当たるような事は少なくなり、だいぶ地味な印象になったかもしれません。
 それでも、筆者が先日の台風の中でも訪れた、なでしこリーグ第11節・スぺランツァFC大阪高槻戦(3-1でINACが勝利)での彼女は、「カウンターに厚みを加えるためにゴール前まで走っていた」との言葉の通り、味方のシュートのこぼれ球に詰めて追加点。

 INACほどの相手陣内に押し込んで主導権を握るような試合の多いチームがカウンターに厚みを加えるためにサイドMFが誰よりも走ってゴールまで奪う。「ポゼッションかカウンターか?」が議論される事の多い日本サッカーに、川澄のそのプレースタイルは、「パスサッカーによるカウンター」というような流れるようなパス交換をカウンターで見せるような新たなプレースタイルの確立を象徴するような選手になる可能性も秘めているように思います。

 今後も川澄スマイルでファンを魅了し続けてくれるであろう彼女を応援したいと思います。