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継続と深化の湘南スタイル【後編】今年のJ1で旋風を巻き起こせるか?

 独走優勝を成し遂げた2014年の基本布陣は、ワントップのFWにウェリントン、シャドーの位置に武富孝介と大竹洋平(または岡田翔平)が入る前線。左ウインバックに菊池大介、右ウイングバックに藤田征也(または亀川諒史)が入り、セントラルMFコンビには主将の永木亮太と菊池俊介(または岩尾憲)で中盤を構成。3バックには左から三竿雄斗、丸山祐市、遠藤航(宇佐美宏和)、GKには秋本陽太が入っていました。

 特に3バックに拘る事はありません。スタートはそうかもしれませんが、僕が観た試合でも<4-2-3-1>へ移行しています。また、速攻が確かにメインの攻撃パターンであり、狙いではあるのですが、それは2013年までの”湘南スタイル”と言えるのかもしれません。2013年の終盤から途中加入の元ホッフェンハイム在籍のブラジル人FWウェリントンが定着。彼が足元で収めるポストプレーから遅攻でも崩せる攻撃も取り入れていました。結果は出てませんでしたが・・。

 J2降格はそうした戦術的柔軟性や、新たな攻撃パターンの構築を身に付けていくのに一役買ったとも言えます。昨年の3冠王者であるガンバ大阪も、J2降格を機に守備ブロックの構築に優先して取り組み、クラブ伝統の超攻撃的サッカーから現実的なサッカーへ移行するのにJ2という舞台は大いに有効活用出来ていたのも想像がつきます。

 ただし、速攻でも遅攻でも、あるいは中央突破、サイド突破の仕掛けやカウンター攻撃に置いても、狙いとしては常にサイド攻撃を重視しているのは明白です。ボールを奪って反転速攻を仕掛けるには、相手サイドバックの裏へ出すのがセオリーであり、引いた状態で奪ったボールをビルドアップするのもフリーで落ち着くのはサイドです。それが最もリスクが低い仕掛け所だからです。ここまではセオリーで当たり前。

 そこから湘南が他チームと違うのは、サイドで数的優位を作るだけでなく、リスクを賭けた仕掛けを施す事で“湘南スタイル”らしい攻撃の迫力を生んでいるところにあります。具体的にはウイングバックへ展開したら、3バックの両サイドが上がって攻撃参加したり、ボランチがウイングバックの外を駆け上がる事でスペースを作ってスピードアップを施すという具合です。

 右サイドでは3バックの右に入るDF遠藤航がビルドアップに積極的に絡みながら、主に内側へ攻め上がり、時にはエリア内へ自ら侵入するなどフィニッシュの局面に直接絡むプレーを見せます。逆の左サイドでは10番を背負うMF菊池大介がドリブル突破のスピードスターで、彼がエリア内へ切れ込んで得点に多く絡む事から、左ストッパーのDF三竿雄斗は菊池大介をサポートするポジションを取ります。その三竿には左足での正確なロングパスやクロスに適しており、彼は大卒新人ながら定位置を獲得して最少失点の守備陣を担いながら、昨年は二桁アシストを記録するに至ったのです。特徴を例えると、遠藤はバイエルン・ミュンヘンのフィリップ・ラームで、三竿はトルシエジャパン時代の中田浩二のようなプレースタイルに似たイメージがあります。

 「後方からのビルドアップを大事に」というのが昨今の攻撃サッカーの特徴ですが、このように“後方からの機動力”を生み出すことで、速攻だけではなく遅攻でも崩せるようになったのが“新たな湘南スタイル”なのです。

J2降格を機に”湘南スタイル”を継続だけでなく深化

 また、湘南は2014年にJ1から降格してきたという事で、“降格組”はJ2クラブからは執拗に研究されたり、完全に格下に当たるチームらからは極端に自陣に引いて守る戦いを選択される試合が当然ながら増えました。研究されたがゆえ、速攻が得意なチームだからこそ引かれる事はさらに増えたはずです。

 そうした苦境を就任3年目となった曺貴裁監督や選手達は見事にプラスに受け入れました。開幕からの14連勝と、その後の21戦無敗などなどの記録的な快進撃による勝点101という圧倒的な強さは“湘南スタイル”に固執するのではなく、新たな“湘南スタイル”へ深化していきました。

 スローガンとなった”SELF“。ステディ(Steady)、エンジョイ(Enjoy)、リーダーシップ(Leadership)、ファイティングスピリット(Fighting spirit)の頭文字をとった4大要素は自身(SELF)に進化と深化を施すという意味で、常に自分達との戦いでもあったと思います。

 そこにはJ1を経験したからこその“定まった形(ステディ)”があり、もともとあった“闘争心(ファイティング・スピリット)”ではJ1でも通用しない事を学習してるからこその向上心を育みました。ピッチに立てば戦術やスタイル、約束事に縛られるのではなく、自立したプレーを体だけでなく頭でも表現し、それらをチーム全体で共有されるために、選手各々が発信する“リーダーシップ”を取る事も要求されたはずです。そして、それらの今以上を追求していく事に”楽しみ”(エンジョイ)を見出す事で、開幕から成績の上では独走状態が続く中でも弛緩することなく、圧倒的な成績を残しただけでなく、1段落上の“湘南スタイル”へと落とし込んだように思います。

今季J1でも大旋風を巻き起こす可能性は!?
 ウェリントン残留なら十分アリ。永木は代表選出へ

 そして、気になるのは実際にJ1でもこの快進撃が続くのか?が最も関心のあるところだと思います。昨年は一昨年のJ2王者であるガンバ大阪がJ1昇格初年度で3冠を果たしたわけですから否が応でも期待は高まります。しかし、もともとJ1でも常勝クラブであり、メインスポンサーであるパナソニックも離れずに新スタジアム建設に着手するガンバ大阪とは違って、前編でもお話したように湘南ベルマーレはメインスポンサーであったフジタが手を引いて経営規模を大幅に縮小したクラブなので限界があります。

 実際にJ1へ昇格したというのに、主力として定位置を担っていたDF丸山祐市(出場停止の1試合を除く41試合先発出場)とFW武富孝介(39試合9ゴール)は、それぞれFC東京と柏レイソルというレンタル元に復帰する事となり退団。選手本人の意向は知る由もありませんが、J1昇格を断トツ優勝で果たしたとしても、チームに留めて置けない状況が現実です。準レギュラーという位置付けながら14ゴールを挙げたFW岡田翔平はレンタル期間を延長させられたのは一安心でしょうが、即戦力補強が浦和レッズから元日本代表DF坪井慶介と横浜FマリノスからFW藤田祥史というベンチ要員になったベテランのみでは心許なく、スピードと走力を重視する”湘南スタイル”へのフィットも怪しい部分があります。その他にも退団する選手が多く、傍から見ればJ1昇格プレーオフでギリギリ上がって来たようなドタバタ編成に見えなくもありません。

 それでも、昨年は20ゴールを記録したFWウェリントンのポストプレーはJ1どころか欧州水準でも十分に通用するレベルにあります。DF遠藤はもうすぐ“もう1人の遠藤”と呼ばれて日本代表に招集されるはずです。そして大黒柱のMF永木と合わせて縦のセンターラインがしっかりしているので大崩はないチームのベースが出来上がっています。“湘南スタイル”がクラブに植え付けられているので、センターライン以外は大卒新人の獲得でも走力をベースに見てリクルートしている強化部のバックアップで賄えるはずです。

 遠藤と永木には他クラブからのオファーがありながらも本人たちが断りを入れ、すでに残留が決まっていますが、ウェリントンは欧州の移籍市場が閉じるまでは何とも言えません。彼が残留してくれれば、J1でも優勝はならずとも、2012年に5位に入ったサガン鳥栖ぐらいの旋風は十分に見せられるはずです。

 特に永木の攻守に渡ってダイナミックに絡みながらも、アクセントをつけられるゲームメイクはJリーグでも稀有な存在だと思います。日本代表のMF遠藤保仁はW杯ブラジル大会では「衰え」て、W杯後は代表落ちが「妥当」と言うことになっていましたが、所属のガンバ大阪の3冠達成とJリーグMVP選出で代表復帰が「妥当」に変わり、「サッカーに年齢は関係ない」が流行る傾向になっています。しかし、遠藤保仁は速攻ではあまり絡めません。その分、速攻主体の時はガンバでも今野泰幸に前を任せ、自身はカヴァーリングなどバランサーに徹する事で調整していますが、ハビエル・アギーレ日本代表監督は速攻をまずメインに挙げています。それであるならば、柴崎岳だけでなく、永木も日本代表へ挑戦できるだけの実力を持ち合わせていると思います。

 満を持してJ1へ殴り込みに上がってきた“湘南の暴れん坊”。主将にして司令塔でもある大黒柱のMF永木は長短自在のパスにどんな軌道を描いているのでしょうか?そこへは確実にJ1での未来予想図ではなく、しっかりとした軌跡が拡がっているのでしょう。

 最後に、僕はBMWスタジアムを出る時に「ハズレなしの抽選くじ」(500円)をして、以下のような下敷きをもらいました。(マッチデープログラム、チケットとセットにして収納しています。)