フットボール関連の話題では、アルバニア訪問の二か月前、スペインのエル·ディアリオ紙が当時アトレティコ·マドリード所属のガーナ人トーマス·パーティ:Thomas Partey【1993年6月13日生】(現アーセナル)宅からの盗品が無事回収されたと報じていた。犯人はアルバニア人。盗まれたのはUEFAチャンピオンズリーグでレアルとの激闘の末手にした銀メダルとパスポート。
バルセロナやレアル・マドリードで過去に被害にあった大物の名前を挙げ出したらキリがない。
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フランスでのUEFA欧州選手権EURO2016:スイス代表とアルバニア代表が対戦したのは6月11日。兄タウラント·ジャカ:Taulant Xhaka【1991年3月28日生】と弟グラニト·ジャカ:Granit Xhaka【1992年9月27日生】がユーロ史上初となる兄弟対決で話題に。彼らの両親がコソボからスイスへと移ったアルバニア人。
日本では「お里が知れる」と言うがこの兄弟のお里はアルバニア、そして間違いなく熱き血が流れているから、滾り出したら手がつけられない。ピッチ上の武勇伝には事欠かない。
セルビアの自治州から2008年に独立したコソボの九割以上がイスラム教徒のアルバニア人。コソボ代表の守護神に君臨したサミル·ウイカニ:Samir Ujkani【1988年7月5日生】は、ベルギー育ち(アンデルレヒトユース所属)でありながら以前はアルバニア代表で長くプレーしていた。セリエAでは森本貴幸:Takayuki Morimoto【1988年5月7日生】と共に2011-12シーズンにノヴァーラで共にプレーしている。
印象に残ったのはこの写真。現役時代は闘犬と恐れられたジェンナーロ·ガットゥーゾ:Gennaro Gattuso【1978年1月9日生】 監督が審判に何やら捲し立てるウイカニを「落ち着け」と宥める姿。ガットゥーゾは大人になったがウイカニのアルバニアの燃える血が収まらない。そんなウイカニも昨季エンポリでのプレーを最後に現役生活にケジメを付けた。
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北緯41度に位置するティラーナはバルセロナと同じ、マドリッドもほぼ変わらない40度。アルバニアにもスペインと同様のシエスタ=お昼寝の習慣がある。一方アルバニア独自の伝統的な風習として知られるのが夕方のお散歩「Xhiro」。
試合当日、陽が暮れるとデモ行進のような足音と聞き慣れた叫び声が道を塞ぎこちらに迫ってきた。FKティラーナのサポーター軍団の行動もXhiroの一環か。いずれにしてもついていく。スタジアムまでの道案内は有り難い。
首都ティラーナ·ダービーとあって、22,500人収容のスタジアムに20,500人が来場した。娯楽に飢えていた国民が世界で最も人気の競技に血を滾らせるのも頷ける。シエスタ文化の国ではウィークデーのナイトゲームであろうが関係なくスタジアムに老若男女+子供までが足を運ぶ。
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試合開始前から両チームのサポーターの応援に熱が入る。白煙が舞い上がるその先には、スタジアムまで共に歩いた一群。アルバニア三部作も次回の後編で締め、前置きが長くなったがようやくキックオフ。[第84話了]