イブ·モンタンが名脇役に徹した二作品
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冒頭にパリと五輪の話題にふれるのも残り僅か。各国のアスリ-ト達は花の都で完全燃焼できているだろうか。『パリは燃えているか』と聞いて、1966年の米仏合作映画を思い浮かべる方は其れなりの映画通。若き日のフランシス·コッポラ:Francis Ford Coppola【1939年4月7日生】が脚本を担当している。
日本では歌手としての印象が強いイタリア王国生まれのフランス人イヴ·モンタン:Yves Montand【1921年10月13日生-1991年11月9日没】がマルセル·ビジアン軍曹役で出演。あっさり銃殺されてしまう脇役。イヴ·モンタン作品でお薦めはアルジェリアとフランスが共同で制作した『Z』。暗殺事件を題材にしたヴァシリス·ヴァシリコス:Vassilis Vassilikos【1933年11月18日–2023年11月30日没】の小説が発表されたのも’66年。平和と民主主義の象徴として浮上したのがZの文字。小説のタイトルでもあるギリシャ語のΖει (Zi)は《生きている》を意味する。
実際に’63年5月のある朝、アテネ市内の至るところで壁面がZの落書きで覆われていた。
この作品を見ていればかなりの映画通。おそらくジジイとばばあ。
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映画化されたのは’69年。第42回アカデミー賞では外国語映画賞を、全米映画批評家協会は最優秀作品に選んでいる。カンヌでも高く評価されているがモンタン演じるのはZ氏。そのモデルがグリゴリス·ランブラキス:Grigoris Lambrakis【1912年4月3日生-1963年5月27日没】であることは言うまでもない。予備知識なしで主役だと思って観ていたらモンタンにいきなりレッドカ-ド。頭を棍棒で殴られてまさかの退場。主役は判事のジャン=ルイ·トランティニャン:Jean-Louis Trintignant【1930年12月11日生-2022年6月17日没】だった。
第168話は政治だけでなく陸上競技者としても名を馳せたランブラキス。その名前を冠したスタジアム。カリテアFCの本拠地は、アテネのど真ん中にある。1936年夏季オリンピックの男子走り幅跳びと男子三段跳びでギリシャ代表として出場している。
2022年9月、新たなビジュアルアイデンティティが発表され、デザインを手掛けたのドイツミュンヘンのスタジオ・ビューロ・ボルシェ(代表ミルコ·ボルシェ:Mirko Borsche【1971年12月19日生】)。メ-カ-は1950年代に生まれたイタリアのスポーツブランド”Kappa”。アダムとイブがM字をつくるロゴマ-ク。二人の頭に皿はない。古代ギリシャ文字ではKをカッパと発音する。
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そもそもこのクラブのエンブレムが最高にカッコいい。明朝体のようになエッジの効いたKの一文字。この秀逸なウェアを身に纏う上写真は昨季主将章を巻いていたヤニス·ルキナス:Giannis Loukinas【1991年9月20日生】。
1966年8月に5つの地元クラブが合併。’70年にランブラキス· スタジアムが完成。2002年に悲願のトップリーグ初昇格を果たす。2005-06シーズン最下位二部降格からは冬の時代の幕開け。08-09シーズンは最下位で三部降格と転げ落ちる。’20年四部優勝から上昇カ-ブを描き、翌季は六位でフィニッシュ。2021-22シーズン34チームが参加する統一スーパーリーグ2に昇格する。そして昨季の優勝で遂にトップリーグへ、復帰まで実に十八年を要した。