欧州唯一の異端 空賊国家の独裁者
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日本代表のアジア杯はイラン戦で終焉を迎えた。時をほぼ同じくして、ヨルダンのアメリカ軍基地攻撃への報復としてイラン施設(シリアとイラク領内)を空爆。
あらためて欧州地域と比較すると、アジア杯は経済格差に多民族、民主主義と権威主義、政情が安定している国もあれば、不安な国家の代表が入り混じり競い会う不思議な大会。
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写真はディナモミンスクのアリャクサンドル·セリャヴァ:Aleksandr Selyava【1992年5月17日生】。今季ロシアのロストフと契約満了。フリーで古巣に復帰しディナモの国内制覇に貢献した。ベラルーシ代表デビューは、’20年のUEFAネーションズリーグでのアルバニア戦。昨年のUEFA欧州選手権予選5試合にも出場しており国内では屈指の守備的ミッドフィールダー。
撮影したのは’21年10月、ワールド杯欧州予選のエストニア戦。
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この年の5月ギリシャからリトアニアに向かうライアンエアー機のミンスク空港強制着陸。機内に爆弾が仕掛けられていると嘘の情報を流したのは、ポーランドに亡命した反体制派活動家の拉致目的で、やる事がえげつない。
ポーランドの首都ワルシャワでの抗議集会で活動家の母親は、EUとアメリカに救済を呼びかけた。この大事件もライアンエアー愛好者が少ないせいか、あまり日本では注目されなかった気がする。しかし二ヶ月後の東京五輪、ベラルーシ女子陸上代表のポーランド電撃亡命劇で《欧州最後の独裁者》の唯我独尊·非道ぶりに多くの日本国民が怒りを覚えた。このエストニア戦に敗れたベラルーシ代表の複雑な心境も如何許りかと察する。
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ミグ29戦闘機が緊急発進し、旅客機を誘導したミンスク空港には英語でウェルカムの文字。ソ連邦時代からモスクワとミンスクは何度か訪問している。現在のモスクワは意外と思えるほど英語表記が増えているのに比べ、白いロシア正教会が建ち並ぶミンスクの街では、未だにロシア語とベラルーシ語表記のみが目についた。第100話は1980年モスクワ五輪でも使用されたディナモ·スタジアム。
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2018年リノベーション完了、式典には暴君アレクサンドル·ルカシェンコ:Alexander Lukashenko【1954年8月30日生】大統領も誇らしげに参列。写真を見る限りクラシカルな外観は維持されていて、モダンな屋根とのミスマッチが秀逸。但し筆者が最後にこのスタジアム訪問したのは2012年の改修工事前。
プラットフォームはポーランド語でペロン。ロシア語ではперрон。ベラルーシ語だとперон。三国の言語が並んで表記されるテレスポール駅のホームを撮影したのは’19年。新装スタジアムとブレストでの試合取材を計画したが、この時ばかりは自分のアホさ加減に呆れて開いた口が塞がらない。とりあえずビールを流し込んだ。
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実はポーランド·ワルシャワからベラルーシ·ブレスト終点のバスに乗ったら入国を拒否された。半年前は30日間以内なら無査証で入国できたのにwhy? 軍服姿の20代男性から流暢な英語で説明を受け絶句そして納得。査証なしでの入国はミンスク空港利用時のみ。陸路では査証が必要だと確かに大使館HPにも書いてあった。さて、この後はどうなるのか。ドキドキしたが何のことはない。
軍服男性に通訳をしてもらい、ポーランドへ逆戻りのヒッチハイク。バスには断られたが乗用車を運転する男性Aさんが助手席に乗せてくれた。日本人と会ったのは初めてだと上機嫌。友人にSNSで「日本人が俺の車に乗っている」と発信していた。
それにしても驚かされたのはポーランド入国時の車両検査。後部シートは剥がし、隅から隅までとことん探す。何も出てこなくても。結局国境を超えるのに、二時間以上待たされる羽目に。