その就任理由として、ビーン氏は「セイバー・メトリクスはオランダ代表が1974年のW杯で魅せた“トータル・フットボール”に刺激を受けている。小が大を食う戦法、考え方に魅了された」と答えています。もともとビーン氏はアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督と友人関係にあり、アーセナルの試合を生放送で観たいがために早起きをしているサッカーファン。彼が一体、サッカー界にどんな革命をもたらすのか?
“革命的クラブ”AZの歴史に相応しい人物
AZのアドバイザー就任後のインタビューで、「AZはアスレティックスと似ている」と表現したビーン氏。オランダリーグでは昨季までリーグ4連覇を果たしたアヤックス・アムステルダムや今季7年ぶりのリーグ優勝を果たしたPSVアイントホーフェンが70億円という年間予算を組む中、AZは約30億円。1部リーグ18チームの中では中くらいお規模であり、「予算のギャップを別の方法で埋める」というビーン氏の言葉に期待が集まっています。
2009年にルイス・ファン・ハール監督(現・マンチェスター・ユナイテッド監督)の下でリーグ優勝して以降は、直後にクラブのメインバンクが破綻するなどして財務状態が不安定な中、2010年に5位、2011年は4位、2012年は4位、2013年10位、2014年は8位、今季は1試合を残して現在4位と健闘しながら主力選手の流出も続き、リーグ戦での順位も不安定なAZ。クラブが救いの手を求めたビーンはいったいどんな方法論でサッカー界に革命を起こすのでしょうか?
そもそもAZ自体が、2009年の優勝というがアヤックス、PSV、フェイエノールトの3強に独占され続けていたオランダリーグでは、3強以外が優勝したのが28年ぶりの快挙であり、その28年前の快挙もAZ自身であるため、革命的クラブでもあります。ビーン氏を野球界から抜擢するのも納得のクラブです。
ビーン氏は具体的な事はまだサッカーのシーズンが終わっていない今、いや本業の野球シーズンが始まったばかりの中で明確な動向は分かりませんが、より安価な額で獲得可能な北欧諸国のリーグからの若手選手獲得網や、オランダリーグ内のプレー分析データを見ての「未だ評価されていない優秀な選手」を発掘するのか?それともフットボールはフットボールでも、アメリカン・フットボールのように、100以上の戦術を用意し、全てをセットプレーにようにパターン化したりする事を導入するのか?
ビーン氏と意見を交わす事も多くなるであろう監督との関係も含めて、このオフのオランダリーグはAZに注目です。